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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接触篇

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あちらの予測

 少し歩いて酔狂連の敷地に入る。

「受付」

 という看板を掲げた小さな建物に入って来意を告げると、すぐに樋口が出て来た。

 どうやら、ここで自分の作業をしながら、訪問者の相手をしているらしい。

「あ、どうも」

 奥の部屋から出て来た樋口は、彼方の顔を見るなりそういって軽く頭をさげる。

「来るとは聞いていたけど、本当に来ましたね。

 ええ、すぐに、岸見を呼びます。

 少しお待ちください」

 といって、また元の部屋に戻っていった。

 それから三分ほど待たされ、岸見が、彼方たちが入って来た入口から入ってくる。

「やあやあ、早速ご活躍だねえ」

 入ってくるなり、岸見はそういった。

「決闘、リアルタイムで観戦していたよ。

 で、おそらくはその足でこっちに来るんじゃないかと思ったら、案の定だったわけだ」

「予想がついている様子ですが」

 彼方はいった。

「この子用の装備を一式、それと、武器も。

 この子の希望を第一に優先して、揃えてください」

「そう来ると思ったよ」

 岸見はそういって頷く。

「さあ、お嬢さん。

 こっちに来て」

「ついていって」

 彼方はそういってアトォの背中を押した。

「風変わりなところはあるけど、基本的には信用出来る人たちだから。

 あ、ここの人たちには翻訳魔法、かけておいた方がいいよ」

 アトォは、特に逆らう風もなく、岸見についていく。

 彼方は、玄関をあがったところにある少し広い部屋にあったソファに腰掛けた。

「寒くないですか?」

 もう一度、樋口が顔を出して確認して来る。

「なんだったら、暖房、強くしますけど」

「いいや、大丈夫」

 彼方は答えた。

「大人しく、ここで待つよ」

 多分、だが。

 かなり長くかかりそうな気がする。

 女性の買い物は、長時間になりがち。

 という事実を、彼方は姉とのつき合いで学んでいた。

 衣服とかファッション関係になると、本当に、長くなる傾向がある。

 ソファに腰掛けながら、倉庫から出したタブレットで電子書籍を読んだりして時間を潰す。

 途中、恭介から連絡が来て、これから彼方たちに合流すると告げられた。

 恭介と遥も仕事をしながら決闘の様子をリアルタイムでチェックしていたようで、こちらの様子はだいたい把握しているという。

 説明する手間が省けるので、彼方としても、それならはそれで、助かるのだった。

 恭介たちとアトォ、どちらか先になるかな、などと思いつつ読書を進めていると、恭介たちの方が先に到着した。

「今、奥?」

 遥が、彼方に確認をする。

「そう、奥」

 彼方は頷く。

「今、装備とか揃えて貰っている。

 おそらく、ほとんどはオーダーメイドになるとは思っているけど」

「だよね」

 遥も頷いた。

「わたしも、様子見てこようかな」

「いってくれば」

 彼方は、そう応じる。

「ぼくは、女性じゃないから遠慮したけど」

 同性である遥ならば、いっしょに選んでも問題はないはずだった。

 時間は、それまでよりも余計にかかるのかも知れないが。

 遥は隣室に通じる扉をノックして樋口に案内を乞い、樋口のあとをついて奥へと姿を消した。

「決闘、観たけど」

 恭介が、口を開く。

「あの子、想像以上に動けるな」

「だよねえ」

 彼方は頷く。

「まあ、一人だけこっちに居残った時点で、いろいろと箍が外れた子なんだなあ、ってのは、推察出来たけど」

 普通は、そんなことはしない。

 アトォにしてみれば、こちら側は詳細もよくわからない、未知の、魔境に等しい場所のはずだ。

 安心出来る要素は、ほとんどない。

「様子を見て、生徒会あたりに押しつけようかと思っていたんだけど」

「それ、無理じゃない」

 彼方は、即座に否定する。

「一度、生徒会に押しつけたとしても、すぐにのしをつけて突っ返されるのがオチだと思う」

「やっぱり、そうなるか」

 恭介は、ため息混じりにそういった。

「そうなるような予感は、していたんだよなあ。

 あの子がこちらに飽きて、すぐに帰るって線は?」

「そっちも、望み薄だね」

 彼方は、また、即答する。

「あの分だと、まだ結構長居すると思う」

 アトォが、なにを目的として単身でこちらに残ったのか。

