表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接触篇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

276/401

恭介の新しい仕事

「よく来てくれた」

 昨日と同じ場所、つまり、セッデス城塞内部の転移魔法陣に転移すると、なんとシュミセ・セッデス本人が待ち構えていて、挨拶もそこそこにそう切り出した。

「早速相談なんだが、トライデントの四人には救護班から外れて貰い、最初から実戦部隊の方に組み込ませて貰わないか?」

「そんなことをしなくても、戦力に不足はないでしょうに」

 恭介は即座に応じる。

「こちらにしてみると、最初にお約束した以上の仕事をする筋合いはないんですが。

 昨日は一種の緊急避難的な行動であるとしても、今日は、むしろ、戦力が余っているくらいでしょう」

「昨日までのチュートリアルと同じくらいの規模であれば、確かにそうなるのだろうな」

 シュミセ・セッデスがいった。

「ただ、あれは、どうもこちらの足元をみて、出て来るモンスターの質と量を調整しているような節があるのでな。

 今日も、これからどう推移するのか、まったく読めない。

 それどころか、どうも先ほどから嫌な予感ばかりがする。

 状況を読んで独自の判断で動いてくれる戦力は、実は少ない。

 お主らトライデントに動いて貰えると、セッデスとしては、かなりの恩義を感じるであろう」

「と、いわれてもねえ」

 恭介は、背後を見渡してから、いった。

「おれたちとしても、こうしてケレセッデスの村から呼び寄せた人たちを、最後まで安全に仕事をして貰う必要があるわけでして。

 万が一のことを考えると、彼らからあまり離れたくはないです」

 恭介たちトライデントにしてみれば、こちらのチュートリアル関連の事項はあくまで「他人事」であった。

 協力すること自体に反対する理由はないが、だからといって無理をする理由もない。

「ケレセッデスの者たちに、そこまで義理を通すか」

 シュミセ・セッデスはそういって自分の顎を掻いた。

「それが悪いとは、いわんが。

 昨日、あれからわれらセッデス勢においても、回復術を積極的取る者が続出していてな。

 実のところ、昨日までよりは、医療班の出番は減るものと予測されているのだ。

 多少の手傷であれば、その場で治してしまうだろうしな。

 さらにいえば、城塞内部に敵が侵入した時に備え、詰め所の周辺に護衛の人形も増やしている」

「結構ですね」

 恭介は本心から頷いた。

「おれたちが出張る前にそうしてくれていたら、互いの手間が省けたはずですが」

「そして、今日はフラナの志願者たちが、多数、押しかけてきている。

 それ自体は、まことに結構なことだ。

 大いに助かっている。

 しかし彼らフラナの者たちは、城塞内部での防衛戦には不向きでな。

 大半は、城塞外の周辺部に位置取って、そこで城塞から出て来たモンスターを始末して貰うことになった」

「そこが最終防衛線になるわけですか」

 恭介は、これにも頷く。

「そちらの方にも、救護班の人員を割け、と?」

「そちらからは、特になにもいわれていない。

 多少の負傷なら、自分たちでどうにかするそうだ」

 シュミセ・セッデスがいった。

「だがまあ、万が一ということもあるからな。

 Sソードマン、魔法少女隊、それに、ユニークジョブズの三パーティも、このフラナの者たちに合流して貰い、そこの防衛を担当して貰おうと思っている」

 防衛、というより、城塞から出てそのまま逃げようとするモンスターを漏らさずに狩るのが、実際に仕事になるのだろうが。

 勝手のわからない城塞内部をうろつかれるよりは、見通しのいい場所で警戒にあたっていた方が、なにかとやりやすいだろうしな。

 とは、恭介も思う。

 しかし。

「城塞内部の戦力は補増しなくてもいいのですか?」

 恭介は、疑問を口にした。

「昨日以上の戦力に侵入されたら、対応に苦慮するのでは?」

「それを、お主らにして貰おうかと思っている」

 シュミセ・セッデスはそう答える。

「救護班の役割は他の者に任せて、せめてトライデントの四人だけでも、遊軍として控えていてはくれまいか?」

「たった四人でこの城塞内部を警戒しろといわれても、物理的に無理でしょ」

 恭介はいった。

「この城塞、どんだけ広いと思っているんですか?

 それにおれたち、まだまだ内部の様子を把握していないですし、案内なしではまともに移動も出来ない状態ですよ」

「無論、お主たちだけではなく、セッデスの者も幾人か割いて、警護にあたらせるつもりだ」

 シュミセ・セッデスは重々しい口調で宣言した。

「昨日のお主らほど、鮮やかな手並みで、というわけにはいかぬだろうがな」

「つまりは、おれたち四人だけではない、ということですか」

 恭介は、ため息混じりにそういった。

「生徒会の人たちは、もう来ているんですよね?

