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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接触篇

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異世界へ

 アイレスはトライデントの四人を先導するようにして階下へとくだっていく。

 階下にある食堂は、時間的に混みはじめていた。

 銭湯を歩くアイレスは明確に成人であり、なおかつ日本人にも見えない外見だったので、それなりに人目を集めている。

 さらにいうと、そのあとに続く四人もここではそれなりに知られた顔だった。

 この組み合わせが揃って最上階にある生徒会執務室から移動して来た、という事実は、この場に居合わせたプレイヤーたちにどんな印象を与え、憶測を生じさせるものか。

 恭介は、そんな風に思ったが、

「まあ、好きに思わせておけばいいか」

 と、割り切ることにする。

 トライデントの動向は、ここのプレイヤー間ではそれなりに注意を引いているようであり、そのことは今さら変えようもない。

 アイレスは周囲のプレイヤーにはまったく意に介さず、そのまま政庁の外に出る。

 トライデントの四人も、それに続く。

 外に出たアイレスは、中央広場の片隅まで歩き、そこで足を止めた。

 そこには、キャンプ用の折りたたみ椅子に座りなにかの本を広げていた、アトォと同じくらいの年頃の少女が居る。

 髪色や顔つきを見れば明らかにこちら側のプレイヤーではなく、向こう側から来た異世界人であると判断出来た。

「今日はもうお帰りですか、アイレスさん」

 その少女は、アイレスの気配を感じたのか顔をあげ、そう声をかけた。

「ああ。

 今度は、うしろの四人も同行する」

 アイレスは、その少女に答えた。

「またよろしく頼むよ、フェリン」

「うしろの四人?」

 アイレスに芽鱗と呼ばれた少女は視線をアイレスの背後に走らせ、そこで大きな声をあげる。

「って、アトォじゃない!

 なに、こっちに居着いたって聞いていたけど、今はこの人たちにお世話になってるの?

 もうダッパイ師とは会えた?」

 そのフェリンと呼ばれた少女はその場で立ちあがり、一気に距離を詰めてアトォの手を取って、その場で小刻みにぴょんぴょん跳んだ。

 ああ、なるほど。

 恭介は納得する。

 世界を渡る魔法は、ダッパイ師の一門しか伝えていない、らしい。

 だとすれば、この転移魔方陣を管理しているのも、そのダッパイ師一門の誰かになるのだろう。

 その誰かがアトォと顔見知りであっても、別段不思議でもない。

 フェリンとアトォは、早口に自分たちの言語でやり取りをしはじめる。

 その内容は、恭介たちに翻訳されていなかった。

 態度や口調から、近況を含めた情報交換をしているのだろう、とは、思うのだが。


「転移魔方陣を使用した経験はおありですか?」

 フェリンとアトォが旧交を温めている間に、アイレスが恭介たちに確認した。

「ダンジョンの中にあるものを使用したことはあります」

 代表して、恭介が答える。

「その魔方陣とこちらの転移魔方陣が同じ種類のものなのかどうかまでは、おれたちには判断出来ません」

「なるほど」

 アイレスは、その返答に頷いた。

「慎重な口ぶりですな。

 魔方陣を利用するだけのわれわれにしてみれば、その二つを区別することは出来ません。

 実際に転移すると、周囲の景色が唐突に切り替わって、それで終わりです。

 魔法を運用する術者の皆様は、かなり大変なようですが」

「大変といえば、かなり大変なんだけどね」

 アトォとの歓談が一段落したのか、フェリンが振り向いてそういった。

「その処理も、もうだいぶ慣れてきたし」

「ここの仕事は、結構きついの?」

 恭介が、フェリンに話しかけた。

「きついというより、術式に癖があるんで理解するのが難しいし、魔法制御も繊細だしで、実際にやれる人は限られている感じかなあ」

 フェリンは、反射的にそう答えている。

「ええと、アトォがお世話になっているところの隊長さん、で、いいのかな?」

「まあ、そんなもん」

 恭介は頷いてから、再度質問した。

「今後、君みたいな魔方陣の門番を、増やすことは出来ると思う?」

「ええと、多少は時間が要るかと思うけど、出来ないこともない。

 と、思います」

 フェリンはそういってから、その質問の意味に気づいた。

「って、この手の魔方陣、もっと増えるんですか?」

「場合によってはね」

 恭介は、そう答えた。

「詳しいことは、必要になってから改めて説明するよ。

 まずは、この場に居る人たちを向こうの世界に送ってくれないかな?」


 アイレスがいった通り、転移するのは一瞬、だった。

 周囲の風景がブレた、と思ったら、まったく別の場所に立っている。

「塀?

