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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接触篇

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遊技場の推測

「些末なことは省いて、結論だけを口にしてみな」

 ダッパイ師は恭介にそういった。

「お前さんなら、すでに到達していてもおかしくはない結論だろう」

「おれたちが居るこの場所は、おそらく、適当な、人間が居住可能な世界に、無理矢理設えられた空間だと思います」

 しぶしぶ、といった感じで、恭介が口を開く。

「おそらく、森の方がこの世界本来の世界で、その上に、あの市街地関連の部分を被せたのではないか、と。

 神鳥やうぃは、この世界土着の存在だろうと思います」

「お前らが市街地と呼ぶあの廃墟は、なんであそこに持ってこられた?」

「憶測になりますが」

 恭介は答えた。

「おれたちプレイヤーの居住性を、保証したかったのではないでしょうか?

 少し落ち着けば、マーケット経由で様々な物品を購入して自分たちでどうにかするでしょうけど、それまでの過渡期に、一手が入った様子のない森の中に放り出されるのと、たとえ廃墟になっていても明らかに人工物がある場所とでは、放り出された側の心理的な安定性が違います。

 人工物があるとすれば、この世界の住人といずれは接触する可能性もある。

 そう考える者も、居たでしょうし」

 実際、当初は、恭介自身も、そのように考えていた。

 いずれは、この世界の住人と接触するのだろうと。

 しかし、いまだにその兆候は現れていない。

 むしろ、この世界に人間に類する知的生命体は、この時点では存在しない。

 そんな確信が、次第に強まりつつある。

「居た、ということは」

 ダッパイ師は、問いを重ねる。

「今は、そう考えてはいない。

 と、いうことか?」

「あくまで、おれは、ですが」

 恭介は答えた。

「他の人の考えは、確認していないから、知りません」

「どうしてこの世界に、知性のある住人が居ないと考えるのか?

 根拠を提示してみな」

「この場を設定した何者かが、そうした邪魔をしてくる存在を許容するとは思えませんから」

 恭介は答えた。

「この遊戯盤を作った者の考えを、詳しく理解することは出来ません。

 しかし、この時点でもいくつかの傾向や方針は、見いだせます。

 まず第一に、その何者かはこの遊戯を継続することを望んでいます。

 次に、ゲームに参加するプレイヤーの心身が無闇に損なわれることを嫌っています。

 このゲームが最終的になにを目的にしているのか、そこまでは予測出来ませんが、この時点では、そのような傾向が明確に示されています」

 恭介はそこで、一度言葉を切った。

「ここからはおれ個人の推測になりますが、そんな運営が、外部から自分たちの都合でこのゲームに介入してくる、行動の予測があまり出来ない、外部の知的生命体という要素を、はじめから排除しないでいられるでしょうか?

 そうした外部勢力を許容すれば、プレイヤーの労力は何割か、その外部勢力に対処するために使用されることになります。

 この世界にまったく知的生命体が存在しない、とまでは断言しませんが、仮に存在していたとしても、とても遠い場所で、ここ土地の出来事を感知したり干渉したりすることが事実上不可能な場所、たとえば、別の大陸とかになるのではないでしょうか?」

