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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接触篇

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ダッパイ師の去就

 その後、ダッパイ師は魔法少女隊と酔狂連を訪問するというので、アトォを案内につけて家を送り出す。

 その方も予定先のうち、魔法少女隊の方はダンジョンに出ているのか、連絡がつかなかったので、おそらくは後日に訪問することになる。

 酔狂連の方は、実際に足を運べば誰かしらは居るはずだったから、今日はそちらを先に訪問し、魔法少女隊の方は後日改めて、訪問するといっていた。

 向こうの世界の人々が実際にこっちに出入りするようになると、それなりに仕事が出て来るようだったが、それまでしばらく手すきになるから、ダッパイ師も試しにダンジョンに入ってみるつもりらしい。

 酔狂連では、そのための、自分の装備を調達するつもりのようだ。

 アトォでさえあれだけ戦えるのだから、その師匠にあたるダッパイ師なら、ダンジョンに入っても別に問題にはならないだろう。

 というのが、トライデント三人の共通した認識になる。

 ダンジョンが出現した当初、レベルが低いプレイヤーもそれなりに居たはずだが、これまで大きな問題にはなっていない。

 無理をせず、なんらかの障害があると判断したら、その場でダンジョンから脱出すればいいだけなのだ。

 中に出現するモンスターがどれだけ強くても、そういう措置がある以上、ダンジョンの難易度はさして高くはない、ともいえる。

 心配する必要がない以上、下手な干渉はせず、あとは本人の意思に任せておけばいい。

 というのが、トライデント側のスタンスになる。


「今夜はひさびさに、焼き魚にでもするかなあ」

「いいね、魚料理。

 こっちだと、滅多に作らないし」

「七輪もあるしね」

 三人の意識と関心は、すでに夕食の支度の方に移っている。

「マーケットにサンマが出ていたから、それにするかなあ」

「マーケットの生鮮食品は、ほとんど冷凍だしね」

「こっちにも、魚は居るのかなあ?」

「水場そのものを見かけないから、なんとも。

 貯水池の方は、藻が茂ってトンボや蚊みたいな虫も来てたようだけど」

「え?

