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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接触篇

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食堂への訪問

 なんだかんだあって酔狂連への来訪が長引いたので、合宿所への挨拶が予定よりもかなり遅れてしまった。

 左記に連絡を入れると、

「ちょうど昼のピークを過ぎたところです」

 というから、それでちょうどよかったのかも知れないが。

 例によって、かなり歩いて合宿所の食堂まで移動する。

 アトォは、歩くのは苦にならないようで、それは素直に助かった、と思った。

 この少女は、体格に比較して精神面は大人びており、外見と言動とのギャップが大きい印象がある。

「合宿所に居るのは、大きい男と小さい女子のコンビで」

 恭介は説明する。

「こっちに来た時に見かけていたってことだけど、あれでユニークジョブって珍しいジョブ持ちなんだ。

 ダンジョン攻略にはあまり積極的ではないけど、一応は、たまにいっているみたい」

「その、ジョブという概念が、いまいち理解出来ていないですね」

 アトォはいった。

「それで珍しい、といわれましても、正直、ピンと来ないです」

「だろうねえ」

 恭介は、その意見に同意する。

 このアトォは、つい先日まで、ステータス画面の存在すら知らなかったのだ。

「その辺はおいおい、理解していけばいいよ」

 遥が、そうフォローした。


「ああ、ちょうどよかった」

 食堂に着くと、エプロン姿の左記が、そういって出迎えてくれた。

「今、試作品が焼きあがったところです」

 その言葉通り、食堂内には甘そうな香りが漂っていた。

「スイーツ系?」

 遥が訊ねる。

「ええ。

 甘味をリクエストされることが多かったので、アップルパイを焼いてみました」

 左記は答える。

「今、ちょうど空いていますから、好きな席に座って待っていてください。

 飲み物は、なにがいいですか?」

「この子、慣れていないんで、刺激物は避けて欲しいかな」

 遥がいった。

「それで、温かい飲み物ならなんでもいいや」

「では、ミルクを温めます」

 左記はそういって、厨房に引っ込む。

 入れ替わりに、吉良が水の入ったグラスを盆に載せてやって来た。

「真面目に働いていることもあるんだな」

「失敬な」

 恭介が揶揄すると、吉良はそういって口を尖らせる。

「忙しい時は、ちゃんと手伝ってますよ」

 つまりは、忙しくない時はダラダラしているというわけだった。

「しかし、本当に、一人だけこっちに残っちゃったんだ」

 グラスを全員に配ると、吉良は、そのままアトォの隣に座る。

「向こうの世界のこととか、訊きたいことは山ほどあるんだけど。

 ただ、今は、これからどうするつもりなのかってことだけ、訊きたいかなあ。

 こっちに長居するんなら、いっそのことうちのパーティに入らない?」

「パーティ、ですか?」

 アトォは、そういって首を傾げる。

「そういうの、まだピンと来ていないもので。

 もう少し情勢を見極めて、慎重に判断したいと思っています」

「あら、見かけによらず理屈っぽい」

 吉良は、目を見開く。

「案外、そちらのパーティに似合いかもね。

 暇なときはいつでもよくわからない議論ばっかしているし」

「その輪に、わたしは入っていませんけどね」

 遥が、指摘をした。

「でもまあ、アトォがこっちに長居をするとなると、勧誘が多そうだな」

 彼方がいった。

「さっきの決闘も、大勢のプレイヤーが見ていたはずだし」

「だろうねえ」

 恭介はいった。

「たった一人で坂又さんたち全員を圧倒したんだからな。

 どこだって、欲しがるだろうな」

「あの方たち、そんなに強い方たちなのですか?」

 アトォが、そう訊いて来た。

「少なくとも、上から数えた方が早い部類だね」

 吉良が、答える。

「あそこ以上ってなると、そこのトライデントくらい思い浮かばない。

 あそことトントンくらいパーティは、他にいくつかあるけど」

「お前ら二人も、他のパーティは余裕で圧倒出来るんじゃないのか?」

 恭介は、そういった。

「はは。

 ご冗談を」

 しかし、吉良は、取り合わなかった。

「単純に攻撃力だけを取り出したら、そうかも。

 でも、そちらの旦那が例の反則弓で対応したら、こっちには防ぐ術がありません。

 左記くんが最初にズドンとやられたら、はいそれまでよ、でしょう」

 案外、冷静な判断だった。

「この方々は、そんなに強いのですか?」

 アトォが、吉良に訊ねる。

「そりゃ、もう」

 吉良は、あっさりと頷いた。

「少なくともこちらの世界では、ダントツです」

「なるほど」

 アトォは、思案顔になった。

「お待たせしました」

 その時、左記が両手にホットミルクの盆とアップルパイの盆を持って、やって来た。

「やっぱり、サボっている」

 遥は、ジト目で吉良を見ていった。


「いや、単純に、怖いんですよ」

 左記は、そう答えた。

「戦ったり、傷つけたり傷ついたりするの。

 自分でやりたいとは思わないし、ぼくが召喚術士になったのも、そういう心理が影響しているのかも知れません」

「素直にそういえるのは、悪い資質ではないと思うな」

 恭介は、そう受けた。

「下手に虚勢を張ったりするよりは、よほどいい」

「まあねえ」

 遥は、そう感想を述べる。

「なにかというと、自分が犠牲になればいい、って行動に走っちゃう誰かさんよりは、遥かに健全よねえ」

「アトォが決闘時に使っていた、召喚魔法っぽいアレ」

 についての話題から、こっちに広がってしまった。

 アトォによると、

「ありとあらゆる物にはそれぞれの霊が憑いていて、そうした霊に助力を求める方法」

 を伝授されている、とのことだったが。

「つまり、アトォだけではなく、他にも使える人が居るってこと?」

 彼方が、確認する。

「何年か修行をした巫女であれば、たいてい行使可能な術です」

 アトォは、そう答える。

「ただし、巫女になるにはかなり希な資質を持った幼子だけです」

「特定の資質を持つ子が、幼少時から年単位の修行を積んでようやく使える術、かあ」

 遥がいった。

「スキルみたいなお手軽なものとは、違うんだね」

「魔法って、本来そんなものじゃないのか?」

 恭介がいった。

「元の世界のイメージでも、そんなもんだろう」

「古典的なファンタジー作品とかでは、そういうのが多いね」

 彼方も、そういう。

「ゲームは、システム化する上で理解しやすい感じにアレンジされていることが多いけど」

「おれたちのスキルは、どっちかというとゲーム風のイメージが強いかな」

 恭介が、そう続けた。

「ポイントを消費して取得とか、まあ、わかりやすいっていえばわかりやすい」

「本来、技術というのはそういうものではない、はずなのですけどね」

 アトォがいった。

「正直、その点は、ちょっと納得がいっていません」

 自分がこれまでに過ごしてきた世界の常識と、実際に出来ることの齟齬に、なにやら納得がいかないようだった。

「実際に出来るんだから、そういうもんだと割り切るしかないと思うな」

 遥がいった。

「ガバガバな点が多いのは、なんか、今さらだし」

「この運営、そこまで深いこと、考えてないと思う」

 恭介も、そういった。

「なんというか、深いところにいけばいくほど、あれこれの齟齬が出て来る」

 アトォはといえば、焼きたてのアップルパイとホットミルクは、かなりお気に召したようだった。

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