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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接触篇

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総力戦(十三)

「なんか、凄いの出て来たんですけど」

 爆心地の遥か上空では、仙崎が下の様子を見て慌てていた。

「師匠!

 これ、どうしますか?」

「なにが出て来ても、やることは変わらないよ」

 恭介は落ち着き払った様子で、杖を倉庫に収納して魔力弓に持ち替える。

「普通に攻撃魔法をぶつけただけでは、あまり効果がないようだし。

 少し工夫をしてみますか」

 恭介は弓を引き絞り、真下に向け、放つ。

 目には見えない無属性魔法攻撃が放たれ、即座に別の魔法を発動。

 恭介から二メートルほど離れた場所に、全長五メートルほどの円錐形の石柱と氷柱、炎の柱が発生する。

 恭介が弓を引いて放つと、次々と巨大な、属性魔法攻撃が発動、上昇してくる竜の顔面に命中し、炸裂した。

 それまで、プレイヤーの攻撃にまるで反応していなかった竜が、はじめて口を開き金属的な咆吼を発する。

 威嚇なのか悲鳴なのかはわからないが、とりあえず、この攻撃は竜になんらかの反応をさせる程度の影響は新た得ているらしい。

「来ます!」

 仙崎が叫んだ。

「大きい!」

「仙崎さんは、ここまで」

 恭介は冷静な声でそういって、倉庫から浮遊ボードを取り出す。

「ここからは近接戦闘になるから、出来るだけ距離を取って」

「え!

 ちょっと、師匠!」

 仙崎が止める間もなく、恭介は取りだした浮遊ボートに乗ってすぐそこまで迫っていた竜に接近していく。

「なにやってんですか!

 っていうか、相手が大き過ぎ!」

 間近に見る竜は、あまりにも巨大だった。

 生物とかモンスターというより、景観や環境の一部、という方がしっくりくる。

 あれはそもそも、人間に倒せる類いのものなのか?