 ドローンの配置とかも、終わっているんですか?」

「そちらも、すでに終わっている」

 シュミセ・セッデスは頷く。

「城塞内部、くまなく、とはいかぬが。

 主要な場所はだいたい、映像で見張ることが可能となった」

「警戒網と監視網は、昨日よりも充実している、と」

 恭介は隣を振り返って、彼方に意見を求める。

「彼方、どう思う?」

「セッデス側の主張するとおりに動いておいた方が、無難じゃないかな」

 彼方は即答した。

「今日が駄目でも、明日以降があるわけだし。

 それに、基本的にここは、ぼくらの戦場ではないし」

 トライデントを含めたセッデス勢以外の戦力は、あくまで協力をする立場であり、主導権を握っているわけではない。

 だとしたら、指揮権を持つセッデス勢のいう通りに動く方がいいのではないか。

 という、意見であるらしい。

「わかりました」

 恭介は頷いた。

「おれたち四人は、城塞内部の遊軍として。

 他の者たちは、昨日と同じく救護班として配置につきます。

 具体的な居場所まで、案内してください」

「あ、どうも」

 その時、転移魔法陣が作動して、新たに二人の人影が現れた。

 左内左記と、吉良明梨の二人だった

「ええと、ぼくらはユニークジョブズというパーティになります」

 周囲を見渡したながら、左内がそう名乗る。

「おお、来てくれたか」

 シュミセ・セッデスはユニークジョブズの二人に向き直る。

「お主たち二人は、城塞外部の配置となる。

 そこで、城塞内部から出て来るモンスターを掃討する役割になるな」

「はあ」

 左内は要領を得ない表情で生返事をした。

「そういわれましても、ぼくたちはこちらの状況をあまりよくわかっていないもので」

 左内としても、いわれた内容をどう評価したものか、判断に困るのだろう。

「チュートリアルがはじまるまで、まだ少し時間がありますよね」

 恭介が、口を挟んだ。

「そちらの女子、吉良さんは、不特定多数の人員の力を、一定時間増すスキルを持っています。

 モンスターの発生地点に可能な限り多数の人員を集め、彼女にバフをかけて貰うことをお薦めします」

「おお、是非、そうすることにしよう」

 シュミセ・セッデスは鷹揚に頷く。

「そういうスキルもあるのか。

 なかなか、奥深いものだな」

 セッデス勢側は、こちらの人員が持っているスキルの詳細を把握していないらしい。

 というより、わざわざ報告する人もいないから、当然の帰結として、そうなるのだろう。

「あと、もう片方の左内くんは、召喚術士です。

 無数もモンスターを召喚して使役出来るジョブになります」

 恭介は、そう続ける。

「全部とはいわないけど、その一部を借りて、城塞内部の手薄な場所を警護させてはいかがでしょうか?」

「サナイとやら、それは可能なのか?」

「あ、はい」

 シュミセ・セッデスに確認され、左内は頷く。

「可能といえば、可能ですが。

 ただ、外見的には普通のモンスターですので、こちらの方が間違って倒さないように、周知を徹底願います。

 いきなり襲われたら、うちの子たちは反射的に、問答無用で反撃に移行します。

 これは本能的な行動なので、避けようがありません」

「無駄に被害を増やさぬためにも、か」

 シュミセ・セッデスは、これにも即座に頷いた。

「周知を徹底させよう。

 アイレス、まずはそのモンスターの案内する者をこちらに」

「は」

「間違っても同士討ちが生じることがないよう、案内の者、ならびに城塞内の人員に徹底しておけ。

 こちらを襲ってこないモンスターは、そのまま無視するようにと」

「は」

「気が変わった」

 シュミセ・セッデスはそういって振り返り、恭介の目をまともに見据えた。

「キョウスケ殿。

 お主はどうも、しばらく手元に置いておいた方が、なにかと役に立ちそうだ。

 状況次第では戦って貰うかもしれないが、まずはこちらに同道して、司令部にて助言をしていただきたい。

 現状、こちらとあちら、双方の状況を把握している人材は、極端に少ないのでな」

「ああ」

 恭介は生返事をして、彼方の方に振り返る。

「大人しくついてくしかないね」

 彼方はいった。

「城塞内でくすぶっているより、役に立つのは確かだし」

「ええと」

 恭介は少し考えてから、返答する。

「おれがいくのは別に構いませんけど。

 こちらのアトォを、同行させても構いませんか?

 おれはフラナの事情には明るくありませんし、その点、このアトォなら、同族のことになるのでおれよりは詳しいかと。

 細かい指揮をするのなら、フラナの事情をよく知っている人が居た方が、やりやすいでしょうし」

 結果、アトォを道連れにすることにした。

 恭介が口にした通り、この場では、「情報は力」になる。

 無用な混乱を避けるためにも、事情に通じている人が集まっていることが、肝心に思えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