 壁に囲まれる」

 周囲を見渡してから、恭介はそう呟く。

「空は、青いな」

 石垣に囲まれた、野外、だった。

 この世界でも、晴れた空は青いのか。

 などと、恭介は思う。

「ここは?」

 彼方が、アイレスに訊ねる。

「セッデスの城塞、と、われわれは呼んでいます」

 アイレスが答えた。

「皆様にわかりやすくいうと、チュートリアルに備えるため、われらセッデス勢が設けた城塞、ということになりますか。

 詳しくは、そこの石段を登ってみると、わかりやすいかと」

 その言葉に従って四人はアイレスに示された石段を登る。

 石段は、かなり長かった。

 登り切ると、地上からかなり高くなっていることがわかる。

 五メートル以上は、あるだろうか。

「ああ、なるほど」

 石段を登り切ったところで、周囲を見渡した恭介は呟いた。

「モンスターの発生する場所をぐるりと囲むように、石とか土を盛っているのか」

 通常、この手の防壁は外敵の攻撃を防ぐためのものになるが、この城塞の場合、その外敵がやってくるのは防壁の内側から、ということになる。

「わざと何本かの道を空けて、モンスターの進行する場所を固定して」

 よく見ると、城塞のあちこちに銃座や砲台が固定されているのが確認出来た。

 そうした近代兵器は、ごく最近になってから設置されたものだろう。

「この規模の城塞を造営するとなると、かなりの時間と手間がかかったんだろうな」

 周囲を確認してから、恭介がそんな感慨を漏らす。

「特に初期では、かなりの苦労を強いられたようですね」

 アイレスが、律儀にそう答えた。

「途中から、土魔法などを使える者が増えてきたため、相応に効率よく作業が進むようになった。

 と、そのように記録されておりますが」

 セッデス勢には、これまで長い時間をかけてチュートリアルに対応してきた。

 そういう、歴史があるのだろう。

「こちらへいらしてください」

 アイレスが、トライデントの四人にそういって促す。

「他の皆様がお待ちです」


「おお、来たか」

 恭介たちの顔を見るなり、シュミセ・セッデスが立ちあがって挨拶して来た。

「ついでのようになってしまって、悪かったな。

 お主らは、こちらから招待するつもりだったのだが」

「おれたちはおれたちの都合で動きますので」

 恭介は、そう答えておく。

「わざわざ招待される筋合いでもありませんよ」

 こちらのチュートリアルに協力するのはよいとしても、だからといってセッデス勢とのみあまり親密になってもいいことはない。

 恭介としては、各勢力に対して適切な距離を保っておきたいところだった。

「先ほど連絡して申しあげた通り、今回は、まず見学のみとのことで」

 アイレスが、シュミセ・セッデスにそう伝える。

「わかっている」

 シュミセ・セッデスは鷹揚に頷いた。

「これから参戦するにしても、こちらの状況を把握していなければ十全な活動も出来ぬだろうしな。

 ゆっくり見物していってくれ」

「達成率はすでに八割以上に達していると聞きましたが」

 彼方が訊ねた。

「知性がある、つまり、人間と同じようにスキルや魔法を使ってくるタイプのモンスターは、すでに出て来ていますか?」

「ああ、そういうのも出て来ているな」

 シュミセ・セッデスは頷いた。

「今までのところ、数はそんなに多くはないんだが。

 なかなかに手を焼かせてくれるよ。

 そちらと接触するようになって、こちらの戦士がスキルの使い方を学んでいなかったら、一方的にやられていたことだろう」

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