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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接触篇

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総力戦(十)

「派手だな」

 モニターに映し出された各所の戦闘状況を観ながら、シュミセ・セッデスが呟いた。

「特に、魔法攻撃が」

「あれは、魔法少女隊の青山さんですね」

 モニターを一瞥して、横島会計が説明した。

「あのパーティーは、四人ともあの程度の攻撃は可能と聞いていますが」

「魔法少女隊。

 これまで、大型モンスターを一撃で処理して来たパーティか」

 シュミセ・セッデスが呟く。

「人間と同じような大きさのモンスターをまとめて始末する様子をこうして目の当たりにすると、今までとは違う印象を抱くな」

 城塞内に設けられた幅が広い通路を埋め尽くしたモンスター群。

 こちらは、城内に侵入していたモンスター群とは違い、ステルス状態ではなく、堂々と姿をさらした状態で、城塞の外目指して行進していた。

 その群れを、箒の上に腰掛けていた青山の魔法が、まとめて瞬殺する。

 青山が杖を振りかざすと同時に紫電の雷光が広範囲に発生し、モンスター群もろとも通路をざっと舐めた。

 そのあとには、黒焦げになって煙をあげるモンスター群の残骸しか残らず、それもすぐに青山の倉庫内へと転送される。

「こちらには、あれほど威力のある魔法の使い手はおらぬぞ」

 シュミセ・セッデスが指摘をする。

「セッデスにも、フラナにも、だ」

「その代わり、フラナにはこちらにはない魔法の使い手が居るじゃないか」

 小名木川会長が指摘をした。

「転移魔法とか、翻訳魔法とか。

 どちらかというと、生半可な攻撃魔法よりも、そうした実用的な魔法の方が便利だと思うんだが」

 発展した方向性が違うだけだ、という指摘だった。

 そもそも、こちらの魔法はスキルに含まれた能力に依存する部分が多く、独自に進歩を重ねてきたらしい、こちらの魔法体系とは別物という気がするし。

 小名木川会長にいわせれば、

「両者を比較してもあまり意味がない」

 ということになる。

「それに」

 小名木川会長は、そう続ける。

「魔法を含むスキルの使いこなしが問題なら、これから詳しい使い方を学んでいけばいいだけだろ」

「それもそうだな」

 シュミセ・セッデスは深く頷く。

「いずれにせよ、まずはこのチュートリアルを終わらせねば」

「現在の達成率をお願いします」

 小橋書記がシュミセ・セッデスに訊ねた。

「達成率は、八割を超えたところだ」

 シュミセ・セッデスは自分のシステム画面を確認した上で、即答する。

「モンスターは順調に倒しているのに、達成率の方はあまりあがらないな」

「ここまで来ると、倒したモンスターの数はあまり指標にはならないのかもな」

 小名木川会長がいった。

「大型や超大型も簡単に倒してしまうプレイヤーが参加しているから、モンスター側もそれに合わせて戦力の増強を図っている感じじゃないか、これは。

 情勢を見ながら、ゴールポストを動かしているってか」

「そのゴールポストとやらがなにかはわからんが、感触としては、そう考えるのがしっくりくるな」

 シュミセ・セッデスはこぼした。

「強い味方を集めると、それだけ敵も戦力を補ってくるとは。

 これでは、いつまでも終わらぬ泥仕合ではないか」

「そうでしょうか」

 この司令室では、これまで滅多に口を開くことのなかった築地副会長が、珍しく発言する。

「数を増やすだけは埒があかない。

 進展がない。

 そう判断すれば、相手も、今度は質を変えてくるのではないでしょうか?」

「質、か」

 シュミセ・セッデスは、そう応じる。

「つまりは、こちらの上質なプレイヤーに匹敵する能力を持つモンスターが、今後、出現してくる、と?」

「こちらではどうか知らないが、わたしらのチュートリアルの時は、最終日に同じようなことが起こっているな」

 小名木川会長は、静かな口調で指摘をする。

「スキルの扱い、その他。

 戦いに熟練した様子のモンスターが、多数、出現していた」

「やれやれ」

 シュミセ・セッデスがぼやいた。

「難儀なことだ」


「おや?」

 どやどやと、盾や甲冑、銃器などで武装した人形の集団が歩いて来た。

「なに、これ」

 遥は、立ち止まって呟く。

 ここで観てきた範囲内では、戦闘時のこうした人形たちの運用は、使い捨て前提であり、せいぜい銃器を持たせているくらいだった。

 ここまで重装備の人形集団を、遥はこれまで見たことがない。

「これはこれは、宙野さんではないですか」

 人形集団のはるか後方から、ハードシェルの装甲服に身を包んだ誰かが声をかけてくる。

「ええと」

 遥かは、いい淀む。

 その声に聞き覚えがあるような気もするのだが、とっさに名前が出てこない。

「この格好では判別できませんか」

 ハードシェルは、そう続ける。

「宇田であります。

 元、同じクラスだった」

「ああ、宇田くんね」

 遥はすぐに頷く。

「いわれてみれば、宇田くんの声だ。

 で、これ、どうなっているの?」

 物々しい装備を身につけた人形集団を手振りで示して、遥が訊ねる。

「今回、すでに多数の人形たちが壊されておりまして」

 宇田は、そう説明してくれた。

「これも必要な防備を怠ったこちらの手落ち。

 深く反省し、これより人形が壊されたバリケードを巡回し、防備を復旧しようとしているところであります」

