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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接触篇

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本物と模倣品

 さらにいえば。

 そうした模倣品を作るのが容易な何者かは、異世界転移などという迂遠な方法を選択するだろうか?

 恭介たち、この世界に放り込まれたプレイヤー全員が、生身の本人ではなく、全員コピー体である可能性すらある。

 世界間を突破して生体を移動させるのと、その生体と、まったく同じ物質で構成された複製体を作り上げるのとでは、どちらの方がより簡単なのだろうか?

 コスト、というか、エネルギー収支的に考えると、後者の方が安くあがるような気がする。

 アトォやダッパイ師の世界からこちらへ、プレイヤーの意志で世界を渡った例は、別だ。

 なにより、運営者ではなく、プレイヤー自身が決断し、行動した結果だからだ。

 自分たちは本物ではなく、本物に限りなく近い複製品である、としたら。

 そうだと仮定すると、ヘルプなどを通じて再三、「元の世界に帰還する方法」を問い合わせても、まるで回答がないのも頷けるのである。

「帰る必要がない」

 あるいは、

「帰還しても無駄である」

 と、そう仮定すれば、回答する手間すら惜しいはずだ。

 これも、少し前から恭介が自分の中だけに仕舞ってある、仮説だった。


「師匠は、すぐに気づいたんですか?」

 アトォが、ダッパイ師に訊ねている。

「市街地がまるごと、こことは別の世界に起源を持つ複製品だったことに」

「逆に、なんだってあんたはすぐに気づかなかったんだい?

 まったく、愚かな弟子だねえ」

「いやだって。

 あんな大きなものが丸ごと、複製されたものだとは思わないじゃないですか、普通」

「物質を構成する、あるいは、物資にまとわりつく魔力の質が、外のものと微妙に違っていただろ」

 ここで、ダッパイ師は再び恭介に顔を向けた。

「そういや、あんたらの世界に魔法はないんだってね?

 だとすりゃ、どうしてあんたはあの廃墟が偽物だと思いついたんだい?」

「ちぐはぐだと、思ったんですよ」

 恭介の口から、自然に回答が出てきた。

「この周辺には、河川がない。

 にもかかわらず、あの廃墟には、下水道に相当する施設の痕跡があったっていう。

 その下水は、どこに流し込んでいたんでしょうかね?」

 一番確実な根拠は、ここになる。

 辻褄が合わないのだ。

 恭介の世界では、大きな集落や都市が成立する条件として、ある程度以上の規模を持つ河川、つまり、水源があげられていた。

 魔法が前提として存在する世界ならば、その前提そのものは無視していいのかも知れない。

 だが、使用済みの水の廃棄場所は、水魔法の存在では説明がつかなかった。

 それに、酔狂連の八尾から聞いた、

「この世界の表層に、魔法とか魔力が存在するレイヤーがあって、だから、魔法の力はエネルギー保存の法則にあまり従っていないように見える」

 的な発言も、引っかかっていた。

 レイヤー。

 恭介ら、プレイヤーたちが単一の異世界だと認識しているここは、実は、複数の世界から摘出された要素が混合する、パッチワーク的な場所なのではないか?

