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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接触篇

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228/401

出現

『辰のダンジョンが攻略されました』


 夕食時、そのアナウンスが脳裏に、不意打ちのようにもたらされた。

「え?」

「どこのパーティだ?」

 あそこのダンジョンマスターであるドラゴンは、トライデントでさえかなり苦戦した、というより、

「どうにか勝てたのが奇跡」

 ともいえる強敵だった。

 あのドラゴンを撃破する実力を持つパーティが、今、存在したのだろうか?

 それとも、恭介たちが知らないところで、急激な成長を遂げたパーティがある、とか?

 いずれにせよ。

「他に強いパーティが出て来るのは、歓迎だよな」

 恭介は、口に出してそんな風にいう。

 トライデントに掛かる負担が、それだけ分散されることになる。

「それはそうなんだけど」

 彼方がいった。

「具体的には、どのパーティだと思う?」

「坂又さんのところか、風紀委員か」

「Sソードマンは?」

「可能性は、低いかな」

 恭介は答えた。

「まったくないってわけでもないけど。

 あそこのパーティは、よくも悪くも物理特化だから。

 魔法関係の能力が、比較的薄いし」

 ピーキーで、ある意味では尖った性能を持つパーティといえた。

 相手の性質にもよるが、強いときはとことん強いし、そうでない時にはすぐに詰まる。

 そして、今回討伐されたあのドラゴンは、物理攻撃一辺倒でも、倒すのはかなり難しい。

「まあ、目立つのが好きなパーティなら、すぐに名乗りをあげてくるでしょ」

 遥が、そんな風に結論する。

 それで、その場の話題は、別のことに移った。


 翌日も、四人は昼過ぎに、市街地の中央広場に出向き、うぃに頼んで踊りまくって貰った。

 今日は魔法少女隊の四人も同行していて、うぃといっしょに踊って貰っている。

 しばらくすると昨日来た志熊のバンドがまた集まって来て、例によって演奏を開始する。

 レパートリーは案外広いらしく、昨日とは違う曲だった。

 曲調からおそらくはロック系なのだと思うのだが、そちらの素養がない恭介には、その曲が既存の曲なのか志熊たちのオリジナル曲なのか、判断がつかない。

 ただ、高校生バンドがそんなにいくつもオリジナル楽曲を作れるとも思えないから、多分、既存の曲なのだろう。

 いずれにしても、よどみがない、達者な演奏だとは思う。

 その演奏が合図になって、というわけでもないのだろうが、昨日よりも人の集まりはいいようだ。

 みんな、ここでの生活に退屈しているのだろうか?