 恭介自身は、このゲームを「一種の実験ではないか」と思いはじめている。

 だとすれば、その実験に「外部勢力」とかいう余計な要素を導入することは、実験を実行した側は極力避けるはずだ。

「わたしらは、どうなるんだい?」

 ダッパイ師は、いった。

「わたしらも、ここの人間にしてみれば、立派な外部勢力とやらに該当するんじゃないか?」

「おれたちにとっては、普通に外部勢力ですよ」

 恭介はあっさりと認めた。

「ただしそれは、あくまでおれたちの立場にしてみれば、ということで。

 でも、ゲームの運営者にとっては、どうでしょうね。

 別世界の人間でも、プレイヤーやプレイヤーでしかない。

 そう、認識しているかも、知れません」

「そのゲームの運営者とやらは」

 ダッパイ師はそういってにやりと笑った。

「わたしら、向こう側の人間に対して、さぞかしやきもきしていたことだろうね。

 運営者が考える進行に沿った行動をせず、まるで勝手に動いている。

 一度、別勢力を応援として送り込んだが、停滞した状況はさして改善していない。

 一方で、あんたたち、わずか数日で最初の難関を突破した連中が居る。

 その両者を繋げて様子を見てみよう。

 そう考えても、おかしくはない状況ではある」

「そこまで推測を逞しくするつもりはありませんが」

 恭介は、そう応じる。

「おそらく、そちらとこちら。

 仕込みをしているのは、同じ意図を持った存在で。

 だとすれば、二つの遊技盤、そのプレイヤーが行き来できるようにしたとしても、いい刺激になるだろう程度の感じ方をしているのかも知れません」

「その何者かは、別の遊技盤で同じ遊技を平行して進行させていた、と?」

「そう考えるのが、無難だと思います」

 恭介は答えた。

「まったく関係ない存在が、別個に同じようなゲームを設定して進行させていた。

 と、考えるよりは、はるかに現実味がある」

 恭介は、「最初の接触」を運営者の意図だと思っていなかった。

 あれはあくまで、向こうの、別世界の住人たちが自発的におこなった、出来事で。

 ただし、審判者とやらを捜していた別世界の住人の意図を知っていた上で、放置、あるいは、その出口をこちらにさりげなく誘導した、くらいのことはやっていそうだな。

 とは、思っている。

 ダッパイ師は「停滞」という表現を使っていたが、向こうの世界がゲーム運営者の意図通りに動いていなかったのは事実であり、この接触によりなんらかの変化が訪れることくらいは、期待しているのではないか。

「たとえ別世界であろうとも、同じ遊技をしている者同士の接触や影響は、外部勢力からの干渉とは認識していない、と?」

「あくまで、ゲームの運営者から見れば、ということですが」

 恭介は、ダッパイ師の問いに答える。

「やつらからみれば、誰がゲームを進めるかはあまり問題ではなくて、誰であるにしろ、ゲームを進めてくれれば文句はない。

 の、ではないかなあ、と」

 最後の方で歯切れが悪いいい方になるのは、それが根拠のない憶測でしかない、という自覚が、恭介にあるからだった。

「なるほど、いい感じだ」

 ダッパイ師はそういって大きく頷いた。

「それで、この遊技盤は、具体的になんだと思う?

 無人の森の中に、ぷつんとそれっぽい遺跡を置いた。

 その遺跡は、どこから持って来たんだい?」

「転移、というよりは、コピーでしょうね」

 恭介はいった。

「おれたち人間に近い、背格好をした生物が居住する、どこかの世界から。

 丸ごと転移させてくるよりは、コピー品を置いた方が、なにかと効率がいいはずです」

 すでに、恭介たちは言葉をしゃべれるダンジョンマスターたちから、

「自分たちは本物ではない。

 別の世界に存在したものの、模倣品である」

 との証言を得ている。

 生物や超自然の存在をコピー出来るのであれば、どこかの廃墟を模倣することも可能だろう。

 さらにいえば、あの決闘デュエルシステム、である。

 多くのプレイヤーは、あれは一種のヴァーチャルな空間である、と、認識している。

 ただ、これだけ大がかりな遊技盤を用意する存在が、そんなまどろっこしい真似をするだろうか?

 という疑問を、恭介は抱いていた。

 あの決闘の場も、まるごと一種のコピーであり、あそこに用があるプレイヤーのみ、その意識だけをその場に飛ばされていたのではないか。

 これも、恭介が漠然と抱いていた、「根拠のない推測」のひとつ、だった。

 だとすれば、恭介は、これまで何度となく、そうとは意識せずに、仲間や自分自身と血みどろの戦いを繰り広げていたことになる。

 滅多なことでは、口に出来ない推測だった。

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