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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接触篇

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来訪者たちの事情

 今日のチュートリアルがはじまるまで、まだかなり時間があった。

 急遽セッデス勢に連絡を入れ、現在の状況を説明して、フラナの志願勢の受け入れを準備して貰う。

 そうしている間にも、向こう側からやってくる志願者たちは増え続けていた。

「なんでも、モンスターが湧き放題になっているということだ」

「ポイントも、稼ぎ放題だな」

 志願者たちは、口々にそんな内容を語り合っている。

 なるほど。

 と、恭介は納得する。

 つまりは、いい稼ぎになるからと、かなり即物的な理由で志願して来る人が多いわけだ。

 さらにいえば、ダッパイ師の手配により、城塞まで移動するコストも実質、なくなっている。

 彼らにしてみれば、かなり「おいしい」仕事に見えるのだろう。

 さらにいうと、システムを介して遠距離でも時差なしで情報交換可能な状況になっていることで、この噂が速やかに広がったのだろうな。

 と、恭介は想像する。

 志願者たちの構成は、性別も年齢層も、バラエティに富んでいた。

 女性であるスジャンが狩人をやっていることからもわかるように、男性しか戦わないセッデス勢とは違って、フラナの方は男女問わず、狩りや戦いをする文化のようだ。

 それ以外に、服装なんかも、各人、バラバラである。

 土地が違えば、ファッションも違ってくるか。

 と、恭介は、そう納得する。

 気候や環境が違えば、入手可能な素材も、衣服として必要とされる機能も違ってくる。

 こうしてみると、フラナはかなり広い地域に分布していることが理解出来た。

 フラナとはいっても、一枚板ではないのだろうな。

 と、恭介は想像した。

 ルーツは同一であっても、今ではそれぞれの土地にあった、別の文化を育みつつあるのではないか。

 ともあれ、今回に限っていえば、

「モンスターの殲滅」

 という、単純な、共通の目的が存在している。

 大きく反目することも、ないだろう。


 彼方がセッデス勢との協議を終え、順番に、フラナの志願者たちが魔法陣を経由してセッデスの城塞へと送られていく。

 フラナの志願者たちは、割と従順にこちらの指示に従ってくれた。

 一度にこれほどの大人数を転送することは滅多にないということで、ダッパイ師と、アトォを含めた弟子たちは交代しながら、転送作業に勤しんでいる。

 膨大な魔力が必要といわれたので、急遽、恭介も協力することになった。

 とはいえ、以前、アトォにおこなったように、転移魔法を使っている人の肩に手を置くだけなのだが。

 そうしてフラナの人々を転送するのに意外に時間が掛かり、広場から人が居なくなるまで、かなりの時間が必要となった。

 恭介たちの手が空いたのは、結局、その日の昼過ぎになる。

 トライデントの四人は一度家に戻り、そこで休憩も兼ね、遅い昼食を摂ることにした。

「小さい子たちはどうしているの?」

「なんか、適当にそこいらを駆け回っているよ」

 遥が訊ねてきたので、恭介が答えた。

「遊びたい盛りだし。

 あの子たちにとっては、こちらは物珍しいものばかりなんだろう」

 拠点内に居る限りは、迷子になる心配もないはずだった。

 集合時間になっても来ない子が居れば、システムで連絡を取って合流すればそれで済む。

「スジャンさんたち、この一件が終わったら、こちらで狩人をやりつつダンジョンに入ったりして暮らしたいってさ」

 遥が、そう続ける。

「元居た村は、今後、モンスターが増えないのなら、狩人はそんなに要らないはずっていってた」

「なるほどねえ」

 恭介は頷く。

「狩人の仕事は、あちらではまずモンスターが相手になるのか。

 野生動物ではなく」

「なんか、凶暴性っていうか、人間に対する態度が違うみたい」

 遥が答える。

「あちらで世代を経たモンスターは臆病で、人間の気配を感じると逃げていく。

 だけど、チュートリアルで出て来たばかりのモンスターは、人間の気配を感じると逆に襲って来る、っていってた」

「生態系に組み込まれた動物と、まだそうなっていない動物との差か」

 彼方は、誰にともなくそう呟く。

「知性が高いモンスターの生存率とか、どうなっているんだろうな」

