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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接触篇

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VS結城姉弟(六)

 痺れをきらしたのか、勇者様の剣が、見覚えのある燐光を纏いはじめた。

 ああ、勇者のジョブは、剣士のような特殊な剣技スキルも使えるのか。

 恭介は、そんな風に思う。

 なんでもありなジョブだな。

 恭介の想像通りなら、あの状態で攻撃をされれば、受けとも避けても相応のダメージを受けることになる。

 恭介も剣士のジョブを経験したことがあるから断言出来るのだが、あの手のスキルを使うとそれなりに消耗するので、無制限に使えるものでもないのだが。

 勇者様も、焦りが出て来ているのだろうな。

 これから、短期決戦で勝負を決めに来る、つもりのようだった。

 今回の場合、恭介にとってかなり不利な状況になったのは、確かだったが。

 さて、どうするか。

 などと思案する間もなく、勇者様が迫ってくる。

 剣を上段に構え、正面から振りおろしてきた。

 逃げても裂けても、おそらくはダメージを受ける。

 と、なると。

 仕方がない。

 そう思いながら、恭介は姿勢を低くして勇者様との距離を詰め、剣が振りおろされる前に、勇者の懐に飛び込む。

 懐、というより、自分の頭を勇者様に接するような姿勢になり、大太刀を握った右手と左手を勇者様の胴体に回し、そのまま上体を起こして、背後に投げる。

 想定外に勢いがついていたのか、勇者様の体はそのまま三メートルほどの高さまで飛ばされ、山なりの軌道を描いて飛んで行った。

 完全に、虚を突かれたのだろうな。

 と、恭介は推測する。

 恭介自身、直前まで、自分がこんな真似をするとは予想出来なかった。

 ほぼ反射的な行動になる。

 勇者様はそのまま、地面に背中を強く打ちつける形で着地する。

 しかし、すぐに跳ね起きた。

 剣は右手に握ったままで、荒い息をついている。

 自分の剣で傷つかなかったのは上等だが、背中を強く打った衝撃まではどうにも出来ず、一度呼吸が出来なくなったのだろう。

 恭介は大太刀を両手で構えて、そのまま突進する。

 勇者様は、少し反応するのが遅れたものの、手にしていた剣でどうにか恭介の大太刀の刺突を上に流した。

 無理に跳ねあげられた大太刀の切っ先が、勇者様の兜を削りつつさらに前進する。

 恭介はその刀身を下にさげる。

 勇者様は、自分の剣でその軌道を逸らし、どうにか自分の肩の外まで外す。

 そこでまた、両者は後退して距離を取った。

 今度は、勇者様の方が突進して距離を詰めてくる。

 刀身に妙なエフェクト光はまとっておらず、つまりは、剣技スキルなどの小細工なしに、素の技量だけで勝負をかけるようだ。

 恭介は突き出された勇者様の剣先を、長い大太刀の先で弾き、逸らそうとする。

 しかし、勇者様の側はすぐに姿勢を変え直し、まっすぐに恭介の体幹部に剣が刺さるように、方向を変えて進み続ける。

 ほんの、二歩か三歩。

 それだけ進めば、恭介の胴体は勇者様の剣に貫かれている、はずだ。

 恭介は、勇者様の体が二メートルほどまで迫った時点で、大きく足を前に振り抜く。

 勇者様は、その動きを察知するや、前進を止めて身を逸らす。

 恭介のつま先が、勇者様の顎をわずかにかすめた。

 直撃はしなかったが、また脳が揺れたらしく、勇者様の動きが目に見えて鈍くなる。

 まだ立っていたが、眼の焦点が合っていない。

 恭介は反射的に大太刀を振りかぶって、直上からまっすぐ下に振りおろす。

 大太刀の刀身が勇者様の兜に触れる直前、勇者様の剣が跳ねあがり、大太刀を受け止めて脇に流す。

 大太刀は、むなしく地面に切っ先をつけた。

 恭介はそのまま、大太刀を跳ねあげる。

 勇者様も大太刀を流した勢いもそのままに、前進しながら斜めから恭介の体へ剣を振りさげる。

 両者の刀身がほぼ同時に相手の胴体を両断し、二人は意識を失った。