 仙崎がそんなことを思う間にも、恭介が乗る浮遊ボードは滑るように竜に近づいていく。

 恭介は浮遊ボードの上に乗って、魔力弓で竜を攻撃し続けていた。

 恭介が操る魔法は、確かにプレイヤーの尺度でいうと強大な威力だった。

 しかし、この大き過ぎる竜を相手にした場合、それでも、あまりにも非力すぎるように感じる。

 事実、特大の攻撃魔法をまともに受けた竜は、特にダメージを受けた様子もなく悠然と飛び続けていた。

 これまで上昇するだけだった竜は、今では長大な体躯をくねらせて、水平方向に飛ぶようになっている。

 その視線の先に居るのは、恭介だった。

「ひっ!」

 仙崎が息を飲む。

 竜が見ていたのは、あくまで恭介一人だ。

 それでも、その巨大な眼球が動いて恭介に焦点を合わせるのを見て、仙崎は自分でもどうしようもない恐怖に駆られ、そこから逃げ出す。

 恭介一人を残していくことに、なにも感じないわけではなかったが。

 それ以上に、恐怖と、それに、

「自分がここに残っていても、なんの役にも立たない」

 という、諦観があった。

 だから、その場から離れることに一切の躊躇いがなかった。


「大きいな」

 竜に接近した恭介は、改めてそう思う。

 なにせ、目玉の見えている部分でさえ、恭介自身の体がすっぽりと入ってなお余裕があるほどの大きさになる。

 眼球の直径でも、四メートルから五メートル、あるいはそれ以上にはなるのか。

 鼻が前面に突き出た顔面だけでも、三十メートル以上はある。

 頭部だけで大型モンスター並みの大きさ、となると、全長は果たしてどれほどの長さになるのか。

 竜は、明らかに恭介の動きを目線で追っている。

 これと比べたら、おれなんかは羽虫みたいなもんだよなあ。

 などとも、思う。

 しかし、恭介は別に悲観をしているわけでもなかった。

 どうも、その手の、モンスターを相手にした時の危機感というのが、恭介はどこか麻痺している傾向にある。

 どうにも倒しにくい相手であると、冷静に判断している部分は確実にあるのだが、それに恐怖するよりも先に、

「具体的にどうしたらその強敵を倒すことが出来るのか?」

 という攻略法を、考えはじめているのだ。

 仲間である宙野姉弟にさえ呆れられることがある、恭介という人間の度し難い部分であった。

 滑空して竜に接近した恭介は、また武器を持ち替えている。

 右手に大太刀、左手にZAPガン。

 これまでの攻撃から、このモンスターは自分の体表上に、魔法攻撃と物理攻撃から守る見えない皮膜、のようなものを張っていることが判明した。

 スキルにある、結界術に似た作用を持つ能力だと、この時点で恭介は予想している。

 普通に攻撃するだけでは体表にまでその攻撃が届くことはなく、一度無属性魔法により、その皮膜で弾くようだった。

 ただ、この見えない皮膜は、無属性魔法を受けると一時的に消去されることが、これまでの攻撃により確認されている。

 その隙は、ごく短い時間に限られているのだが。

 いずれにせよ、この竜も決して完全無欠というわけではなく、それなりに弱点を持ったモンスターであると、とりあえず恭介は想定することにした。

 そういう想定にしないと、これらから先、打つ手がなくなるからだ。

 その予想に従って、恭介はまずZAPガンで見えない皮膜を打ち消し、そこに出来た穴に向けて大太刀を突き刺す。

 実際には、体ごと竜の体表にぶつかっていくような動きになった。

 恭介の体当たり的な刺突によりどうにか穴を穿ち、大太刀がその刀身を竜の体に沈めていく。

 竜の体表はとても硬く、まるでコンクリートに大太刀の刀身を突き刺しているような、とても抵抗を感じた。

 それまでに恭介が乗っていた浮遊ボードは足から離れ、そのまま、落下させる。

 ZAPガンを倉庫に収納し、恭介は大太刀の柄を両手で握った。

 システム画面を呼び出し、ジョブを剣士に変更する。

 大きく息を吸い込んでから、恭介は大太刀の刀身に、最大限の魔力を送り込んだ。

 ジョブ剣士の基本的なスキルセットには、自分の剣になんらかの効果を付加するものが何種類かある。

 このうちの、剣に属性魔法を乗せるスキルを、恭介は順番に使う。

 竜の体表から内部かけて、強大な電圧が放たれ、高熱が、水流が、土砂が発生して、暴れ回る。

 竜が、これまでとは違い、明らかに苦悶による声をあげはじめた。

 恭介の魔法操作能力は、プレイヤーとしては例外的に強力なものだった。

 硬い体表を抜けて、体内でその恭介の魔法を一方的に受けたることは、どうやらこの巨大なモンスターにとっても十分なダメージになるようだった。


「どうなっているんだ?」

「わかりませんよ!」

 中央司令室では、小名木川会長と常陸庶務がそんなやり取りをしている。

「これだけ距離が開くと、完全に圏外です!

 カメラの映像は転送されてきません。

 あとで、録画データをチェックする程度は出来るはずですが」

 上空に姿を消した竜の様子を、中央司令部で把握する術はなかった。

「いっしょに飛んでいったやつに連絡して確認してみろ!」

「仙崎さん、今、通信、取れますか?」

 小橋書記が仙崎に問いかけている。

「上空の様子がこちらではわかりません。

 通信が可能でしたら、そちらの様子をお伝えください」

「こちら仙崎です」

 返信は、すぐに来た。

「現在、仙崎はあのモンスターから二百メートルほどの距離を取り、様子を観察しています。

 現在の状況は、ですね。

 ええと、師匠、馬酔木くんがあのモンスターの体表に取りついて、攻撃を敢行している最中になります。

 意外に効果があるようで、先ほどからあのモンスターはしきりに鳴き声をあげながら、長い体をくねらせています。

 あのモンスター、ええと、もう面倒なんで、これ以降は竜って呼びますね。

 体長は目茶苦茶長いけど、体表に取りついた馬酔木くんを攻撃する術は持たないようで、かなり苦しげな様子です。

 なんというか、あのサイズのモンスターを前にしても怖じ気づくこともなく、こうしてどうにかダメージを与えるあの人って、いったいなんなんでしょうね?」

「こちらに訊かれてもな」

 小名木川会長は、毒気が抜かれた様子で答えた。

「つまり、今のところ、問題はないってことでいいのか?」

「今のところは。

 あ。

 このまま順調にいけば、馬酔木くんが単身であの竜、倒しちゃうかも知れませんね。

 強いていえば、そこがあとあと、問題になりそうかなあ」

「なにをいっているのだ、お前らは」

 そのやり取りを聞いていたシュミセ・セッデスが、呆れたような口調で呟く。

「まったくもって、意味がわからん。

 アセビとは、あのキョウスケのことなのだな?

 キョウスケが、あの長虫のようなモンスターを単身で相手にしているというのか?

 そんなことが、生身の人間に可能なのか?」

「まあ、あいつのやることだしなあ」

 半眼になった小名木川会長は、そう答える。

「あいつなら、その程度のことはやりかねない、っていうか。

 あいつらがやることをいちいちまともに受け止めていても、疲れるだけだぞ」


 突き刺さった大太刀を経由しての魔法攻撃を一通り試したところで、唐突に大太刀周辺の体表部が大きく消失する。

 大太刀の柄を両手で握っていた恭介は危うく落ちかけるが、すんでの所で消失した部分の縁に片手の手指をかけることに成功し、どうにかぽっかりと空いた大穴の中に体を潜り込ませる。

 大太刀を倉庫に収納し、代わりに魔力弓を取り出し、大穴内部に向けて無属性魔法を連発、新たに出来た穴に入り、そこでまで魔力弓を連発した。

 竜は空を飛んでおり、恭介はその体内に潜り込んだ状態になる。

 現状は、竜が体の向きを変えれば恭介はそのまま地上へと落下しかねない状態だ。

 だから、急いで複雑な穴を構築し、多少、竜が体の向きを変えても落ちないようにする必要があった。

 体表部の、バリヤーにも似た作用をする見えない皮膜は体内にはなかった。

 魔力弓による魔法攻撃は、そのまま通用する。

 このデカブツに対して、どこまでのことが出来るか。

 そんなことを思いつつ、恭介は素早く攻撃を続ける。

「師匠、聞こえますか?」

 そんなところに、仙崎から通信が入った。

「司令部が、現状報告を要求しています」

「今、竜の体内に入って、攻撃を続行中」

 恭介は、システム画面で通信機能を操作し、仙崎と中央司令部、双方、同時に伝えた。

「竜の体表には、魔法と物理、両方の攻撃を排除するバリヤーみたいなものが張り巡らされている。

 それは無属性魔法により、短時間のみ、消去可能。

 無属性魔法を当てた直後に、別の攻撃を当てるとどうにかダメージが通る」

 他のプレイヤーの参考になればと思い、攻略法を伝えておいたのだ。


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