「ああ、なるほど」

 遥は、脱力した様子で生返事をする。

「銃器で武装した人形たちを突破するような相手なら、生身の誰かをつけた方が早いじゃないかな。

 同じ人形でも、監督役がいるのといないのとでは、全然違うし」

 通常の、城塞内部の通路を通行可能なサイズのモンスターなら、銃器で武装した人形たちを突破出来ない。

 ステルス状態のモンスターでもカメラには写るように、たとえステルス状態であっても、人形たちはその存在を普通に感知し、自動的に斉射を開始する。

 機関銃で斉射されて生き残るようなモンスターは、ほとんどいないはずだった。

 それが突破されている、ということは、そのモンスターは、なにか特別な能力を持っているはず、なのである。

「人形を配備している箇所が多すぎて、そのすべてに生身のプレイヤーをつけるのは現実的ではないのであります」

 宇田は、説明を続ける。

「そこまでの余剰戦力がない現状がございまして。

 ならば、こちらとしては人形たちの戦力を底あげするしか、出来ませんな」

 それ、どこまで効果があるんだろうか?

 と、遥は疑問に思う。

 人形たちは、その特性として、判断能力がほとんどない。

「こうした場合は、こういう行動をせよ」

 と、事前に命じられた通りの行動をするだけの存在、だったはずだ。

 そうしたことも考えると、多少武装を充実させたとしても、敵モンスターの進行をいくらか遅滞させるのが、せいぜいなのではないか?

 いや、それでも、十分なのかな?

 侵入してくるモンスターに対して、それに対処するプレイヤーの数が足りていないのが、一番の問題なわけだから。

「うん、まあ」

 いろいろと考えてから、遥は曖昧に頷いて、そういっておいた。

「頑張ってね」

「宙野さんも、ご健勝をお祈りしているであります」

 宇田のその言葉を合図に、人形たちは左右に分かれて遥を避け、先へと進んでいく。

 宇田の、そのあとに続く。

 その背中を見送ってから、

「いろいろなプレイヤーが居るよね」

 と、遥は思う。

 遥は、宇田と人形軍団が進行したのと逆の方向に、走り出す。

 もう結構、モンスターを倒して来ているんだけどな。

 などと思いながら。

 いちいち数えていなかったが、今日だけで軽くン百体単位で、倒しているはずだ。

 それでもまだ、城塞内部のモンスターを駆逐し切れていない、となると。

 全体では、どれくらい入り込んでいるのだろうか。

 遥だけではなく、他のプレイヤーも各自で、モンスターを倒しているはずなのである。

「現在の達成率は、八十パーセントです」

 遥の脳裏に、そんなアナウンスが響く。

 先ほどから、あがったりさがったりしているが、達成率はだいたい八十パーセント前後で固まってしまったように感じた。

 つまりは、出て来るモンスターとこっちの消化率が、ほぼ拮抗しているってことだよね。

 遥は、あえて単純化して、そう考える。

 残り二十パーセントがゼロになるまで、モンスターを倒し続ける必要がある。

 いろいろ、難しい要因もあるのだろうが、遥にいわせれば、現状はそういうことだった。

 前のチュートリアル、その最終日みたいに、倒しにくいのが出て来るのかなあ。

 考えつつ、遥は接敵したモンスター群にステルス状態で突っ込み、素早く両手の短剣を振るって蹂躙していく。

 一体につき一回の攻撃で息の根を止めているので、足もさほど緩めていない。

 二十体以上は群れていたモンスターたちは、わずか数秒でその遺骸が遥の倉庫内に入ることとなった。

 モンスター群の中、半数以上は、遥の存在に気づく前に、息絶えたのではないか。

 その中に、戦闘に特化したスキルを持ったモンスターが混ざっていたとしても、そのスキルを使う機会は訪れなかった。

 うん、好調。

 半ば反射的な反応で体を動かしていた遥は、そのモンスター群を全滅させたあと、一人でそう納得している。

 全体の状況はよくわからないけど、わたしは、このまま敵を倒し続けていればいいよね。

「ねーちゃん、今、いい?」

 そんな時、彼方から通信が入る。

「いいといえばいいけど、要件はなにかな?」

「こっちはいいから、上に出て、恭介の護衛をしてくれってさ」

 彼方がいった。

「司令部が、そういってた」

「それはいいけど」

 遥は答える。

「なんであんたが、司令部の意向を伝言してるの?」

「うんと、詳しく説明すると長くなるんだけど、司令部、今、立て込んでいるらしいんだわ」

 彼方は、そう返答して来た。

「恭介、これから爆心地、ええと、モンスターの出現地点を、こっちの人たちはそう呼んでいるらしいんだけど。

 その爆心地に向かって、艦砲射撃をするらしい。

 で、その間、恭介が狙われてもいいように、護衛をつけておこうかな、ってことで」

「ああ、なるほど」

 遥は頷く。

「その、爆心地だっけ?

 今日は、そこから出て来るモンスターの数が、多過ぎるから、か」

 その爆心地は、現代兵器の火砲によって、大半のモンスターを出現前後で粉砕している、はずだった。

 その方法がうまくいっていないのではないか。

 今、司令部は、そう考えているらしい。

 まあ、なんらかの方法で、こちらが想定する以上のモンスターを、その爆心地から逃がしているのは確かだしね。

 心の中で、遥は頷く。

 恭介の火力で、ちょっとつついて様子を見てみよう。

 という、司令部の意図するところは、遥にも十分に理解が出来た。


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