「そういうモンスターがあちらのチュートリアルで出現しはじめたのって、ここ数日だそうだから」

 恭介が答える。

「生き延びて、繁殖するところまで成功するモンスターは、まだ出ていないんじゃないかな。

 それに、そのモンスターが居た場所とは環境も違うだろうし、単純に長生きは出来ないって可能性もある」

「そういえば、こっちのチュートリアルの時にも、うまく逃げられたモンスター、それなりに居たはずだよね」

 遥が、疑問を口にする。

「割と大量、かつ、多種多様だったと思うけど。

 そういうの、森の中とかその外とかで、まだ生き延びているのかな?」

「生き延びている可能性は十分にあると思うけど」

 彼方が答える。

「それがこの世界土着の生物なのか、それともモンスターとして出現した動物なのか、ぼくたちにはほとんど区別が出来ないと思う。

 ええと、少なくとも、生物系のモンスターに関しては。

 それ以外の、あまりにも不自然な、普通なら発生しない形態のモンスターなんかは、そもそも生殖する機能自体があるのかどうか怪しいし」

 ガーゴイルやゴーレムなど、明らかに生物系ではないモンスターも、前のチュートリアルでは一定数、出現していた。

「知性があるタイプのモンスターが生き延びて、繁殖とかしていたらかなりややこしいことになるな」

 恭介が指摘をする。

「ことによると、なんらかのコミュニケーションが取れる可能性も出て来るわけで。

 そうなると、そうしたモンスターは、外敵として排除する一方でいいのか、って見方が出て来る」

「異民族ではなく、異種族として認識するってこと?」

 彼方がいった。

「そういう可能性も、まったくないとはいわないけど。

 多分、生物としての性質自体が基礎から違うから、仮になんらかのコミュニケーションが成立したとしても、本当の意味で理解し合うのは不可能に近いんじゃないかな。

 言葉は交わせても理解し合えない相手というのは、居るよ」

「居たなあ、ダンジョンマスターの中にも」

 恭介はそういって、頷いた。

「将来的にはどうなるのかわからないけど、今の時点では、モンスターは全部排除するって前提で、問題ないとは思うけど」

 その前提まで疑ってしまったら、そもそもチュートリアルやダンジョン攻略など、そうしたゲームを進行させることが出来ない。

 とりあえず、今の恭介たちの立場としては、そうした場で出現した相手はすべて外敵、モンスターであると認識して一律に排除していくしかなかった。

「もう少し部外者寄りの立場で一連の現象を観察する立場だったら、チュートリアルが元の生態系に与えた影響とか詳しく調べるのも面白そうなんだけどね」

 最後に、彼方はそんな感想を漏らす。

「壮大なテーマ過ぎて、寿命がいくら長くても終わりそうにない研究だな」

 恭介は、そうコメントしておいた。


 昼食後は、向こう側への出発に備えて、関係各所に連絡を入れたり身内の準備を整えたり、といった雑事に忙殺される。

 彼方は生徒会とセッデス勢司令部などと連絡を取り、他の三人は手分けして向こうへ行く予定の人々に「体調も含め、なにか不都合なことはないか」などの確認の連絡を入れる。

 その途中、細々としたことを質問され、それに答えたりする時間が発生して予想外に時間がかかった。

 彼らも、慣れない環境に来たばかりで不案内なことが多く、こちらも、どこまでも懇切丁寧に対応するだけの余力を持っていない。

 基本、

「マーケットのどこそこの売り場を確認すれば、その手の商品は手に入るはず」

 程度の些細な情報を渡せばそれで済む程度の、ほんの些細な相談が多かった。

 逆にいうと、恭介たちの世界並みに資本主義に毒されていない世界だと、多種多様な商品がどこに分類されているのかすら、判断がつかない。

 たとえば、繕い物をするのに必要な針と糸は手芸用品売り場を見れば見つけられるのだが、彼女らは「手芸」という言葉すら知らなかった。

 また、「検索」という行為がなにをする意味するのかも、まったく知らない状態であり、つまりは基礎的な知識が欠落しているが故に、しなくていい苦労をしている形になる。

「これも、案外大きな問題になるのかもな」

 恭介はそう思い、これまでどんな相談があったのか、軽くメモを取って残しておくことにする。

 そうした情報はこれから、向こう側からこちらに来る人たちにこちらの常識を教える際、なんらかの指針になるはずだった。

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