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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接触篇

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シュミセ・セッデスの決断

 引率してきた人たちを送り返したあと、トライデントの四人は残っていたセッデス勢の一人に案内を頼んで、中央司令部まで案内して貰う。

「頭領のお呼び、ですか」

 歩きながら、案内してくれた戦士はそんなことをいっていた。

「わざわざ呼ばれるくらいの人たちは、やっぱり違うんですねえ」

 聞けば、セッデス内での地位は世襲ではなく実力主義で、少し上の世代の者が次世代の人間を精査した上、普段の実績で次の頭領などを決めるという。

 シュミセという名称も固有名詞ではなく、「セッデスを代表する者」的な意味を持つ称号、ということだった。

「先々代のシュミセが、現在、事務方筆頭を務められている、アイレス様になります」

 とも、教えてくれた。

 加齢などの理由で現役の戦士ではなくなった者も、資質によっては別の役職としてセッデスという組織に寄与することもある、という。

 チュートリアルという、毎日事実上、大規模なモンスター戦がおこなわれている社会である。

 その前提に立つと、どうにかして組織全体を持続可能な形に整えていく必要があるわけで、人材の活用法についてもそれなりに考慮されるようになるのだろうな、と、恭介は想像する。

 誰かが倒れてもすぐに代替の人材が来るようでないと、組織の形は保持できないだろう。

 これは想像になるが、現在のシュミセも、次席に相当する交代要員が複数名、用意されているはずだ。

 能力に関係なくヒエラルキーを保持しやすい世襲というシステムは、こうした組織を保持するのには向いていないだろうし。


 案内された中央司令室は、案外広く、そして、かなりの数のモニターで壁の一面を埋め尽くされていた。

 大小のモニターはまだ新品で、ここ数日のうちに用意された物だとすぐに判断出来る。

 シュミセとアイレスを含む数名のセッデス勢と、宇田、マダム・キャタピラーらしい数名のプレイヤー、それに、坂又どすこいズの面々などが揃って恭介たちトライデントの到着を待っていた。

「到着して早々だが」

 シュミセ・セッデスが、そう切り出して来た。

「トライデントは、今日の戦闘をどのように評価するのか。

 まずはそれを聞いておきたい」

「うまくいった方ではないですかね」

 恭介は左右に居た彼方と遥を確認し、ここは自分でいいのかと納得してから、発言する。

「つまり、おれたちが連れてきた、新参者の分担に関しては、ということですが。

 想像していたよりも、与えられていた役割を無難にこなしてくれたと思います」

「無論、それについても十分に評価はするつもりだ」

 シュミセ・セッデスは、さらに追求してきた。

「今回、モンスターどもは、城塞内部に侵入してきた。

 こうした動きは、ここ数年来、なかったことだ。

 それに、城塞周縁部に現れた、あの大型モンスター群。

 今日は、前例のないことばかりが多かった。

 お主らが居なかったら、この城塞も完全に陥落していたかも知れない」

「おれたちが城塞内に居なかったら、モンスターたちのそうした動きも発生しなかったかも知れません」

 恭介は、そう指摘をした。

「あちらでの事例を見ると、どうも、攻め込んでくる側は、こちらの力量を見極めながら、その実力に釣り合うよう、モンスターの発生数や強さを調整しているような節もありますので。

 おれたちの存在だけではなく、セッデス勢の皆様がそれだけ強くなったということでもあるんでしょうが」

 恭介たちのチュートリアルでも、終盤は前例にないことばかりが起こっていた。

 チュートリアルとは、そういう性質のものなのだろう。

「明日以降のことを考えると、仮定に仮定を重ねるのも考え物なのだがな」

 シュミセ・セッデスはため息混じりにそういった。

「明日以降、どのような対策を採ればよいものか。

 トライデントだけではなく、この場に居る皆に忌憚のない意見を述べて貰いたい」

「その前に、いくつか確認しておきたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」

 恭介が、片手を小さくあげて質問した。

「なんだ、いってみろ」

 シュミセ・セッデスは、小さく頷く。

「まず第一に、本日の達成率はどこまでいったのか、それを確認しておきたいです」

「最終的には、九割五分まで届いた」

 シュミセ・セッデスは真面目な表情で頷いた。

「ようやくと見るべきか、これほどの準備をしてこの程度と見なすべきか、微妙なところではあるが」

「残り五分を、どうしたら埋められるかということですね」

 恭介はそういって、頷く。

「次に、これは本質的な質問になりますが。

 セッデス勢は、このチュートリアルを早く終わらせたいと、本気で望んでいるのですか?

