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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接触篇

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総力戦(四)

「ああ!

 超大型、いっぱい出てきている!

 侵入もされてる!」

 モニターにざっと目線を走らせたあと、結城紬は大声を出す。

「今までで、一番激戦じゃないですか!」

「ちょうどよかった、ユウキツムギ殿」

 シュミセ・セッデスはそういって重々しく頷いた。

「超大型が出現している城塞外部で、多少の死傷者も、たった今、出たようだ。

 起きたばかりですまないが、そのまま救援に向かってはくれないか?」

「すぐに護衛と案内の者を手配します」

 アイレスが即座にそのあとを引き取った。

「ささ、ユウキツムギ殿、こちらへどうぞ」

「ってか、会長たちまでここに居るし!」

 結城紬はそんな風に大声を出しながら、中央司令室から出て行く。

「いったい、なにがどうなってんの!」

「丸一日以上、寝たままだったのか、あの人」

 その背中を見送ってから、恭介がいった。

「よほど疲れていたんだな」

「あの子には、負担をかけすぎてしまったな」

 シュミセ・セッデスもしみじみとした口調でそういう。

「これまでここの戦線を維持してきた、最大の功労者だ。

 落ち着いたら、なんらかの形で報いてやらねばならんな」

「それもこれも、このチュートリアルを無事に終えてからのこったろ」

 小名木川会長が、そういった。

「あっちもこっちも激戦だし、ついに死者も出はじめた。

 これからが、正念場になるんじゃないか?」

「まあ、そうなるんでしょうけれどもね」

 恭介が、応じる。

「問題は、これからなにが起こるのかわからない、ってことですよ」


 重症者のみが集められた場所に案内された結城紬は、あまりの惨状に言葉を失った。

 野外に、布を敷いただけの場所。

 そこに横たえられていた負傷者の数は、ざっと見ても五十名以上は居る。

「これ、フラナの人たちだけですか?」

「城塞内部では、まだそこまで深刻な被害を受けていないそうです」

 案内役のセッデス勢兵士は、結城紬の疑問に即答した。

「こちらの超大型モンスターは、まだ円滑な駆除法が確立されていないもので。

 どうしても、被害が大きくなります」

「円滑な、駆除法」

 結城紬は顔を伏せ、区切るように言葉を押し出してから、奥歯を強く噛む。

 自分は、なんと無力なことか。

「人数も多いことですし、とにかく、急いで全員を処置します!」

 結城紬は大きな声でそういってから、両手を大きくあげる。

「エリアヒール!」

 結城紬を宙とした半径三十メートルほどの空間が、かすかな、白い光に覆われた。

 そのまま、五分ほど経過すると、それまで身動きもしなかった負傷者たちが身じろぎをはじめ、咳き込み、果ては、起きあがってくる。

 そこで集中力が途切れたのか、目をつぶっていたままだった結城紬は、荒い息をつきながら、その場に膝をついた。

 結城紬にしても、これほど大量の重症者を一気に治療したことは、これがはじめての経験になる。

「……どれくらいの人が、助かりましたか?」

 顔を案内の兵士に向けて、結城紬はそう訊ねた。

「ほとんどの者は、自力で立てるくらいには回復したようです」

 その兵士はそう答えたあと、ゆっくりと首を振った。

「ですが、七名ほどは。

 その、間に合いませんでした」

「そう、ですか」

 掠れた声でそういい、結城紬は顔を伏せる。

「七名」

「すでに、別の負傷者たちが、続々とここに運び込まれるそうです。

 ここまま、続けられますか?」

「続けましょう」

 結城紬は即答する。

「ここに運び込まれてくる人たちは、自力では動けない人たちなのでしょう?