 こちらは、「プレイヤー=複製品仮説」のように口にするも憚る要因がなかったので、恭介はそのまま順序よくダッパイ師に開陳した。

 恭介の説明を一通り聞いたあと。

「なるほどねえ」

 ダッパイ師は、深々と頷く。

「魔法や魔力の有無によらず、プレイヤーの中に理知的な判断力を持った者が居たのは幸いだったな。

 あんたなら、いい魔法使いにもなれるよ。

 なんだったら、今からでもわたしに弟子入りしてみるかい?」

「駄目でーす」

 それまで黙って成り行きを見守っていた遥が、隣に座っていた恭介の肩を自分の腕で引き寄せる。

「キョウちゃんは、こっち側なの。

 そっちには、渡しませーん」

「ま、しがらみってのは、あるだろうしねえ」

 そうした反応を見て、ダッパイ師は苦笑いを浮かべている。

 おそらく、本気で勧誘する気でも、なかったのだろう。


 それからは、他愛のない雑談になった。

「しかし、あんたらトライデントは、なんだかんだいって注目はされているわな」

 ダッパイ師は、そんなことをいう。

「どこへいっても、少し水を向けると、それまで聞いたことがない、初耳の情報が入ってくる」

「そりゃあ、ねえ」

 彼方が、苦笑いを浮かべた。

「いろいろと、目立ってはいますから。

 当然というか、仕方がないというか。

 こちらの動向は、注目されているでしょうね」

「さらにいうと、最近では前よりも市街地にいっているから」

 遥かが、そう続ける。

「まだ攻略していないダンジョンも残っているし、レベルアップの都合もあるし」

 そういう遥のレベルは、今現在、六十八まであがっていた。

 レベルをリセットしてからまだ数日しか経っていないのだが、安全重視であまり深い階層までいっていないので、最近ではレベルが上がる速度は停滞気味だった。

「その割に、あまり話しかけられることはないけど」

 恭介がいった。

「いや、ハルねーやアトォちゃんは、割と話しかけられてるか」

 思い返してみると、この二人ほどではないにせよ、彼方もそれなりに声をかけられている気がする。

 ひょっとして、おれ、敬遠されている?

 などと、恭介は思う。

 いや、決闘のログとか見れば、怖がられても当然なのではあるが。

「気にすることはないよ」

 恭介の顔色を読んだ彼方が、そうフォローする。

「恭介の場合は、さ。

 怖がられているというより、畏怖されているのが多いと思う。

 勇者に匹敵するトッププレイヤーで、なおかつ、生徒会の相談役もやっているわけで。

 なんというか、他のプレイヤーから見ると、あまり身近な存在に思えないっていうか」

「なんでもやれ過ぎる、っていうのはあるかなあ」

 遥も、彼方の意見に賛同する。

「市街地のプレイヤーさんたち、最近、この冬をどう越えようって心配をしているレベルなわけで。

 この時点で住環境の心配をしている人たちと、こうして快適な生活をしているわたしらとでは、目線の位置が違っているのも当然、っていうか」

 寒さは、日に日に増している。

 本格的な冬がこれから来るのは、間違いのないことのようだ。

 これまで、住環境を軽視して、プレハブ住まいを続けていたプレイヤーたちは、かなり慌てているようだ。

 そして、そうしたプレイヤーたちは、決して少なくはなかった。

 割合、短期的な判断でしか動かないプレイヤーは、多かったようだ。

 真っ先に家を作りはじめた恭介たちとは、確かに話が合いそうにもない。

「家といえば」

 ダッパイ師がいった。

「セイトカイは、わたしらの世界から来る者向けに、多人数が寝起きできるような大きな建物を作る算段のようだね。

 市街地の外縁部に、わたしらフラナとセッデス、二つの建物を。

 オナキカワが先日、スイキョウレンの連中に発注していたようだよ」

 ダッパイ師は、立場上、生徒会との接触が多い。

 その手の情報も、自然に耳に入ってくるのだろう。

「施行を酔狂連に任せるのか」

 恭介はいった。

「適任といえば、適任かな」

 酔狂連は、この拠点内にある、自分たちの敷地に、すでに大小、多くの建物を建てた実績がある。

 素材の開発から工法などのノウハウを一番蓄積しているのは、あの連中だろう。

 それに、あそこのマネージャーは、人形遣いととしての才能があるらしい。

 建築だけではなく、工場内で稼働している人形の制御も、だいたいあの人が担当しているそうだ。

 酔狂連に任せれば、案外、かなり短期間でその寮も完成するのではないか?

「具体的な場所とかは、もう決まっているんですか?」

「それは、これからのようだな」

 ダッパイ師はいった。

「両勢力の代表者が、これから前後してやってくる予定だ。

 その代表者たちとの交渉する事項の一つとして、そうした寮の用地選定も、含まれているらしい」

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― 新着の感想 ―
プレイヤーが実はコピーかも、って ダンジョンマスターが劣化複製って話から自分の中では仮説と言うか可能性の一つとして妄想してましたが、本編で出てきて若干嬉しくなりました。 実際にプレイヤー達がコピーで…
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