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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接触篇

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準備の日

「なにはともあれ、ご飯とお風呂ねー」

 中央広場に全員が揃うと、遥は大きな声で新参の人たちに告げる。

「こちらで行動する際には、最低、一日に一度はお風呂に入って貰います。

 お風呂の使い方はあとで説明するので、まずはご飯を食べてくだーい」

「あのぉ」

 少女の一人が、おずおずと手をあげて質問する。

「仕事は、いいんですか?」

「今日は初日だし、準備とかで終わりかなあ」

 彼方が説明した。

「城塞の方は、こちらのプレイヤーから応援を出しているから、そんなに急ぐ必要はないし。

 それよりも、長期的に君たちが動けるよう、こちらの流儀をおぼえて貰う方が先。

 ご飯とお風呂が済んだらうちの拠点、ええと、ソラノ村ってところに移動して、そこで装備類のあわせとか今後の説明をさせて貰う。

 こっちの市街地だと、これだけの人数が寝泊まりする場所、急に準備することは出来ないんだよね」

「今日のところは、ゆっくり休むのも仕事のうちだと思ってください」

 恭介がいった。

「あとで、一人一人の適性を聞いて適切な仕事を割り振る予定です。

 今日一日は、明日以降の仕事のため、準備をする日と思っておいていい」

 実際、こちらではぼちぼち日が暮れかけている。

 あと少しすると、食堂も混雑する時間だと、生徒会側から告げられていた。

 政庁一階にある食堂の片隅に新参の人たちを案内して、そこに全員を座らせる。

 すでに、出来たての料理が配膳してあった。

 和食ではなく、パンとサラダ、それに惣菜などがワンプレートにのったセットで、フォークとスプーン、それにジュースが添えられている。

 若年者が多い、と伝えていたので、幼い子たちにも受け入れられやすいメニューにしてくれたのだろう。

「量が少なく感じるかも知れませんが」

 食堂の係員が、全員に向かってそういった。

「おかわり、追加の料理はいつでも申しつけてください。

 いくらでもありますので」

「本当に食べていいの?

 いくらでも?」

 年少組が、そんな風に騒いでいる。

「いくらでも食べていいぞ」

 恭介が、そう保証した。

「その代わり、明日以降、バッチリ働いてくれ。

 それじゃあ、皆さん、お食べてください」

 仲間うちでわいわいと会話しながら、まずは賑やかな食卓となった。

 それぞれ、内心で不安はあるのだろうが、それを誤魔化すためにことさら賑やかに振る舞っているのかも知れない。

「この揚げ物、酒に合いそうだな」

 狩人のスジャンが、フォークに刺した唐揚げを掲げて、そんなことをいった。

「酒盛りをやるなとはいわないけど、拠点に移動してからにしてください」

 彼方がすかさず、注意した。

 どうも、異世界の大人たちは、酒飲みが多いようだ。


 どうにか食事を済ませると、今度は男女に分かれて銭湯へと向かう。

 男性が恭介と彼方、女性が遥とアトォと、男女ともに監督役が二人しか居ない状態だったが、まあ大丈夫だろう。

 新参者たちのほとんどは、満腹してまったりとした状態になっている。

 これからそんなに暴れるような状態ではない、と、思いたい。

 フラナと同じく、レナセッデスの村でも湯浴みの習慣はない、ということだった。

 大量のお湯を沸かすほど潤沢な燃料がない、というだけで、体は普段から清潔に保っているそうだが。

 ともあれ、男女に分かれてどうにか風呂の使い方を説明しつつ、入浴を済ませる。

 慣れていないせいか長く湯に浸かれず、すぐに洗い場にあがる者が続出した以外、これといってトラブルは起きなかった。

 みんな従順、というか、新しい体験ばかりをして、なかなかそれに順応出来ていない状態なのだろう。

 入浴が終わったあと、マーケットでまとめ買いした下着と学校指定のジャージ一式を、各人のサイズを確認しながら配って着て貰う。

 これは、当座の普段着にして貰うつもりだった。

 向こうで着ていた衣服は、どれも古びていて、こちらでは少しみすぼらしく見える。

 布にしろ毛皮にしろ、手工業しかない世界ではかなり高くつくしな。

 と、恭介は想像する。

 おそらく、一度作った衣服は親類や知り合い間で譲り合って、限界になるまで着回すのだろう。

 恭介たち男性組が外に出ても、女性組はまだ出ていなかった。

 ぐずり出す男子年少組に、マーケットで調達したアイスを配って黙らせていると、魔法少女隊の赤瀬から連絡が入る。

「師匠たち、またなんか面白いことはじめたんですって?」

 といわれたので、恭介はしかじかの事情で、今は銭湯前に居ると説明した。

「それじゃあ、今からそちらにお迎えにあがります」

 そう返信してから五分も経たないうちに、赤瀬が銭湯前にやって来た。

 大型の、バスに乗って。

「ええと」

 バスから降りてきた赤瀬に、恭介が声をかける。

「それ、買ったの?」

「ええ、買っちゃいました」

 赤瀬は、なんでもないことのように、その言葉を首肯する。

「前々から、機会があれば運転したいと思っていたし」

「それじゃあ、みんな、これに乗って」

 彼方が、男性組にそう声をかけた。

 年少組が歓声をあげながら我先にバスに乗り込み、年配の男性たちはそれが一段落してから、ゆっくりと乗り込んでいく。

「なかなか賑やかなことになりそうですね」

 その様子を見ながら、赤瀬がいった。

「あ、そこの君。

 その、運転席には座れないからね。

 別に席に座って」

「実際、年少組については、小学校の引率みたいなもんだしなあ」

 恭介が、そう応じる。

「多分、口減らしもかねて、こっちによこした感じだと思うけど」

「そういう意味も、まったくないとはいわないけど」

 彼方が、そうつけ加えた。

「それ以外にも、これから先を見据えて、可能性を広げるために寄越した、ってこともあるかなあ、と。

 あの村、まだ少ないようだけど、一部、マーケットで調達した機械も使いはじめていたようだし」

 彼方は、村人たちの一部が、ワイヤーソー式の草刈り機を持っていた、という。

 農作業にそうした機械類が入り込んでくると、それまで必要とされていた人力が大きく削減されるはずであり。

 となると、それまで必要とされていた、年少者の労力も、今後は余ることとなる。

「多分、だけど」

 彼方は、そう続けた。

「それまで人力でやっていた作業が機械化されていくと、今度は人力の方が余っていくはずで。

 そういう動きが進み続ける以上、他の生き方を模索させようとする親も、多いんじゃないかな」

 この時点では、そうした機械化はおずおずと、試験的に進んでいるだけだが。

 一度弾みがつくと、今度はもの凄い勢いで省力化が進み出すはずだ。

 その前に、従来とは違った生き方を年少者に勧める親世代の人は、多いだろう。

 と、そういうことらしい。

「あっちもこっちも、いろいろと大変だな」

 恭介は、簡単にそう感想を呟くのに、留めた。

 案外、何年か経ったら、ここ最近の出来事は、「激動の時代」として認識され、記録されるのかも知れない。

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