表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接触篇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

263/401

救護活動の実際

 その日のチュートリアルがはじまってから四十分ほどが経過した。

 その間、特になにもトラブルは起きていない。

 それ以前に、救護班が必要な事態は、ほぼ起きていないらしい。

 ただ、銃声や爆音は、くぐもった状態でこの詰め所にまで、ひっきりなしに届いている。

 恭介たちが待機している詰め所は城塞内部にあった。

 それでもこれだけ音が響いているということは、外に居たらかなりの大音響に晒されるのだろう。

「銃撃や砲撃の密度が、ちょっと濃すぎませんかね」

 手持ち無沙汰だったので、恭介は、かたわらに居た坂又に話しかけた。

「ほとんどは、人形が操作していると聞いている」

 坂又は、そう答える。

「ここのモンスターがここに来たら、引き金を引け。

 銃弾や砲弾がなくなったら、供給しろ。

 みたいな単純な命令を与えた人形を各所に配置して、防御システムを構築し直したのだそうだ」

「なるほど」

 恭介は頷く。

「セッデス勢は三百名しかいないって、いってましたもんね」

 その三百名というのは、おそらく、実働人数なのだろうが。

 恭介たちの百五十名の倍数とはいえ、この規模の城塞を完全に守るのには、少なすぎる人数ではある。

「近代兵器の扱いを教えに来た宇田とかいうプレイヤーの考案だというな」

 坂又は、そう続ける。

「その他にも人形は、ここではかなり多用されている。

 少ない人数をカバーするのに、便利なんだろう」

「使い方次第ではありますけどね」

 恭介はそういって、話題を変える。

「ここには窓もないんで、戦況とか確認出来ませんね」

「塹壕の中、みたいなもんだからなあ、ここ」

 坂又は、そう答える。

「救護班という名目で来ているわけだから、こちらから迂闊に動くわけにもいかないし」

「おれたちが暇なのは、いいことですよ」

 恭介は、そういった。

「この近くでは、誰も負傷していないってことですから」


「ああ、恭介。

 今、いいかな?」

 さらに十分ほど経過してから、彼方から連絡が入った。

「なにかあった?」

「ちょっとね」

 恭介が返信すると、彼方が早口に説明してくれる。

「複数箇所で、モンスターが壁を破って城壁内部まで侵入しているみたい。

 セッデスの人たちに聞いても、これまでにない行動パターンだって」

「壁を破って、か」

 恭介は、少し呆れた。

「この城塞の壁って、土と石を積みあげて作ってて。

 薄い場所でも、半メートル以上はあったぞ」

「そんなもん、スキルとかでどうにもなるよ」

 彼方は簡潔に答えた。

「とにかく、ぼくの方は、その侵入してきたモンスターに対処していくよ。

 ちょうど、近くに団体さんが入り込んでるみたいだから」

「了解した」

 恭介はそう返信して、通信を切る。

「坂又さん、城塞内部に侵入してきたモンスターが居るそうです。

 複数箇所で、ということですから、この近くでも同じようなことが起こるかも知れません。

 この近くで同様の事例が起きたら、大事になる前におれも出ようと思いいます」

「ちょうど今、セッデスの中央司令部から、その報せが届いた」

 坂又が城塞の見取り図を確認しながら、いった。

「ここから、比較的近い。

 悪いが、様子を見て、出来れば対処して貰えるか?