 それとも、長引かせた方が都合がいいとお思いですか?」

「これは異なことを」

 シュミセ・セッデスは、驚いた表情になった。

「無論、早く、明日にでも終わらせたいと思っている」

「建前ではなく、本気でそうお思いですか?」

 恭介は、平然とした態度のまま、質問を続ける。

「チュートリアルが終わってしまうと、ことによると、セッデス勢の存在意義がなくなってしまうかも知れませんよ?

 その可能性を、理解した上での発言ですか?

 シュミセ・セッデス様の意向はそれでよしとしても、他のセッデス勢の方々も、そのことを十分に理解していますでしょうか?」

「……それは」

 シュミセ・セッデスはそういったきり、しばらく絶句した。

 チュートリアル終了後、こちらの世界がどうなってしまうのか、事前に予測することは出来ない。

 強いていえば、向こうの世界と同様に、次のフェーズとして新たなゲームがはじまるのだろうと、誰もが漠然と予想はしているのだが。

 それとて、あくまで推測の域を出ず、実は、根拠らしい根拠はないのだった。

 ことによると、戦うことしから知らないセッデス勢の居場所が、丸ごと無くなってしまうような事態も、十分に考えられる。

「それでも、だ」

 しばらく沈黙してから、シュミセ・セッデスはきっぱりした口調でそう断言する。

「おれは、これでも当代のシュミセであるからな。

 おれも、その程度の責任は取らせて貰おう」

「そういうことでしたら、こちらも手を尽くしましょう」

 恭介は、そう応じる。

「これまでは、負傷者の手当て、引いては、聖女である結城紬嬢の負担を軽減することを主眼に置いて対策を講じてきました。

 明日以降は、それに加えて、モンスターを殲滅するための助力も担当することになります。

 まずは、そうですね。

 もう少し、戦力を補増しておきましょうか。

 あちらでの前例を参考に考えますと、チュートリアル終末期は、あちらも想定外の手を使ってきますから、こちらも、手段を選ぶ必要はないでしょう。

 新しく呼んだ人たちは、想定外の事態に対応するための遊撃隊として待機させておいてください」

「具体的に、誰を呼べばいいのだ?」

 シュミセ・セッデスが、訊ねて来る。

「われらは、そちらの事情にはあまり詳しくない。

 適切な人材を推挙して貰えると、ありがたいのだが」

「最低限、二つのパーティは呼んで貰いたいですね」

 恭介は答えた。

「魔法少女隊と、それに、Sソードマン。

 この二つのパーティは、こと、攻撃力に関していえば、今あるパーティの中では突出しています。

 あと、誰か呼んでおいた方がいい人って、居るかな?」

「意見具申、よろしいでしょうか?」

 例によって妙な言葉遣いで、宇田が発言した。

「欲をいえば、熟練したドローン使いが欲しいところですな。

 今から監視カメラを増やすにしても、時間が足りませんし」

「ドローン使い、ね」

 その言葉に、彼方が頷いた。

「確か生徒会の中に、そういうのに慣れた人が居たな。

 いっそのこと、生徒会全員を招待するってのもありか。

 戦力としてではなく、今後の参考にするための見学者として。

 あちらでも、これからなにがあるのか読めない状況だし、今後の参考にはなるでしょ」

「どこまで介入するのかは生徒会の人たちに判断させるとして、まずは全員をこちらに招待する、と」

 恭介は頷いた。

「ただし、そのドローン使いに関しては、少し強く協力を要請してみる、と。

 そんなところでいいかな?」

 恭介は周囲を見渡し、全員に確認する。

「他に、呼んでおいた方がいい人とかは居ます?」

「戦力になる、うんぬん以前に」

 遥が指摘をした。

「今の時点で呼びかけに応じていないんだから、他の人はかなり強くいわないと、こちらに来ないと思うんだよね。

 それで、いやいや来て貰っても、あんまり積極的に動いてはくれないと思う」

 それもそうか。

 と、恭介も納得した。

 数日前から回復係として全プレイヤーに呼びかけはおこなっているわけで、その時点で応じていない人は、こちらの状況にあまり関心がないはずだった。

「あ、あと」

 片手をあげて、今度は彼方が発言する。

「今日ので五パーセントも取り逃がしているってことは、どさくさにまぎれて城塞の外に逃げているモンスターが居るってことですよね?

 こういうモンスターは、おそらくステルス持ちで、戦うことを避けて逃げに徹していると思うんで、完封を目指すのならそちらの対策も必要になってくると思う」

「その対策、具体的な案もすでに思いついているんだろう?」

 恭介は確認した。

 長いつき合いだから、彼方が考えそうなことはだいたい想像がつく。

「完璧を期するのなら、あの二人を引っ張り出す方がいいかな、と」

「ああ」

 恭介は頷く。

「ユニークジョブズの二人ね」

 彼方の回答は、恭介が推測した回答、そのままだった。


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