 早く処置をしないと、手遅れになる人が増える一方です」

 これまで数日、結城紬はこちらのチュートリアルに参加している。

 その経験から考えても、今回のチュートリアルは重症者の数が多過ぎた。

 結城紬は、心の中で危機感を募らせていく。


「この!」

 Sソードマンの美濃は、巨大なモンスターの突進を自分の体で止める。

 そのモンスターはキマイラ型。

 基本的には、鷲のような翼を持ったライオン、だったが、全長が五メートル以上はある。

 今はその翼が銃撃により破損し、空は飛べないようだ。

 が、巨大な獣の部分は健在で、美濃の装甲に包まれた頭部に噛みつこうとしている。

 ハードシェルのゴツい装甲服に身を包んでいなかったら、生臭い吐息をまともに浴びていたかも知れない。

「クロウ・アーム!」

 叫んで、美濃は鉤爪のついた左手を、モンスターの鼻面に押しつけ、その状態で油圧駆動の鉤爪を閉じる。

 キマイラ型の上唇が鉤爪によって挟まれ、そのまま歯茎と肉を圧迫していく。

 巨獣が、吠えた。

 その声を、美濃は耳元で聞く。

「パイルバンカー・アーム!」

 美濃は叫びながら右手をキマイラ型の喉元に押しつけ、その状態で手の甲に取りつけた金属製の杭を打ち込む。

 爆発音とともに一メートル半ほどの杭が炸薬によって前に押し出された。

 右手の肘のあたりから、排莢する。

 喉から首のうしろにかけて、金属の杭によって貫かれたキマイラ型は、しばらくうなり声をあげて身をよじっていたが、すぐに動かなくなって姿を消した。

 その遺骸は、美濃の倉庫に収納されたはずだ。

 荒い息をつきながら、美濃は右手に取りつけた金属の杭を収納し、パイルバンカー用の炸薬を補充する。

 誰だ、こんな、面倒で物騒な武装を考えたの。

 と、美濃は心の中で毒づく。

 そうした両手の装備をノリノリで採用したのは、実は美濃自身であったのだが。

 想像上で格好いいな、と思うのと、自分自身で使用することの間には、大きな差があった。

 それにしても、と、素早く左右を見渡した美濃は、思う。

 キリがないな。

 最初のうち、Sソードマンは四人で協力しながら一体の大型モンスターを駆除していた。

 その方が、安全で確実だったからだ。

 しかし、あの爆心地から大型モンスターが出て来るペースが、想定外に早く。

 気づくと、一人で一体の大型モンスターを担当するようになってしまっている。

 いや、出来るか出来ないか、っていったら、出来るんだけどさ。

 そう思いはするものの、どんどんプレイヤー側がモンスター側に圧迫されている現状は、否定できなかった。

 どんどん、余裕がなくなっていく。

 背後、城塞の外部では、大型モンスターよりもさらに大きい、超大型モンスターが続々と出現している。

 ただこちらは、召喚士の左内が参戦しているため、大型モンスター同士の戦闘もあちこちで起きていて、徐々に戦況が好転しているように見えた。

 左内が召喚した召喚獣が倒したモンスターを、左内は召喚出来るようになる。

 つまり、時間が経てば経つほど、左内の手駒は充実し、強大になっていくはずだ。

 ずるいジョブだよなあ。

 と、美濃は思う。

 まさしく、語義通りに、チート(ズル)だ。

 左内と同じユニークジョブ勇者である結城ただしは、今は、城塞外を文字通り飛び回って、超大型モンスターの始末に奔走していた。

 あれも、チート。

 普通なら、プレイヤー一人だけで超大型モンスターを、瞬殺出来ないから。

 ユニークジョブの連中は、能力的に見ると、かなりおかしい。

「よ」

 気づくと、同じSソードマンに所属しているゆずりはが、すぐそばに立っていた。

「ひょっとして、もうバテてる?」

「バテてるよ、とっくに!」

 美濃は、語気荒く答えた。

「なんだって、うちらがこんなことを!」

 元の世界に居た頃なら、絶対、自分がこんなことをするなんて、想像すら出来なかったはずだ。

「外の方はともかく、爆心地、もう少しなんとかならないの?

 あそこから出て来るのが増えすぎて、対応しきれてないんだけど!」

「それ、ね」

 楪がいった。

「今、リーダーが司令部と交渉している。

 すぐに、もっと戦力を出してくれって」

「そんな予備戦力、居るの?」

「いるんだなあ、それが」

 楪がいった。

「今日は司令部に、あの破壊が控えているんだって」

「破壊」

 美濃は、小さく呟く。

「あの、ユニークジョブではない方の、チート野郎か」

 あいつが出て来るんなら、たいていのことはなんとかなるような気がする。

 というか、あんなのが控えていたんなら、出し惜しみせずに、さっさと出して欲しかった。

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