「まーた、一人で無茶して」

 決闘空間から抜けると、遥がジト目で睨んでいた。

「これ、意味があるの?」

「意味なら、あるよ」

 眼をしばたきながら、恭介が答える。

 生還した、と、自覚する瞬間には、いつまでも慣れない。

 認識が、すぐには現実においつかないのだ。

「まあ、あるよね」

 彼方が、頷く。

「説明しなよ」

 遥がいった。

「恭介は、納得って言葉を使っていたけど」

 彼方は、素直に説明をはじめる。

「この納得させる対象っていくつかに別れていて、さらにいうと、どう納得させる必要があるのか、って意味合いもそれぞれ微妙に違っていると思うんだ。

 対象の違いでいうと、まず、この決闘を仕組んだ生徒会側。

 それに、決闘の当事者である結城姉弟と、あと、無数のギャラリーね。

 わかりやすい順から説明すると、生徒会側は、結城姉弟、その中でも勇者様の実力を周知させることが今回の目的だった。

 無数のギャラリーに対する納得も、これに準ずる。

 つまり、誰が見ても文句なしに、勇者様の実力が実感出来れば、それがいい結果ってことになる。

 で、誰もあまり気にとめていなかったけど、この場合、渦中の勇者様の心情のこと、誰も考慮していないんだよね」

「そう、かも」

 少し考えてから、遥が頷く。

「少なくとも、あの子がどういう子なのかってことさえ、あまりよく知らないし」

「もともと病弱で、学校も休みがちだったといってたしね」

 彼方はいった。

「親しい友人とかも、そんなには多くなかったんじゃないかな。

 で、その勇者様は、こんな世界に転移されてからこっち、生徒会の意向で存在を半ば隠されつつ、これまで大事に育てられてきたわけだ。

 多分、だけど、生徒会関係者以外とは、これまであまり接触してこなかったんじゃないかな。

 勇者様とパーティを組んだって、ってプレイヤーの噂も聞こえてこないし」

「それも、そうなんでしょうね」

 これにも、遥は頷く。

「勇者様の情報は、ランキングからも除外されていたくらいだし」

「勇者様、結城ただしくんは、いい子なんだと思うよ。

 生徒会のいい分は筋が通っているようだし、素直に従って来たと思う」

 彼方は、説明を続ける。

「必死に、勇者として振る舞おうと、ロールプレイを続けて来た。

 ただそれは、歪んでいるよね。

 当のただしくん本人の意向は、まったく反映されていないんだから。

 ジョブなんて、単なる方便に過ぎないのに」

「それで、わざわざ」

 遥は、相変わらずジト目で恭介の顔を睨みながら、そういう。

「あんな、必要のない個人戦に持ち込んだり、相手を煽るような言動をしてみせたわけ?

 ばっかばかしい!

 言葉で話せばわかり合えることじゃない!」

「言葉だけでは、足りないと思った」

 ようやく、恭介が口を開く。

「こちらが、本気で相手を務めていること。

 手を抜いていないこと。

 相手を軽視していないこと。

 これをすぐに理解させるためには、実際に、本気で戦ってみるのが一番手っ取り早い」

「手を抜いてないんだ?」

「手は、抜いていないぞ」

 彼方に問われ、恭介は即答する。

「ただ、人間相手だからなあ。

 無意識のうちに、躊躇いが生じた場面は、あったと思う」

「これだから、男子は!」

 遥は、まだ怒っていた。

「殴り合いで友情するなんて、今時流行らないってえの!」

 そういう理解に至ったのか、韜晦しているのか。

 その口調だけでは、どちらとも断定出来なかった。

「結果としては、上々なんじゃないかな」

 彼方がいった。

「生徒会の狙いも、ほぼ達成出来ているはずだし。

 さっきの決闘を見て、勇者様の実力を疑うプレイヤーはいないと思う。

 勇者様の方も、うん。

 少なくとも一人は、勇者というジョブではなく、その中に居る一人の人間を認め、見てくれる人間が居るって、否が応でも納得出来ただろうし」

「そんな単純なことのために、キョウちゃんがここまで苦労する必要ないじゃない!」

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