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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接触篇

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宝玉の使い方

「なんだかいろいろ、バタバタと一段落ついちゃったな」

 朝食の席で、恭介が心境を語る。

「異世界人との交渉はこれからだけど、対勇者戦とかは終わったし。

 これからまた、自分たちの生活を第一に考えて行動しなけりゃな」

「自分たちの生活第一、ってのは、一貫して変わっていないけどね」

 彼方は、そう指摘をする。

「でも、勇者戦で一区切りってのは、確かにあるかなあ。

 あれで、プレイヤー内での恭介ポジが固定されたことだろうし」

「おれのポジションって、なに?」

 恭介は反射的に訊き返している。

「最凶プレイヤー」

 彼方も、反射的に返答している。

「ひどいな、それは」

 恭介は軽く顔をしかめる。

「ただ、反論する材料がないことも、確かだ」

「つまり、キョウちゃんは他人の評判なんてさして気にしていないわけね」

 遥が、そうまとめる。

「あとの二人は、最速と、最防?

 それとも、最硬?」

「どうでもいいけど、かなりピーキーに仕上がった三人組ってことだよね」

 彼方が、それをさらにまとめる。

「で、例の宝玉、今後どう使う?」

 レベルリセットの宝玉。

 前に人数分入手していたアイテムだが、もともと、対勇者戦が終わったら使用すると決めていた。

「保険というか、安全性を考えると、三人一気に使わない方がいい。

 それは、確かだけど」

 恭介がいった。

「具体的に、誰が先に使う?」

「どうせ順番が違うだけだし、誰が先でもいい気がするけど」

 遥がいった。

「なんなら、わたしが一番先に使う?

 速度重視のわたしなら、なにか不測の事態があっても、対応出来ることが多いし」

「それが無難かなあ」

 彼方がいった。

「それか、遠距離重視の恭介、そのどちらかだね。

 ぼくは、一番最後でいいや」

「それじゃあ、ハルねーが最初ね」

 恭介が結論した。

「実際、誰が最初でもあまり変わらない気がするし。

 レベルが一になっても、今のダンジョンに一度でも潜れば、すぐにレベルアップするはずだし」

「あの」

 アトォが、質問をした。

「先ほどから、話の流れが見えないのですが。

 例の宝玉、とやらは、いったいなんのことですか?」

「レベルリセットの宝玉、ってアイテムがあってね」

 彼方が説明をする。

「ぼくたちはこれを三つ、すでに入手している。

 これは、使うとレベルを初期化して、一からやり直すためのアイテムなんだ」

「せっかくあげたレベルを、わざわざさげるのですか?」

 アトォは、首を傾げた。

「なぜ、そんな労多くして益の少ない行為を?」

「メリットは、使用時以降の成長も保証されているってこと」

 彼方は、丁寧に説明した。

「どうやら、レベルは、九十九以上にはあがらないらしいから。

 だったら、レベル一からやり直せばいい」

「レベルが元に戻ったら、これまでに成長した分もなくなるのでは?」

「取得した分のパラメーターは、約半分になるそうだけど、ゼロになるわけではない」

 これにも、彼方は説明する。

「最盛期の半分、それくらいの強さで、最初からやり直せるって考えると。

 長期的に考えると、かなり得だよね」

「最盛期の半分、その強さで最初から、ですか」

 アトォは、ようやく納得したようだった。

「でしたら、その宝玉の意味もありますね」

「ってことで、わたしら三人は、今日はこれから適当なダンジョンに入る予定だけど」

 遥がいった。

「アトォちゃんは、どうする?

 もう自由行動にして、一人で好きなところに出かけてもいい頃合いだと思うけど」

「出来れば、みなさんとご一緒したく」

 アトォは、神妙な顔で即答した。

「ダンジョンという場所にも興味はありますし、それに、暇な様子でそこいらを歩いていたら、師匠に捕まってあちこち連れ歩かれると思うのです」

 自分の師匠と同道するのを断る口実のため。

 というのが、恭介たちとダンジョンに入るための、一番の動機になっているようだ。

 ま、いいけどな。

 と、恭介は思う。

 前の決闘での様子を思い返してみると、アトォが足手まといになることはないだろう。

 と、そう判断出来た。


 朝食後、朝の日課を一通り済ませて、四人で市街地へと向かう。

「日々、寒さが増している」

 道すがら、恭介がそういった。

「これはやはり、冬に向かっているってことか。

 いや、もう冬なのか?」

「その辺は、何年分か、通年で気温の変化とか追っていかないと、なんともいえないけど」

 彼方はいった。

「寒さ対策は、必要になってくるだろうね。

 いまだにプレハブ暮らしとかしているプレイヤーもそれなりに居るようだし、いずれは生徒会が動かないといけなくなるんじゃないかな」

「このあたりが豪雪地帯とかだったら、下手すると凍死者が出るよね」

 遥がいった。

「こっちに来てから雨とか降ったところ見てないし、この辺の気候、どうなってるんだろう?

 アトォちゃんは、その格好で寒くないの?」

「寒くはありませんね」

 アトォは答えた。

「向こうは、もっと寒かった気がしますし」

 アトォは、繊維の荒い布で作ったチェニックのような服を着ていた。

 元の世界から着てきた衣服、そのままだ。

 遥の指導により、今ではその下に下着とかスパッツを着用しているようだが、恭介や彼方たち男子組は、そこまで実際に確認してはいない。

 以前、彼方がライトダウンジャケットを贈呈していたはずだが、今はそれを着ていなかった。

 本人がそれで大丈夫だというのなら、大丈夫なんだろうな。

 と、恭介は考える。

 子どもは体温が高いというし。

「その格好で、ダンジョンに入るの?」

 遥が、重ねて確認する。

「いけませんか?」

「いけないこともないけど」

 遥は、言葉を濁した。

「汚れるかも知れないかな、とか思って」

「衣服を予後するような戦い方は、しません」

 アトォは、きっぱりとした口調で答える。

「どちらかというと、遠距離からの攻撃が主になると思いますし」

 そういえば、アトォは弓矢の名手だった。

 いや、アトォだけではなく、どうやらフラナの関係者は、そうじて「その程度の」腕前ではあるらしいのだが。

 恭介たち百五十名のプレイヤーにはない、アドバンテージだといえた。

 アトォやフラナだけではなく、「プレイヤー自身が身につけている技術」というのは、案外、馬鹿に出来ないのかもな。

 などと、恭介は思う。

 恭介自身は、元の世界では運動全般が苦手で、ただし、体力がないわけではなく、つまりは反射神経とか身体操作能力が、他の人たちより少し劣っていた側になる。

 水泳や持久走などはそこそこの成績だったが、球技などはまるで駄目だった。

 でも、こちらの世界では、レベルアップやスキルの恩恵を受けて、どうにかなっている。

 遥や彼方などは、姉弟揃って運動神経がよく、たいていのスポーツは器用にこなす。

 そのおかげで、序盤から前線に出て戦う方法を選択出来た、という側面もあった。

 こうした体質はある程度先天的に決められているものなので、どうこういっても仕方がない。

 所与の性能について「そういうものだ」と割り切った上で、それを前提に戦い方を組みあげて、その結果として、今の恭介たちの姿がある。



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