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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接触篇

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彼方の場合

「こっちに救援が来たんで、詰め所の警備は任せて、わたしはあちこち歩き回って、モンスターを間引いていくね」

「了解」

 彼方は遥と通信で連絡を取りながら大盾を構え、そのまま、全速力で前に走った。

 足運びのスキルと彼方自身の身体能力との相乗効果であっという間に加速。

 とんでもない速度のまま、彼方は大盾を突き当たりの壁面までぶち当てる。

 その途中、大盾の前に密集していたモンスター群が相当数居たはずなのだが、彼方は気にしなかった。

 大盾を構える前の一瞬、ざっと確認したところ、身長一メートル強から二メートル前後の、体格も種族も異なる二本足歩行タイプがほとんどだった。

 二本足歩行であるとはいえ、角が生えていたり豚のように先が平たくなった鼻が前に突き出していたり、頭部が他の動物めいた形状をしていたりと、普通の人間とは微妙に細部が異なる、いわゆるデミヒューマンタイプ。

 彼方の経験からいっても、こうした形状のモンスターは知能とスキルを持っていることが多く、早めに駆除しておかないと状況が悪くなる一方なので、迅速に対処する必要があった。

「この近くには、入り込んでいないようだね」

 数十体のモンスター群をまとめて始末してから、察知スキルで周辺の状況を確認し、彼方はそう呟く。

「しかし、救援って。

 セッデス勢の人たちも、今頃は忙しいだろうに」

 どこにそんな余剰戦力があったのだろう?

