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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接触篇

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外交のはじまり

 翌日、恭介たちはアポを取り、午前中のうちに生徒会執務室へと向かった。

 アポを取った時点で向こうの世界へいく意志があると伝えているが、詳細な条件や日時などはこれから相談する、という形にした。

 恭介たち四人の間では、かなり詳細な内容まで詰めていたのだが、こちらの要求がそのまま通るかどうかは、実際に交渉をしてみないとわからない。

 ただ、小名木川会長は、

「向こう的には、頼りになる戦力をかなり強く欲しがっているから、たいていの要求は通ると思う」

 と、意見をいってくれた。

 政庁一階の食堂は、まだ早い時間なので、朝食に立ち寄った人がかなり残っていた。

 早起きしてもダンジョン前で順番待ちをする公算が高いので、プレイヤーの起床時間はまちまちになる。

 早起きをするモチベーションが薄いので、恭介たちが拠点での朝の日課を一通り済ませてからここに到着する時刻でも、まだ朝食を摂っているプレイヤーが多かった。

 この時点で、この食堂の他に自発的に外食産業を起こそうとするプレイヤーは現れていないので、温かい食事が摂れる場所はここくらいしかない。

 そうしたプレイヤーたちを横目にして、恭介たちは階段で最上階まであがり、受付カウンターで来意を告げると、そのまま執務室に通していた。

 昨日の人とは別人だったな。

 その受付担当の顔を確認し、恭介はそんな風に思う。

 おそらく、フリーランサーズ所属の誰かしらが、持ち回りで担当しているのだろう。

 中に入ると、小橋書記が応接セットに案内してくれる。

 そこにはすでに、お馴染みの小名木川会長と、それに、初対面のおじさんが待っていた。

 そのおじさんは、四十代から五十代くらいで、顔つきや服装などから見ても、明らかに日本人ではない。

 つまりは、向こうの、おそらくはセッデス勢の一員なのだろう。

「やあ、これはこれは。

 皆様のことは、団長からいろいろおうかがいしております」

 そのおじさんは、恭介たちに気づくとそう挨拶してきた。

「お初にお目にかかりますな。

 セッデスの事務方筆頭、アイレスと申します。

 以後、お見知りおきを」

「トライデントの馬酔木恭介です」

 恭介も、挨拶を返した。

「アイレス様は相応の決定権をお持ちであると、判断してもよろしいのでしょうか?」

「皆様のことは、団長から直々に便宜を図るようにと伝えられております」

 アイレスは、そう答えた。

「こちらとしましては、是非あちらに招きたい意志がございますので、たいていのことは通ると思ってください」

 恭介は仲間たちに目配せをしてから、頷き返す。

「了解しました」

 恭介は続けた。

「しかし、こちらとしては金品などの報酬よりも、別のものをより欲している状況です。

 いや、金品なども欲しくないわけではないですが、それよりも別の、無形の権利をより強く欲しています」

「詳細をおうかがいしてもよろしいでしょうか?」

 アイレスは、そう問う返してくる。

「こちらが一番欲しいのは、まずは、あちらでの行動の自由。

 助力は、可能な限りするつもりですが、チュートリアルの最中であっても、必ずそちらの指揮下に入るわけではない。

 そういう保証を明文化して、書類にまとめていただきたい」

 チュートリアル戦は、ダンジョン攻略のようなパーティ単位での戦闘ではなく、もっと大人数が参加する、それだけ複雑な戦闘行為になる。

 それを統率する側からしたら、どんな戦力も自分たちの都合で動かしたくもなるだろう。

 しかし、恭介たち、駒として動く側の都合としては、それでいいように使い潰されても困るのだ。

 協力はするつもりだが、必ずそちらのいう通りに動くわけではない。

 そういう言質を最初にとっておきたかった。

「もっともな申し出でございますな」

 アイレスはそういって頷いた。

「その書類については、早々に手配いたしましょう。

 先行してあちらで活躍しているこちらの皆様も、それぞれ好きに動いておいでです。

 最初に、そうした確証を求められた方はあなた方がはじめてになりますが、いずれにせよ問題はありません」

 先行組は、かなり自由に動いているようだ。

 まあ、これは保険的な意味合いが強いからな。

 と、恭介は思う。

「次に、ですが」

 恭介は、続ける。

「この場合、交通権、というのでしょうか?

