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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接触篇

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268/401

先行組の場合

「ひぇえ」

 わざわざ砲塔上部のハッチから上半身を出して、マダム・キャタピラーの水島が城壁の外縁部を見ている。

「なにあれ、大型?

 いや、超大型クラスか。

 全長二メートルとか三十メートルクラスが、ごろごろ」

「どうせ、あの破壊が対処しているんでしょ?」

 車内から、そんな声が返って来た。

「ワイバーンが一撃で倒せるんだから、あれも問題ないっしょ」

 セッデス勢司令部は先ほどから、

「各員、落ち着いて、これまで通りの仕事をまっとうせよ」

 といった内容のアナウンスを繰り返している。

 つまりは、外縁部に出現した超大型には干渉しなくていい、ということだった。

 とはいえ、外側からあんなデカいのに侵攻されてくると全滅の憂き目に遭うのはわかりきっている。

 現在進行形で戦車に搭乗している人間としては、そちらを気にして確認したくなるのも、人情というものだった。

「いやいや、マジ凄い。

 みんな、一撃で倒している」

 水島が、興奮した様子で車内の乗員に報告している。

「ワイバーンの時は、相手が空の高い場所に居たんで実感が湧かなかったんだけど。

 この距離で見てみると、改めて凄いなあ、って。

 なにこれ人間技?

 うちらの主砲よりも、よっぽどダメージ出てるじゃない!

