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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接触篇

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師匠、来訪

「あと、マーケット、特にオークション機能な」

 恭介も、思案顔でそんなことをいい出す。

「こっちは、プレイヤーの行動範囲がそんなに広くないからあまり気にしてこなかったけど。

 アトォのところは、結構広い範囲に人が散らばっているってことだろ?

 だとしたら、オークション機能を使用すれば、余分な流通コストがかからなくなる。

 一見、合理的に見えるけど、裏を返してみると、それまで流通とか商品の移動させて利鞘を稼いでいた人は、それまでの生計の道が断たれてしまうことにもなりかねない。

 平たくいうと、少なくはない失業者が出ても、おかしくはない」

「ああ」

 アトォが、ため息をついた。

「それは、十分に考えられますね」

「いずれ、そうだね、長期的に見れば、ある時点からは落ち着くべきところに落ち着くはずなんだけど。

 でも、短期的に見ると、社会全体の構造が強引に変容するわけだから、混乱は起こるし避けられないと思うんだよね」

 彼方は、そうまとめた。

「これから数年は、その混乱期になると思う」

「確かに」

 アトォも、真面目な表情で頷く。

「それを否定する材料を、すぐには思いつけませんね」

「まだ数日、こっちに滞在した程度だけどさ」

 遥は、そう指摘をした。

「こっちでの生活を経験したアトォちゃんは、割と貴重な人材になるんじゃない?

 向こうの、フラナの人たちにとっては。

 その貴重な人材が、いつまでもこっちに居続けても、いいものかな?」

「それは」

 アトォはそういって、数秒考え込み、それから結論する。

「おっしゃりたいことは、理解出来ます。

 しかし、まだわずか数日しか経っていない、ともいえるわけで。

 いずれはフラナになにかを伝えるにしても、まだまだ見識が足りていないと、そう判断します。

 それに、放っておいてもすぐにあちらからこちらに、少なくはない人が渡ってくると思うので。

 わたしという人材の希少性も、すぐに目立たないものになるかと」

「その判断も、ありだね」

 彼方はそういって頷いた。

「目先のことよりも長期的な視点で見れば、こちらのプレイヤーと混ざって生活したアトォの経験は、いずれ役に立つ日が来ると思うよ」

「はい」

 アトォは、そう返事をして頷いた。

「これからもよろしくお願いします」

 これが、アトォがトライデントの一時的なゲストではなく、永続的なメンバーとなった瞬間になるのだが、本人も周囲の人間も、しばらくはそうと気づかなかった。


 それから数日は、トライデントの四人にとって、ルーチン作業を繰り返すだけの日々になる。

 朝に拠点内の用事を済ませてから市街地に赴き、そこで二時間から三時間ほどダンジョンに入って、拠点へと帰る。

 その間で、アトォも身を守る装備の必要性を痛感し、酔狂連で仕立てた装備一式を身につけることを厭わなくなっていた。

 とはいえ、ダンジョン外の市街地を通るときは、その装備の上に普段着を着用してはいたが。

 人目につく場所で体の線が出る衣服を着用することは、アトォの価値観だとかなり抵抗があるらしい。

 その数日間、市街地の方は、なにかと騒がしかったようだ。

 ようだ、というのは、トライデント側が深く関わり合いになることを避けて、そうした騒ぎが起こっているらしい場所から可能な限り距離を取るように努めていたから、だが。

 いずれにせよ、詳細は魔法少女隊とか酔狂連、あるいは生徒会経由で事後に知らされることになる。

 異世界の二勢力、アトォが属するフラナ勢とセッデス勢の使者が来て、生徒会と交渉をし、正式な使節団がこちらに長期滞在することになった。

 とはいえ、異世界の勢力とこちらとでは、人数差がありすぎる。

 あまり無制限に大勢の人間を受け入れても混乱が増すばかりなので、両勢力ともに、一度に来訪出来る人数を最大限三十名まで、と、制限を課した。

 アトォの師匠にあたるダッパイという巫女頭が、こうした使者の渡来を可能とし、生徒会との仲介を務めた、ようだ。

 アトォも属する巫女集団は、彼の地では世俗の権力とは距離を取っており、一種の中立勢力として扱われている、という。

 こうした交渉の仲介を務めるのも、珍しいことではないのだろう。

 そして、異世界の駐留団が市街地に来訪する段取りをつけたところで、ダッパイ師匠はわざわざ拠点までアトォを訊ねて来た。


 恭介が充電器への給油、給水塔への水補充、などの日課に勤しんでいる時、門番の人形から連絡が入った。

 スキルによって作られ、動く人形は、システムの恩恵を得られない。

 そうした連絡をするのにも、無線式の呼び出しブザーを設置して、なにか異変や人間の判断が必要となった時、人形に渡してあるボタンを押して貰う、という形になる。

 出入りが激しい朝夕の決まった時間以外、拠点の正門は跳ね橋をあげて、外来者が入れないようになっていた。

 恭介はタブレットを倉庫から取りだし、正門前の防犯カメラの映像を表示させる。

「ああ、なるほど」

 恭介は来訪者の姿を確認して、一人頷く。

「あの人か。

 市街地での交渉が一段落して、こっちに足を伸ばして来た感じか」

 恭介は畑の様子を見にいっている彼方、拠点外周で罠の点検に出ている遥とアトォに「ダッパイ師来訪」の連絡を入れてから、マウンテンバイクを取り出して正門へと向かう。

 距離的に、恭介が最初に正門に着くはずだが、他の面子も時間差をおいて、到着するはずだった。

 正門に到着した恭介は、人形に許可を出して跳ね橋をさげさせた。

「お待たせしてすいません」

 それから、門の外に出てアトォの師匠、ダッパイ師に挨拶をする。

「アトォの師匠の、ダッパイさんですね。

 以前、ちらりと見かけたとがあります」

 そもそも、ここには成人女性がこのダッパイ師以外、いない。

 見間違えるはずもなかった。

「ああ、大精霊様の威光を纏った小僧じゃないか」

 恭介の顔を見るなり、ダッパイ師はそういった。

「そういやあの娘、あんたんところに世話になっているってことだったね」

「別世界からのお客さんを、粗略に扱うわけにもいきませんので」

 恭介は、無難な返答をしておく。

「こちらの拠点の見学をお望みですか?

 それとも、アトォとの面会をお望みですか?」

「無論、両方だよ」

 ダッパイ師は、そういって頷く。

「まさか、邪魔だてする了見じゃなかろうね?」

「まさかまさか」

 恭介は、そう返した。

「どちらも、どうぞご自由に」

 そんなやり取りをしている時に、彼方が正門に到着する。

「彼がこの拠点、ソラノ村の村長になる、宙野彼方です」

 恭介と同じく、マウンテンバイクで駆けつけた彼方を、恭介はダッパイ師に紹介した。

「アトォも今は拠点の外に出ていますが、じきに、ここに来るはずです」

「大精霊様の加護を受けし者。

 まだ、あんたの名前を聞いていなかったね」

「おれは、馬酔木恭介といいます」

 そういえば、正式に名乗るのは、これがはじめてだった。

「特に特徴のない、普通のモブキャラなんで、名前までおぼえていただく必要はありません」

「なんだい、それは!」

 そう聞くと、ダッパイは破顔して、笑った。

「そのモブキャラ、とやらの意味はよくわからんが、あんたが普通であるもんか!

 こちらのプレイヤー百五十名の中でも、一、二を争うほどの重要人物だよ、あんたは!」



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