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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接触篇

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世界間の差異

「スキルは、少なくとも魔法関連に関しては、実用的な部分だけを選んで簡易化しているので、素養がない人でも扱いやすくはなっていると思います」

 アトォは、そういった。

「実用的である分、スキルだけを使っていると、深い部分には届かないとも、思いますが」

「AT車とマニュアル車みたいなもんかな」

 赤瀬は、そんなたとえ方をした。

「魔法は、車なんかよりも用途も応用も広いだろうから、実際にはそんなに単純なものでもないとは思うけど」

「先ほどいただいた、これなんかは」

 アトォは、自分の倉庫からZAPガンを取り出して、そう評価する。

「用途が絞れているし、使用法が直感的にわかりやすく出来ているので、ある意味では優れた道具であるといえます。

 ただ、こうした用途であれば、わたしなんかは弓型のものの方が慣れている分、扱いやすいとは思いますが」

「あ、弓型のもあるよ」

 恭介はそういって、自分の倉庫から魔力弓を取り出してアトォに手渡した。

「ただ、おれ以外の人が使っても、どの程度の威力になるのか、保証は出来ないかな。

 制作者いわく、試しに作ってみた玩具みたいなもの、とのことだったから、性能までは保証の限りではない」

 ZAPガンの方は、すでにかなりのユーザーがいたし、使用感や性能その他についてもある程度、評価が定まっている。

 しかし、この弓に関しては、

「性能は使用者の能力に依存する」

 という部分がネックになって、今のところ恭介以外の使用者が見当たらない。

「なるほど」

 アトォは恭介から魔力弓を受け取って、頷く。

「こういうものも、あったのですね。

 あとで試させてください」

「それ、持っていていいよ」

 恭介は、そういった。

「どうせ、いくつか予備を持たされているし」

 使用者が恭介しかいない現状だと、必然的に現物は余る。

 予備という名目で、在庫を預けられている形だった。

「その弓、魔法の扱いに慣れていない時期に、試しに作ってみた的な代物なんだよね」

 彼方が、そう説明する。

「まずは、魔法を扱う道具をまともに作れるか、的に。

 実際に使える、ってことが証明されれば、あとの詳細にはあまり頓着しなかったみたい。

 ただ、その試作品をこの恭介が使いこなしてしまったから、制作者は結構驚いてもいた」

「そういう経緯、なのですか」

 アトォは、また頷く。

「こちらでも、いろいろと苦労なさっているのですね」

「苦労しているのは、主に酔狂連の人たちだけどね」

 遥が指摘をした。

「他のプレイヤーに関しては、わたしも含めて、魔法やスキルに関して、そこまで深く考えていないと思う。

 それよりも優先するべきことが、割とあるし」

 結局、多くのプレイヤーの関心事は、

「どうしたらポイントを効率よく集められるのか?」

 という一事に尽きる。

 この場に居る二パーティに関しては、すでに使い切れないほどのポイントを先行して集めていたため、そこまでがっつく必要がないだけ、だった。

 余裕がある、といってしまえばそれまでだが、トライデントに関しては、もう少し遠くまで見通した上で行動の指針を定めている気もする。

「だけど」

 遥かは、そう続けた。

「すべてのダンジョンが攻略出来たら。

 あるいは、すべてのプレイヤーがすべてのダンジョンを攻略してしまったら。

 その先は、なにをやらされるのかね、わたしら」

「わからないね」

 恭介が即答する。

「予想するにしても、その材料もないし状態だし」

「師匠たちは、元の世界に戻ることを諦めていないんですか?」

 赤瀬が訊ねた。

「諦める、諦めない以前に」

 恭介が、答える。

「戻るしかない。

 というのは、安全性やその他の要素を包括的に考えても、元の世界に戻るのが自分たちにとって一番だと思っている。

 だから、その努力は放棄するべきではない。

 と、そう思っている」

「逆にいうと」

 彼方が、その先を引き取った。

「医療面その他の不安が解消されるようだったら、元の世界に執着する理由もその分、薄くなるんだけどね。

 ぼくら、別に、元の世界にいい思い出が多い、ってわけでもないんだし」

「結局、インフラとかそっち方面の問題なんよね。

 元の世界に戻る理由って」

 遥が、続けた。

「ああ。

 あくまで、わたしらにとって、ってことだけど。

 この場合のインフラって、上下水道とか送電システムとか、そうした物質的なものばかりではなく、何十万以上の人々が集まって生活している、そうした社会に発生する余剰すべてをさしていっているわけだけど。

