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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接触篇

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制度設計

「出島、なんて可愛気があるものではないな」

 小名木川会長は、そうコメントした。

「こちらにはダンジョンくらいしかないが、そちらには、合宿所と酔狂連などがある。

 市街地とソラノ村、人の流れがどちらの方により多く流れるのか、想像するまでもない。

 お前らは、自分の拠点を世界間交流の目抜き通りにするつもりなんだ」

「一応、指摘しておきますが」

 その背後に立っていた築地副会長が指摘した。

「彼らの提案は、別に生徒会の目的に反するものではありません。

 提案、という形を取っていますが、彼らにしてみれば、われわれの許可を必要とするわけではないのです。

 こちらになにも伝えない状態で、強行してもよかった。

 それを、わざわざこうして事前に通達してくれたというだけで、十分に配慮はなされていると、そう見なすべきです」

「いわれなくても、そんなことはわかっている」

 小名木川会長は、少し強い口調で応じる。

「ただ、それを実行されると。

 その、ダンジョン攻略後、こちらの市街地は閑古鳥が鳴くのではないか?

 ダンジョンがなくなれば、こちらのプレイヤーも市街地に留まる理由がなくなる。

 そちらの拠点に身を寄せるか、あるいははっきりと向こうの世界にいきっぱなしになる者も出て来るだろう」

「仮定の問題になりますから、あくまで想像の上のことでしかお答えできませんが」

 彼方はそう答える。ソラノ

「計画な終了条件が提示されていないことから、ダンジョンは、誰かが制覇したあともしばらくは残存すると、こちらでは考えています。

 仮に、ダンジョンすべてが姿を消すことがあったとしても、運営側としてはぼくたちプレイヤーにモチベーションを与え続ける必要があるはずですから、ダンジョンに代わり、より効率よくポイントを稼げる仕組みが出現するものと、そう予測しています。

 それが具体的にどういう形を取るのか、そこまでは断言出来ませんが、ほとんどのプレイヤーにとって、市街地はこれからもホームグランドであり続けるでしょう。

 そして、その市街地の秩序を維持しながら、異世界の人々との交流を抑制しない方策として、ほとんどの異世界人が拠点内に留まる形の制度設計を、われわれは提案しています」

「もう少し詳細に検討してみないことには、明確な返答は出来ないが」

 小名木川会長はいった。

「まあ、前向きに検討してはみる。

 いずれにせよ、この場でほいほい返答可能な、気軽な案件ではないわな」

「こちらの内情に干渉出来る立場ではありませんが」

 アイレスがいった。

「仮に、カナタ様の提案が採用されるとすれば、向こうからこちらに渡って来る上限の人数が、大幅に緩和される。

 と、そのように解釈してもよろしいのでしょうか?」

「そうなるよなあ」

 小名木川会長は、ため息混じりに返答した。

「ただ、当面の間、市街地に出て来る人数は、最大三十名までにしておいてくれ。

 ほとんどのプレイヤーは、異世界人との交流に慣れていないんだ。

 しばらく様子をみて、大きな混乱がないようなら、その人数も考え直すつもりではあるから」

「アイレス様のように、どこかの勢力を正式に代表する使者の方は、その人数に含めなくてもいい気もしますね」

 筑地副会長が、そういった。

「これまでのところ、公務で必要な場所以外に、移動する様子が見られませんし」

「わたしなどは、実戦から遠ざかった老骨に過ぎませんからな」

 アイレスは、苦笑いを浮かべながらそういった。

「もういくらか若ければ、ダンジョンに挑もうとしていたのかも知れませんが。

 実際、うちの若い者たちの間では、こちらのダンジョンのことをかなり意識している節があります。

 向こうのチュートリアル現象が一段落したら、血の気の若い者たちは一斉にこちらを目指してくるでしょう」

「フラナの人たちは、そういうの、ないの?」

 遥が、アトォに訊ねた。

「いずれは、そういう動きが出て来るかも知れませんね」

 アトォは、考えながら、答える。

「ただ、今すぐにどうこう、ってことは、ないと思います。

 わたしたちはかなり広い地域に散らばって暮らしていますし、それに、システムのおかげで情報伝達が早くなったのはいいですが、今の時点では、こちらの世界のこともどこまで真剣に受け止められていることやら。

 フラナの中にも若くて血の気の多い人はそれなりに居るので、こちらのダンジョンの実態などが知られていけば、こちらに来たがる人も増えてくる、とは思いますけど」

「セッデス勢とは違って、フラナの人たちは別に単一の行政機関によって統治されているわけではないってのも大きいかな」

 彼方が、そう指摘をする。

「こちらへの渡航を希望するとすれば、それは個人か少人数で構成された集団単位で、ということになる。

 だから、フラナの人たちに関しては、こちらが向こう側に出向いて受付窓口を設ける必要があると思う。

 その方が、こちらにとってもかえって対応しやすいし」

「そうした手続き関係も、すべてやってくれるってわけか」

 小名木川会長は、彼方の言葉に頷いた。

「こちらとしては、手間が省けて助かるんだが。

 だが、本当に大丈夫なのか?

 その、人手的に」

「基本的には、向こうで募集をかけて現地採用する形になると思います」

 彼方は、そう答える。

「人間の数は、向こうのが断然多いわけですから。

 それに、異世界間を渡る術式は、事実上、アトォが属する門派にしか伝わっていないようですし。

 基幹となる部分が異世界人頼りなわけですから、この上、事務関係まで向こうの人を頼っても別に害はないでしょう」

 異世界渡航の実務にしても、事務関係にしても、時間を拘束して働いて貰う以上、相場の賃金は普通に支払うつもりだった。

「若いのに似合わず、よく考えていらっしゃる」

 そんな彼方の様子を見て、アイレスが、そう評した。

「セイトカイの方々もしっかりしていらっしゃるとは思いましたが。

 こちらのプレイヤーは、人材に恵まれていらっしゃいますな」

 このままいくと、このカナタが治めるソラノ村とかいう場所が、両世界の中心になっていくのではないか。

 アイレスは、そんな風に考えていた。

 それからアイレスは、マーケットで購入した腕時計の文字盤を見て、時刻を確認した。

「さて、そろそろいい刻限になりましたな」

 アイレスは、周囲を見渡して、そういう。

「セイトカイの方々にもカナタ様の提案は無事に届いたようですし、このまますぐに、この場でなにかが決まるというわけでもないでしょう。

 細かい検討などはセイトカイの皆様にお任せして、ソラノ村の方々は、一度、われわの世界に渡ってみてはいかがでしょうか?

 あと小一時間もすると、本日のチュートリアルがはじまります。

 実際の参戦はまたの機会に譲るとしても、その前に一度くらいは、あちらのチュートリアルを見学してみてはいかがでしょうか?」

 そのようにいわれて、恭介たちトライデントの面々は、顔を見合わせる。

「どうする?」

「見学だけなら、問題ないんじゃないかな?」

「一度、向こうを実際に見てみたいとは思っていたし」

 向こうの世界出身のアトォを除けば、他の三人が向こうの世界に出向いたことは、一度もなかった。

「百聞は一見にしかず、というしな」

 三人を代表して、恭介が決断する。

「今後どうするにしても、一度、向こうの世界を実際に見ておく必要はあるわけだし」

 それに、恭介としては、先行して手伝いにいっているというこちらのプレイヤーが、どう扱われ、どう動いているのか。

 そうした現場も、実際に確認しておきたかった。

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