 そこの通路を出て右に曲がり、そのまままっすぐ進めば、そのモンスター群と遭遇するはずだ」

「それでは、いってきます」

 恭介は立ちあがり、そのまま駆け出す。

 救護班が全員留守にするわけにはいかないので、残りの者たちは、この場で待機することになる。


 通路を出て右に回り、しばらく駆けていくと、確かに察知スキルに反応があった。

 ZAPガンで一掃しようか、と一瞬考えたが、その場に人が居るかも知れないので、もう少し近づいて様子を見ることにする。

 モンスターたちは、すぐに自分の目でも確認出来るようになった。

 恭介は大太刀を抜いて、無言のままそのモンスター群に突っ込んでいく。

 大太刀を振り回して、続々と外から侵入してくるモンスター軍を斬り伏せた。

 モンスターたち鈍重で恭介の動きについて来られず、反撃をする間もなく倒れていく。

 しばらく暴れて城塞内のモンスターが居なくなったのを確認してから、壁に空いた大穴に向けてZAPガンを乱射し、ついで、魔力弓を連射した。

 外に居たモンスターの反応が消失したのを確認して、土魔法を使って壁面に空いた大穴を埋める。

 大雑把な仕事でしかなかったが、応急処置としてはこれで十分だろう。

 察知スキルを使うまでもなく、少し離れた場所に数名の人間が倒れているのを見つけた。

 その周囲に、破壊された人形の残骸が転がっている。

 人形が負傷者を搬送中に、モンスター群と遭遇。

 人形たちが身を挺して守っている最中に、おれが到着したってところか。

 恭介は、そう推測する。

「大丈夫ですか?」

 恭介は地面に転がっている人たちに近づき、しゃがんで声をかける。

「意識はあります?」

「ああ」

 セッデス勢の一人が、か細い声で応じた。

「ひどい目にあった。

 踏んだり蹴ったりってやつだ」

「お察しします」

 恭介は、短く答える。

「負傷者は全員で、四人。

 それで間違いないですね?」

「そのはずだ」

「それでは、これから救護班が居る場所までお送りします」

「どうやって?

 搬送用の人形は破壊されているんだぞ」

「問題ありません。

 おれも、予備の人形くらい、何体か持ち歩いていますから」

 恭介はそういって、自分の倉庫から何体かの人形と担架を取り出す。


「侵入して来たモンスターは、かなり多いらしい」

 元の詰め所に帰ると、坂又がそう伝えてくる。

「半分くらいは、撃退して侵入して来た穴を埋めたようだが」

 残り半分は、現在も対処中ってわけか。

 とりあえず、詰め所に居た全員で負傷者の治療行為をはじめた。

 心配ではあるが、今は目の前の仕事を片付けるしかない。

「あまり混乱しないうちに、対処してくれるといいけど」

 負傷者の処置を続けながら、恭介が呟いた。

「キョウスケ、今いいか?」

 そんな中、シュミセ・セッデスからいきなり通信が入った。

「今の状況は理解しているな?

 悪いが、キョウスケにも遊撃手として、中に入りこんだモンスターに対処して貰いたい」

「それは別にいいんですけど」

 恭介は答えた。

「そのモンスターとは、どこへいけば遭遇出来るのですか?」

 この城塞は、かなり広い。

 不案内な恭介が気まぐれに歩き回っても、都合よくモンスターと遭遇するのは難しいはずだ。

「こちらで激戦区に案内する」

 シュミセ・セッデスはいった。

「城塞内部各所にカメラを設置してあるんで、モンスターの居場所はこちらで把握している。

 今のところ、お前らが連れてきた者たちは、かなり景気よくそうしたモンスターを撃破してくれている。

 お前の働きにも期待している」

 というわけで、恭介はシュミセ・セッデスのナビに従う形で城塞内部を移動し続け、侵入モンスターに対処することになった。


「次の角を左に曲がれ。

 しかし、速いなお前は」

「ハルねーは、もっと速いですよ」

 左に曲がってすぐ、二百メートル先に、モンスター群の姿が視認出来た。

「周囲に人は?」

「居ないはずだ」

 それを確認した直後、恭介はZAPガンを連射し、モンスターをまとめて始末する。

 通路を塞ぐ形で密集していたので、何十体というモンスター群は効率よく消えてくれた。

「なんだその飛び道具は。

 うちの者がそれを使っても、それほどの威力は出なかったぞ」

「どうやら、おれの体質のせいらしいです」

 恭介は軽く応じて、改めて察知スキルで周囲を確認する。

 モンスターの反応も、人の反応も、なかった。

「侵入して来た穴は……あれか」

 不自然に明るくなっている場所まで移動し、そこに空いていた大穴を土魔法で埋める。

「次はどこへ移動すれば?」

 恭介は確認する。

 恭介が出て来た詰め所には、坂又が居る。

 多少留守にしても、差し支えはないだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