 そういうのって、こっちでもアトォちゃんの世界でも、望めないものでしょ?」

「大勢の人たちが生活する場所でしか生まれない余剰」

 仙崎が、確認する。

「いいかえると、豊かさ、ということでしょうか?」

「そうね」

 遥が、頷く。

「音楽とか動画とか、それに知識なんかも。

 とにかく、無数の人たちが普通にほいほい公開して有償無償で提供している社会、って、ある程度以上の人口がないと維持出来ないわけでさ。

 個人的には、元の世界とこっちの一番の違いって、そこだと思う」

「物質的な豊かさだけを求めるのなら、マーケットでなんでも買えますもんね」

 青山も、遥の言葉に頷いた。

「確かにそこの違いは、大きいかも知れません」

「医療でも、その他の分野でも」

 彼方がいった。

「何十万とか、それ以上の人間が仕事として従事していて、常に最新の知見を蓄え、刷新していたわけで。

 そういうのは、こちらの世界では望めないからね。

 その分、自由度は高いんだけど」

「はぁ」

 アトォは、驚いたような呆れたような、微妙な表情になっている。

「皆さんがいらした場所は、なんだか途方もない場所だったようですね。

 すべてが理解出来たわけではありませんが、理解出来た範囲内でも、ちょっと、頭がくらくらして来ました」

「アトォちゃんのような人には、うまく想像出来ないかもね」

 遥がいった。

「なんというか、生まれ育った環境が違い過ぎるし。

 こっちも、アトォちゃんの世界の生活が、うまく想像出来ない部分があるし」

「異世界人同士だからなあ」

 恭介がいった。

「肝心な部分で、理解が及ばない部分はあるよ、そりゃ」


 決して、元の世界に戻る希望を捨てたわけではない。

 しかし、それはそれとして、帰還する具体的な方法について、まったく手掛かりがない現状だと、長期的に生活する術も身につけておきたい。

 マーケットなどの機能が一時的に使用不能になった場合までを想定して、徐々に準備を進めている。

 というのが、現状のトライデントの方針になっている。

 ただ、これも。

「いろんな意味で、半端だな」

 と、恭介は思う。

 永続的な食糧生産を目指すのなら、もっと開拓なりなんなりに注力するべきだし。

 すでに十分なポイントは稼いでいるのだから、なんなら、ダンジョンなんか放置しておいてもよかった。

 ただ、ダンジョンを攻略することで、元の世界に戻る方法のヒントでも掴める可能性はあったので、そちらも平行してやっている。

 このままだと、どっちつかず、といった結果になる可能性もあった。

 恭介たちプレイヤーをこんな場所まで運んで来た何者かが、どんな意図を持ってそんな真似をしでかしたのか。

 その意図が見えない現状があり、恭介たちの方針も、それにつられる形でブレてしまっている。

 ここは、流刑地なのか、それとも単なる通過点に過ぎないのか。

 それすらも、定かではない。

 おまけに、別世界のプレイヤーまで出現している。

 ますます、「何者か」の意図するところが読めなくなった。

 アトォたちの出現と接触は、どこまでが偶然でどこまでが「何者か」の意図通りなのか。

 この場で考えても結論が出ない性質のものだし、考えないようにはしているのだが。

 いずれにせよ、恭介たちが置かれた境遇は、かなり足元が不確かで、安定性に欠ける。

 この先、なにがどうなるのか。

 予想するための材料が、とにかく乏しい。

「まずは、ダンジョンを攻略して様子を見るしかないのかなあ」

 そんな言葉が、恭介の口からこぼれる。

「今さら、だね」

 彼方が、そう応じる。

「実際、その他の選択肢はなさそうなんだけど」

「ここの定住するつもりなら、ダンジョンなんか無視するって選択肢もあるよ」

 遥が、そう指摘をする。

「アトォちゃんたちが、そうしていたように」

「将来的にはどうなるのかわからないけど」

 恭介は、そう受けた。

「この時点では、そこまで思い切れないかな」

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