 恭介は、そんな風に思う。

 そうかも知れない。

 ダンジョン攻略やレベルあげを、苦痛としか感じられない人も、それなりの割合で居るだろうし。

 ここでの日常に刺激が足りないのは、確かなことだった。


「それで、今後はどうするべきだと思う?」

「基本的に、今と同じでいいんじゃない」

 彼方の問いかけに、恭介が答えた。

 トライデントの三人とアトォは、例によって、中央広場の隅に広げた丸テーブルに座っている。

 今後の方針についての、軽い打ち合わせだった。

「異世界の人たちと、本格的に交渉がはじまったとしても、わたしらのやることはあまり変わらないっていうか」

 遥かは、そういう意見を口にする。

「そうだけど、生徒会からまた突発的なお願いをされる機会が出て来るような気がするんだよね」

 彼方が、そう返す。

「その可能性はあるけど、今の時点で心配してもなあ」

 恭介は、そうぼやいた。

「どういうことを期待されるの事前にかわからないと、有効な対策も出来ないと思う」

「生徒会が今後、用があるとすれば恭介だと思うけどね」

 彼方は指摘した。

「あの会長さんは、どうやら恭介の判断能力をかなり信頼しているようだし」

「生徒会の人たち、別に行政とか外交の専門家ってわけでもないしね」

 遥が指摘をした。

「素人なりに頑張っている方だとは思うけど、別の誰かを頼りにしたくなる気持ちもわかるわ」

「そこで、どうしておれになるのかなあ」

「いや、恭介、理路整然と、他の人には指摘出来ないことをこれまでにも指摘しているでしょ」

 彼方がいった。

「そういう実績がある以上、頼りにはされると思う。

 顧問というか相談役というか、現状でもそういう役回りになっているかと」

「理不尽だな」

 恭介が、率直な感想を述べた。

「まあ、異世界との交渉が本格的にはじまると、またいろいろと変わってくるんだろうな」

「そうだね」

 彼方は頷く。

「個人的には、農業とかの指導をして貰える人とか、雇えるといいな」

 人力で作物を育てるノウハウは、是非指導して貰いたかった。

 さらにいうと、この土地でも収穫可能な作物の種や株なども分けて貰いたい。

 ポイントという共通貨幣が存在するのであれば、そうした雇用関係を結んだり物品の売買したりも可能なはずだ。

 と、彼方は考えていた。

「そういう用向きでしたら、心当たりがありますが」

 アトォがいった。

「でもまあ、そうした詳細は、あちら側との交通が、安全に出来ることを確認してからのことになりますね」

「こんな感じで、本当にここに出るの?

 異世界の人たち」

 遥がアトォに訊ねる。

「多分」

 アトォは頷いた。

「目印には、なるはずです。

 その、かなり強い魔力が、集まっていますから」

 魔法がない世界から来た恭介たちは、そうした魔力関係のセンスが乏しいので、その言葉がどこまで本当なのかわからなかった。

 ただ、

「なにもせず、ぼうっとして待っているよりはマシ」

 的な感覚はあるので、これでいいとも思っていたが。

 中央広場は、昨日に引き続いて賑やかなことになっている。

 ざっと見渡したところ、四、五十人ほどが中央広場近辺に居るようだ。

 中央広場自体がそれなりの面積を持っているので、人口密度的にはそんなに密集しているようにも見えないのだが。

 全プレイヤーの三分の一前後が集まっていると考えると、それなりに凄いことのようにも思える。

 残りはダンジョン攻略に参加しているのか、それとも、自分の用事に従事しているのだろう。

 親や教師など、指導役を務める大人たちが居ないこの世界では、自分たちの行動は自分たちで決めるしかない。

 全プレイヤーが、自分の意志で自分の行動を決めている状態だった。

 無論、パーティ単位での方針など、細かいところで合意などはあるので、完全に個人の意志が優先されているわけでもないのだが。

 その状態で、これだけの割合で、プレイヤーが集まっている。

 というのは、それだけでもかなり異例なのではないか。

 などと、恭介は考える。


「ん?」

 ふと違和感をおぼえて、恭介は中央広場のある場所に目線を据えた。

 なにがどう、とは具体的にいえないのだが、あの場所が。

「おかしい」

 口に出して、そう呟く。

 気が、する。

「キョウスケ様、正解です」

 アトォがいった。

「あそこに、出て来ると思います。

 あの周辺から、人払いをしておいた方がよろしいかと」

「わかった」

 恭介は頷いた。

 立ち上がり、その場所近辺に居合わせた人たちに声をかけ、少し離れて貰う。

「すいません。

 ここからなにかが出て来るみたいなんで、ちょっと離れて貰えませんか?」

 恭介がそう声をかけると、

「トライデントの破壊だ!」

 とか喚いて、その近くに居たプレイヤーたちが逃散した。

 なに、この扱い。

 彼らの中でおれのイメージ、どうなってんの?

 恭介は、内心でそんな風に不満に思う。

「キョウスケ様!」

 恭介を追ってきたアトォが、そんな風にいう。

「来ます!」

 そんな声が響いた次の瞬間、中央広場の地面に「目に見えない円陣」が出現する。

 目に見えないが、確実にそこに「在る」ということはわかる。

 これは。

 恭介は推測する。

 魔力によって構成された円陣、になるのか。

 その不可視の円陣がひときわ存在感を強めた直後。

 そこに、人が立っていた。

 長身の、壮年の女性だった。

 煙管を咥えている。

「ん?」

 女性は、恭介に視線を留めたあと、

「なるほど」

 と、一人、頷いた。

「こんなのが居るんなら、うちのがここに留まるのも無理はないね」

「師匠!」

 アトォが、震えを含んだ声をあげる。

「なにが、師匠!

 だ」

 その人物は、アトォに近寄ると、躊躇なくその拳をアトォの頭上に振りおろす。

「あんまり面倒をかけるでないよ、この不出来な弟子が」

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