 こちらからそちらへ、おれたちが自由に世界を渡る権限を、認めていただきたい。

 おれたちだけではなく、物品や家畜、あるいは、場合によっては人間に至るまで。

 そうした行為が合法であると、認めていただきたい」

 どちらかというと、ここからが本題になる。

 昨夜、仲間うちで会議した結果、

「まずはこれを認めさせてしまえば、今後、動きやすくなるんじゃない?」

 ということになった。

「それは」

 アイレスは、そういってから、しばらく口を閉ざした。

「少し、わたしの権限では判断出来かねる案件になりますな。

 前向きに検討することはお約束しますので、この場での返答はご容赦願いたい」

 上等だ。

 と、恭介は判断する。

 恭介たちにしても、別に、こうした権限がすぐに必要となるわけでもない。

「ちょっと、いいか」

 その場に居た小名木川会長が、どこか白けた顔つきで、そういった。

「あのなあ。

 そういう大きな交渉、こちらになんの断りもなくはじめないでくれるか?

 一応、こちらのプレイヤー代表は、わたしら生徒会ってことになっているんだからさあ」

 その生徒会の頭越しにそうした交渉をすることを認めてしまうと、今後、生徒会が動きにくくなる。

 そういう、クレームだった。

「それなんですけどね」

 彼方が、ここではじめて口を開いた。

「別に、生徒会と反目しようって意志は、こちらにはないんですけど。

 でも、いい機会ですから、この場で拠点、ええと、つまりソラノ村と生徒会とは、別の主権であるという形にしておいた方が、今後、お互いに動きやすくなると思うんですけど」

「もう少し、詳しく説明してくれ」

 小名木川会長はいった。

 そのあと、

「書記。

 今のやり取り、しっかり記録しているな?」

 と、念をおす。

 そのあと、彼方は、ソラノ村としては、移民の募集や交易などの活動を、向こうの世界を対象として展開する構想を持っている。

 市街地内部で異世界人の人数制限をおこなう、という生徒会の決定に異を唱えるつもりはないが、今後、拠点内では多数の異世界人が居住する可能性も出て来る。

 だとすれば、いちいち政策のすり合わせをするよりも、生徒会とソラノ村とでは別の自治体であるという体裁にして、お互い、別個の方針で動いた方がいいのではないか?

 などと、順を追って説明した。

「お前らなあ」

 一通りの説明を聞いた小名木川会長は、複雑な表情になった。

「別の自治体といっても、そっちは酔狂連に訓練所も抱え込んでいるんだ。

 つまりは、セッデス勢が欲しいもの大半は、そっちにあるんだぞ。

 そんなことを認めてしまったら、こちらが不利になるじゃないか」

「いや、こちら、市街地には、拠点にはないダンジョンがありますから」

 彼方は、そういった。

「アイレスさん。

 ダンジョンで腕試しをしたいセッデスの方々は、多いんでしょ?」

「多い、というより、現役の戦士であれば、ほぼ全員がダンジョンに入ることを望んでおります」

 アイレスは、静かな声で認める。

「目下のところ、向こうのチュートリアルに注力しておりますが、そちらが落ち着いたら、セッデスの戦士たちはこぞってダンジョンへと動き出すことでしょう。

 しかし、別の自治体。

 それは、政体であると、解釈してもよろしいのでしょうか?」

「くれぐれも、誤解して欲しくはないのですが」

 彼方は、そう続けた。

「ソラノ村としては、別に生徒会とことを構え、無理に離反したいと考えているわけではありません。

 ただし、異世界人の人数制限とかを見ると、市街地とはまた別の方針で動く、一種の治外法権地帯として機能した方が、今後、みんなの利益になるのではないでしょうか?」

 しばらく、おのおのがその説明を噛みしめるように、数秒、沈黙が降りた。

「つまり、だ」

 小名木川会長は、そういった。

「お前らは、あの拠点、ソラノ村を、鎖国体制下の出島のような存在にしたいのだな?」

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