 まだ、本人に確認はしていなかったが。

 どうも、これまでの様子を見る限り、あくまで個人的な興味を満たすため、という線が濃厚だった。

 あの子の好奇心が完全に満たされるまで、と、そう仮定すると。

 それは、かなり長い期間が必要になるだろう。

「なら、願わくば」

 恭介は、そういった。

「せめて、あんまり問題を起こさないで欲しいかな」

 そっちも望み薄、ではないかなあ。

 と、彼方は思う。

 恭介の精神衛生を考慮して、口には、ださなかったが。


「あの子個人のことは、いいとして」

 彼方は話題を変えた。

「あっちの世界は、どうなると思う?」

「あっちの世界の、どういう部分について?」

 恭介は、質問を返す。

「気になる部分が多岐に亘りすぎて、どっから話したもんか、って感じなんだが」

「じゃあ、まず、あっちのチュートリアルはどうなるのか、ってことから」

「多少は時間がかかるものの、どうにかやる遂げるんじゃないかな」

 恭介はいった。

「アトォちゃんが属する、フラナの一党はスキルなんかもかなり使いこなしている様子だし。

 多分、だけど、大型のモンスターなんかも、これまであの一党が始末して来たと思うんだよね。

 邪魔だから」

「ああ」

 彼方は頷く。

「可能性は、否定できないかな。

 もう一方の、セッデスの郎党はどう?」

「そっちはそっちで、頑張るとは思うよ」

 恭介はいった。

「マーケットで売っている現代兵器なんか、最初に使いこなすのはセッデスの方だと思うし」

「どうしてそう思うのかな?」

「モチベーションの問題が、第一」

 恭介は、指折り数えながら、そう思う根拠をあげていく。

「フラナの一党は、これまでのやり方を改めるモチベーションがあまりないんよね。

 そこへいくとセッデスの方は、このままでは駄目だ的な閉塞感を抱えているから、一発逆転を狙って新奇な方法に飛びつきやすい。

 それに、組織形態としても、セッデスの方が命令系統がはっきりしていて、現代の軍組織に近い。

 最初は手探りだろうけど、そうした兵器の運用法を経験則で学んでいけば、それが全体に定着するのも早いと思う。

 これが、二つ目。

 次に、人員の分布状況ね。

 セッデスはどうやら、モンスター出現地点の周囲をかためる場所に暮らしているっぽいけど、フラナの一党はかなり広い地域に薄ーく散らばっているらしい。

 これにより、後者の方が全体に情報が伝わりきるのが遅れる。

 これが、三つ目」

「なるほど」

 彼方は頷く。

「どれも、それなりに納得のいく意見だと思う。

 向こうとこちらの行き来は、今後、盛んになると思う?」

「なるだろうねえ」

 恭介は、そう呟く。

「陣営に関わらず、特に若い世代ってのは、目新しいものが好きなんだ。

 自分たちとはまったく違った文化、文明を生きている者たちがすぐそこ、手の届く範囲にあると知ったら、そこに跳びこもうとする人はそれなりに居るはずだよ。

 ええと、ちょうど、今来ている、アトォちゃんのように。

 そういう人たちは、周囲の反対を押し切ってでも、勝手にこっちに来るよ。

 そのうちの何割かが、新しい文物を持ってあちらに帰って、伝道師の役割を務めると思う。

 それ以外に、フラナの方はどうか読めないところだけど、セッデスの方は、こちらの戦い方を学ぶための留学生のような役割を担う人間を、こっちによこしてくると思うよ。

 モンスター退治ということに関していえば、先にチュートリアルを終わらせたこちらは、間違いなく先進国なわけで」

「貿易とか外交がはじまる、と」

「そうなるだろうねえ」

 恭介は、他人事のような口調でいった。

「そうならない理由がない、というか」

 これは、あくまで恭介という個人がおこなった予測でしかない。

 それが当たっても外れても、恭介にはなんのデメリットもない。

 いわば、単なる戯言でしかなかった。

 少なくとも、この時点では。

「仮に、こうした予測が当たったとしても」

 恭介は、そうつけ加える。

「実際に交渉を担当するのは、おれではないしなあ」

 恭介は、立場としては、一プレイヤーに過ぎない。

 その、はずだった。

「そうだといいねえ」

 彼方はいった。

「これまでのことを考えると、なにかことがあると呼び出されて参考意見を求められる。

 とは、思うけど」

「参考意見は、あくまで参考意見だし」

 恭介は、そう応じる。

「なんの責任もない立場なら、好きなことがいえるよ」

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