 と、疑問に思いながら、彼方は元居た詰め所へと戻っていく。

 彼方としては、引率してきた親近参入者たちだけが居る詰め所から、あまり遠く離れたくはない。

 今のところ、負傷者は来ていないが、あの詰め所に居るのは戦闘自体に不慣れな、年端もいかない子どもが二人だけ。

 他の護衛が来ない限り、彼方が長く留守に出来るわけもなかった。

 この城塞内部の通路は、彼方が見た範囲内では幅が一メートル前後。

 実は、彼方が持つ大盾の幅もほぼそれくらいだったので、取り回しもかなりぎりぎりだったりする。

 城塞自体が、少し豪華な塹壕といった趣があるので、装飾などは一切ない。

 せいぜい、ところどころに天井に小さな空気穴が空いていて、そこから陽光が細く差し込んでいる。

 分厚い壁によって外界から隔てられ、容易に外敵の侵入を許さない構造になっていた、はずであったが。

「それも、知恵とスキルを持った相手には通用しないか」

 彼方は、小さく呟く。

 おそらく、これまでセッデス勢が対処してきたモンスターは、あまり知能が高くなく、スキルも使用しないタイプがほとんどだったのだろう。

 土魔法を使う相手ならば、どんなに分厚い壁を用意したとしても、あまり意味はなかった。

 それよりも、彼方としては、モンスター群が今日になって、いきなり方針を変更してきた、という事実の方が、気になる。

 よりにもよって、彼方たちが本格的にセッデス勢の支援を開始した日にこうした動きが起こったのは、果たして偶然なのだろうか。


 彼方が一度元居た詰め所に戻ってから、さらに二十分近くが経過した。

 その間、負傷者が運び込まれることも、モンスターがこの付近に侵入してくることもなかった。

 この城塞全体の状況は、どうなっているのかなあ。

 と、彼方は考える。

 ときおり入る通信によれば。

 遥は、城塞内部を飛び回って、モンスター群を見つけ次第、殲滅し続けているようだ。

 索敵範囲が広く、移動速度が速い遥なら、造作もない働きになる。

 恭介も同じように、城塞内部を移動しながらモンスター群に対処している。

 こちらは、シュミセ・セッデスによるナビに従って動いているらしい。

 この城塞の規模と、それに、実際に侵入したモンスター軍の総数がわからないので、

「あの二人に任せておけば大丈夫」

 などと、安心は出来なかった。

 彼方たちは、あくまで支援活動に来た身であり、この城塞全体の戦況を把握可能な立場ではない。

 他の新規参入者たちの安否も気になるし、歯痒いことこの上ない。

 彼方がそんな風に考えている時。

「ややや」

 奇妙な訪問者が、詰め所にやって来た。

「遥殿の弟殿。

 お待たせいたしました」

 ハードシェルタイプの装甲服に身を包んだ、プレイヤーだった。

「ええと、宇田さん、でしたっけ」

 ヘルメットに包まれていたので顔は判別出来なかったが、声と妙な口調で、彼方は相手の正体を判断する。

「左様左様。

 これにあるのは、宇田佐吉にござります」

 装甲服に身を包んだ宇田は、銃を抱えた人形たちを多数、従えている。

「ひょっとして、ねーちゃんのところにもいってたりする?」

「少し前に、一度」

 装甲服は、頭部を縦に振った。

「多少多めに、武装した人形を置いて来ました」

 遥がいっていた救援とは、つまりはこの男のことのようだ。

「それ、セッデスの上層部は承知しているの?」

「勝手に動いているので許諾を得たわけではありませんが、こちらの動きは把握しているはずです」

 装甲服の宇田は、平然とそんなことをいう。

「数日前からこの城塞内部の主要な箇所には、それがし自身が監視カメラが設置していますからな。

 咎めるような通信も来ない以上、こちらの動きは黙認されているものと解釈しております」

 無断で、勝手に動いている形になる。

 この男も、妙なところで機転が利き、厚顔だよな。

 と、彼方は呆れつつ、感心する。

 多分、自分の立場を弁えつつ、ぎりぎり許容される範囲を探るようにして、独断で動いている。

「それよりも、弟殿」

 宇田がいった。

「この場は多めに人形たちを置いておきますので、弟殿も侵入者の排除に出てはいかがかですな?」

「宇田さん。

 全体の戦況とか、把握しています?」

 即座に、彼方は確認する。

「激戦地とかあるようなら、その場所への出方を教えてほしいんだけど」

「それならば」

 宇田は、倉庫から一枚の紙とペンを取り出し、紙に印刷された経路図に何カ所かペンで印をつけた。

「この数カ所が、現在の激戦地になります。

 それで、現在地がここになりますな」

「わかった」

 彼方はその紙をひったくるようにして受け取った。

「ぼくはそっちに向かうよ」

「ああ、それから」

「まだなにか?」

「来る途中、拾ってきた負傷者の方々が若干名、いらっしゃるのですが」

「真っ先にその人たちを中に案内してよ!」


「察知スキルを取ったのは、ああ、君か。

 察知スキルを使い続けたまま、この人たちの治療を続けて」

 彼方はこの場に残る新規参入者たちに指示を出した。

「ポイントに余裕があるようなら、もう一人も今、察知スキルを取っておいた方がいい。

 人形たちは、攻撃力はあるけどスキルが使えない。

 見えない敵が近づいてきても、気づかない恐れがある。

 自分と負傷した人たちを守るのは、自分たちしかいないと思って」

「察知スキルを使いながら、同時に、治療する」

 いわれた側は、涙目になって彼方の指示を復唱した。

「それ、おれたちに出来ますか?」

「出来るし、やるんだ」

 彼方は断言する。

「幸い、重症者はそんなにいないようだけど。

 スキルは、ポイントを消費して取れば、誰にでも使えるはずだ。

 あとは、使い手次第。

 自分たちの身を守るためにも、頑張って」

「傷さえ治して貰えば、おれたちも動ける」

 人形に運び込まれてきた負傷者が、口を挟んできた。

「そっちがしっかりと仕事をしてくれりゃあ、時間が経つほど状況はよくなるんだ。

 あまり心配しすぎないで、さっさと傷を治してくれ」

「それじゃあ、ぼくはしばらく出て来るから」

 彼方はそういい残して、その詰め所から出ていく。

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