 いや、相手にしてみれば酷いのか」

「どうでもいいけど、わたしらの仕事もさぼらないでよね」

 車内から、そんな声が聞こえる。

「中央出現場所から、また大きいのが出て来ているよ」

「了解」

 水島はそう返答してから車内に入り、砲塔のハッチを閉める。

「お仕事お仕事。

 敵さんを狙えるところまで移動して」

「もうしている。

 ここで砲塔、右方向に六十度」

「はいはい、と。

 射角調整、よし。

 撃つ」

 腹の底に響く重たい音が車内に響き、戦車の主砲が発射される。

「角度を変えて、もう一発。

 はい、今回も無事に倒せました」

 分厚い装甲に守られ、遠距離から一方的に攻撃出来る戦車戦は、下手に慌てたりしなければ少ないリスクで確実に大物狩りが可能なポイント稼ぎだといえた。

 少なくとも、水島たちマダム・キャタピラーの現在のレベルとスキル構成だと、戦車抜きにあれほどの大物を狩ることはほぼ不可能だといえる。

 昨日はゴーレムが多かったが、今日はケルベロスが多く出現するみたいだ。

 ゴーレムもケルベロスも、多少の個体差はあるものの、全長は八メートルから十メートル前後。

 ただ、ケルベロスの方は四つ足なので、高さとしてはゴーレムよりも低くなり、なおかつ、移動速度はゴーレムよりもよほど素速い。

 ただ、戦車で出ると、ほぼ間違いなくこっちに向かって突進してくるので、距離を取った上で冷静に狙撃すれば、かなり容易に倒せた。

 現代兵器様々、だな。

 と、水島は考える。

 それと、戦車が普通に使える、現在の環境に感謝。

 目下のところ、このセッデス勢のチュートリアルは、達成率を伸ばし、すでに八割以上を達成しているという。

 さらに、トライデントの連中まで出て来たとなると、このチュートリアルが終わるのも、もはや時間の問題だろう。

 こちらのチュートリアルが終わったあと、どういうステージが出現するのか、この時点ではまったく想像もつかなかったが。

 出来れば、この戦車がそのまま使用可能なステージアであって欲しいな、と、水島は思う。

 その方が、自分の体で地道にダンジョンを攻略したりするよりは、よほど楽なのだ。


 同じ頃、宇田佐吉は銃を構えた人形たちに囲まれて、早足で城塞内部を移動していた。

 片っ端から各詰め所に立ち寄り、防備が薄いと判断したら、適切な数の武装人形を置いて防御力を補増した。

 人形たちは索敵行為があまり得意ではないので、そちらについては詰め所に居る人たち任せになる。

 来たばかりの救護班はトライデントの仕込みというから、最低限の自衛行動くらいは自分たちで出来るだろう。

 と、宇田はそう踏んでいた。

 実際、宇田が掴んだ情報では、今日もこの城塞に来る前に、向こうのダンジョンでレベリングをおこなっていた、というし。

 宇田は、出自を同じくする他のプレイヤーたちと同様に、トライデントを評価していた。

 というか、あの連中は、評価を低くするのも無理なほどに、実績を積みあげている。

 単純な戦闘能力はいうまでもなく、その他の判断能力と実行能力でも、おそらくは、百五十名の中ではダントツになるだろう。

 三人各自、それぞれ得手不得手はあるだろうが、三人まとまると、とてもバランスが取れたユニットとして機能している、のだった。

 同時、

「あれは、真似出来ないな」

 と、宇田は思う。

 そもそも宇田は、百五十名のプレイヤーの中でも、自分が突出した才覚を持ち合わせているわけではないと、そう自覚していた。

 身体能力でも知力や頭脳でも、さらにいえば気合いや努力といったメンタル面まで含めても、自分はせいぜい「中の下」クラスだ。

 というのが、宇田自身による自己評価になる。

 事実、向こうの、自分たちのチュートリアル時、宇田は、これといった突出した働きをすることもなく、最後まで右往左往しているだけだった。

 もっともこれは、宇田以外のほとんどのプレイヤーが、そんな調子だったのだが。

 多少、宇田と他のプレイヤーとの間に差異があったとすれば、それは、銃器その他の現代兵器に対する基礎的な知識を、趣味でこちらに転移してくる前から、持ち合わせていたこと、くらいだろう。

 そうしたミリオタは別に宇田だけではなかったし、事実、そうしたミリオタたちとパーティを組んで連んでいた時期もあるのだが、そのパーティも今では解散していて、かつての構成員たちは散り散りに、別のパーティに所属している。

 パーティを解散した原因を一言でいうと、見解の相違。

 誰が悪いというわけでもなく、内部でどうしても調整不可能な見識を、各員が持っていた結果だった。

 そのパーティに所属する前後から、宇田は他のプレイヤーから乞われれば、そこにいって銃器などの選定と助言などを、なんの見返りもなく、おこなっていた。

 プレイヤー同士の利害に衝突する要素はなく、むしろ助け合ってこの局面を打開するべきだと、宇田が思っていたからだ。

 われながら人がいいとも思うのだが、こればかりは性分だから仕方がない。

 ミリオタのパーティが解散して以来、もともと社交的な性格ではない宇田自身は、今さら身を寄せるパーティを探す気にもなれず、しばらくソロで活動可能な環境を整えることに専念した。

 ハードシェルの頑強な装甲服と、銃で武装した取り巻きの人形たち、という形は、ソロを前提として安全にダンジョン攻略をするための方法として、宇田が選択した形になる。

 そして、数日前。

 生徒会から連絡が来て、ここ、セッデス勢への現代兵器レクチャー役をしてみないか、と、打診された。

 宇田以外にもその手の知識に明るいプレイヤーは何人か居たはずだが、生徒会がいうには、

「ある程度の知識を持ち、なおかつ、すぐに現地に移動可能なプレイヤーは、宇田しか居ない」

 とのことだった。

 これが事実だったのか、それとも生徒会によるある種のリップサービスだったのか、宇田は確認していない。

 どちらでもいいや。

 と、そう、思っていたからだ。

 それに、向こうで遅々としたソロ攻略をしているよりは、こちらに来て別種のプレイヤーに協力している方が、いくらかは建設的だろう。

 とも、思った。

 セッデス勢の人々は、なんというか、体育会系で、宇田の性格的には本来、あまりそりが合わない人々だったはずだが、こちらが教えることは熱心に聞いてくれるし、予想外にいい関係を築けた、はずだ。

 首領のシュミセ・セッデスが驚くほど短期間のうちに、宇田は、セッデス勢に各種現代兵器の運用方法を、かなり正確に伝授することに成功した。

 これは、教える側である宇田の功績というより、教えられる側のセッデス勢が、ほぼ例外なく、知識を吸収することに熱心だった。

 その結果、だろう。

 と、宇田は思っている。

 その威力や効果を最初に示すと、それ以降、彼らセッデス勢は従順に宇田の言葉に耳を傾けていた。

 だが、それも。

 と、宇田は考える。

 トライデントが、来たからなあ。

 この状況も、あと何日続くことか。

 あの連中、優秀なのは確かなのだが。

 一度動き出すと、周囲の状況を急いで進展させる性質も、持っている。

 このチュートーリアルも、もうすぐ終わってしまうだろうな。

 宇田はそんな、かなり確かな予感を持っていた。

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