 虫が増えるのは、ちょっといやなんだけど」

「もう寒くなってきているし、これ以上は増えないでしょ。

 また暖かくなるまでは」

「こっちでも虫って、気温が低いと動けないの?」

「構造上、そのはず。

 体温の調節をする器官を持っていないから、普通に死ぬと思う」

「というか、自分で体温を作っているの、哺乳類くらいなもんだよ」

「藻や虫が出て来るんなら、貯水池に魚を放てばそれなりに殖えそうではあるけどね」

「生きた魚をどこから調達してくるのか、と。

 マーケットでは、生体は扱っていないみたいだしなあ。

 倉庫に生きている生物が入らないのと、同じような理屈だと思うけど」

「……ダンジョンから、とか?」

「近くを通りかかった人、襲わないかな、それ」

「それか、アトォの世界から持ってくるか、だねえ。

 あの世界に淡水魚が居れば、だけど」

 そんなやり取りをしながら、三人はマーケットから調達した冷凍サンマを自然解凍したり、手慣れた様子で炊飯器をセットしたり味噌汁を作る準備を進める。

「メッセージが残っていたんですけど」

 そうこうしているうちに、市街地帰りらしい魔法少女隊の四人がインターホンを押して声をかけてくる。

「さっきまでダッパイ師が来ててね。

 アトォちゃんの師匠の」

 遥が対応する。

「今は、アトォちゃんといっしょに酔狂連にいっているけど。

 そっちにもあって話をしたいとかいってたから、連絡したんだけど。

 なんか、魔法関係のことを話し合いたい見たい」

「ああ、なるほどぉ」

 インターフォン越しに赤瀬が応じる。

「今日はダンジョンにいってて留守にしていたけど、明日あたり、こっちに来るかも知れませんね」

「実際に接触してきたら、よろしくしてあげてね」

「はーい」

 それから、ダンジョン攻略の様子などをざっと確認して、通話を切った。

 戸外で、魔法少女隊の四人が去っていく気配がする。

「あの子たち、ちゃんとご飯食べているのかなあ?」

 それから、遥かがそんなことをいい出す。

「それなりにうまくやっているでしょ」

 彼方がいった。

「毎食自炊、は難しいかも知れないけど、一日一食は自炊にするよう、いっておいたし」

「あまり手間のかからないレシピも教えているから、大丈夫だとは思うよ」

 恭介も、そういう。

「合宿所の食堂にも寄ってないようだし、自分たちでどうにか回しているんだよ、きっと」

「インスタントやレトルトばかりだと、健康に悪いからねえ」

「いや、最近ではその手の加工食品なんかも、結構栄養バランスに気をつけるようになってきているんだけど」

 そんな会話をしているうちに、冷凍サンマの自然解凍がだいたい終わったので、恭介と遥はほぼ解凍されたサンマと七輪を持って家の外に出る。

 七輪に豆炭を入れて火をおこしていると、アトォが帰ってきた。

「どうも」

 アトォが、二人に挨拶をする。

「師匠は、今夜はこのまま合宿所に泊まるようです」

「アトォちゃん、お魚大丈夫?」

「あまり食べた憶えもないんですが、特に無理というわけでもありません」

 遥が確認すると、アトォは即答する。

「向こうでも、水際に住んでいる人たちは普通に食べていたそうですから。

 わたし自身は、乾物みたいなの、数えるほどしか食べたことがありません」

 いいながら、アトォは七輪上で焼かれているサンマをじっくりと観察している。

「意外に、煙が出るものなのですね」

「脂が乗っているからね」

 遥はいった。

「お魚に苦手意識がないようなら、よかった。

 これ、普通においしいと思うよ」

「そうなんですか」

 アトォは素直に頷いて、続ける。

「味は、実際に食べて見ないと判断出来ませんが、匂いは食欲をそそりますね。

 それで、師匠のことなんですが、ことによると、何日かこちらに逗留することになるかも知れません。

 スイキョウレンとの会談も盛り上がってましたし、マホウショウジョタイとの面会もこれからですし」

 ダッパイ師にとって、この拠点は、興味をそそられる対象が多いらしい。

 魔法絡みの専門家、と考えると、そうなるのかも知れない。

 市街地よりはこちらの方が、魔法について真剣に考察、実験を繰り返している人材が多いのは確かだった。

「別にいいんじゃないかな」

 恭介はそう応じた。

「他の人に迷惑をかけそうな人でもないし」

 当然のことながら、明確に、他者に対して害意を持つ人物は歓迎出来ない。

 しかし、少なくともダッパイ師は、そういう人物には見えなかった。

「どうでしょうかね」

 アトォは、少し難しい顔になる。

「それも、時と場合によると思いますけど」

「なんかあるの、あのお師匠さん」

 アトォの反応に疑問を抱いた遥が、訊ねる。

「ある、というか」

 アトォは、言葉を選びながらいった。

「興味のあることに集中すると、周囲が見えなくなる傾向があります。

 それと、酒癖が悪いことを除けば、比較的まともだと思いますが」

「お酒かあ」

 遥はいった。

「機会があったら、拠点内では控えて貰うようにいっておこう」

 現状、そのダッパイ師以外は全員未成年という環境なのである。

「あの人、結構飲むの?」

 恭介が、アトォに確認する。

「飲みますね、かなり」

 アトォはいった。

「煙管も手放しませんが、こちらでは、野外でのみ、喫しているようです」

 酒に煙草、かあ。

 行動がおっさんだなあ。

 と、恭介は思う。

 それも、あちらの基準でいえば、かなり年かさの。

 価値観が根本から異なる異世界での習慣を、元の世界の基準で推し量ることに、あまり意味はないのだろうけど。

 そういえばあの人は、実年齢はどれくらいになるのだろうか?

 おそらくは暦自体が元の世界とは違うだろうし、あちらの世界に年齢を数える習慣があるのかどうかもわからない。

 恭介の主観によると、ダッパイ師の年齢は三十歳前後に見えるのだが、そもそも恭介は年上異性の年齢を推定する機会がこれまでほとんどなかったので、どこまで正確なのか、まったく自信がない。

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