表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接触篇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

203/401

彼方の演習

「ごめんねー。

 案内している途中でこんなことになってー」

 合宿所を借りて戦闘用装備に着替えてから、彼方は改めてアトォに詫びた。

「ぼくたち、普段好き勝手にやってるから、こういう時に断りにくくてさあ」

「いえ、お気になさらず」

 アトォは、気にかけた様子もなかった。

「他の皆さんの様子も、見たいと思っていたところですから。

 でも、一人であれだけの人数を相手にしても、大丈夫なんですか?」

「んー。

 多分ねー」

 彼方はいった。

「拠点内だから、ジョブのバフも入るし。

 それに、レベル差があるからなあ」

 特に気負った様子もない、口調だった。

 今回、相手にするプレイヤーたちのレベルは、すべて八十代。

 レベルカンストしている彼方とは、十以上の開きがある。

 それだけのレベル差があると、多少の人数差があったとしても、ほとんど勝負ならない。

 むしろ、彼方としては、この時点で、他のプレイヤーがどういった戦い方をするのか。

 その辺の興味も、持っていた。

「しかし、一度に四パーティ全部、ってのは、本当に大丈夫なのか?」

 今回の提案者である坂又までもが、そんなことをいう。

「総勢で、二十名を超えているんだが」

「大丈夫、大丈夫」

 彼方は、あくまで軽い口調を崩さない。

「基礎訓練は終わっている人たち、ってことでいいんだよね?」

「ああ、そうだ」

 坂又はいった。

「今回のは、仕上げの部分になる。

 未知の強敵と遭遇した際、どのように対処するのか。

 そのつもりで相手をしろと、相手には伝えている」

「うん。

 それで、正解だね」

 彼方も、その言葉に頷いた。

「実際、ダンジョンではなにが出て来るのかわからないし」

 アトォを除いて、この場に居る者たちは全員、ダンジョンでの戦闘経験を持っている。

 しかし、「苛烈な戦闘」ということであれば、トライデント以上に経験しているプレイヤーは皆無だった。

「お」

 四パーティから彼方へ、ほぼ同時に、決闘デュエル申し込みのメッセージが送られてくる。

「じゃあ、早速いきますか」

 彼方は、指先を動かしてすべての申し込みを受諾した。

 アトォと坂又の前から、彼方の姿が消える。

 普通の空間から、物理的な干渉が不可能になる決闘専用の空間へと移動したのだった。


「マッドマシンガンズ、にゃるのんずぅ、本家冷やし中華愛好会、ぽんぽこキツネさんチーム、か」

 パーティ名は遊びでつけているのが多いなあ、と、彼方は思う。

 トライデントだって割と思いつきでつけたわけだが、このパーティ名だとどんなパーティなのか、名前だけではその性質が予想出来ない。

「こっちも実戦のつもりで、いきますか」

 決闘空間に出ると、他のパーティはすでに配置についてる。

 彼方一人を、四方から囲んでいた。

 彼方と左右と正面、後方と、それぞれ目測で五十メートルほどの距離をおいた場所に出現していた。

 決闘システムは、システムを使用した場所をそのまま使うモードとまったく架空の空間を使用するモードとがあり、今回は、後者を使用している。

 地面以外になにもない、灰色の空間がどこまでも広がっている感じだ。

 遮蔽物なども、当然、ない。

 地形や遮蔽物などの条件がない、つまり、参加者各人の位置取りなども問われてくる形だった。

 最初に反応したのは、彼方から見て正面のパーティだった。

 パーティ全員が手にしていた銃器を構え、即座に連射してくる。

 遅滞の見られない、手慣れた動きだった。

「あれがマッドマシンガンズ、か」

 大盾でその銃撃を受けながら、彼方は呟く。

 左右と後方から、他の三パーティも迫ってくる。

 彼方の場合、現代兵器による物理攻撃はあまり警戒する必要がない。

「ちょっと、場を乱しますか」

 彼方は「足運び」のスキルを使って、盾を構えたまま正面のマッドマシンガンズへと突っ込んでいく。

 見る間に距離を縮めていく大盾を見て、マッドマシンガンズの面々は露骨に動揺したようだ。

 射線が乱れ、浮き足立っているのが、目に見えてわかる。

 彼方はそのまま大盾を前にして突入し、マッドマシンガンズに突っ込んだ。

 何人かが衝撃をもろに受けて、十メートル以上、吹っ飛んでいく。

 残ったメンバーも、左右に分れて逃げ出しはじめた。

 やっぱり。

 と、彼方は思う。

 想定外の事態に遭うと、脆いなあ。

 逃げていくメンバー一人一人を大盾で吹き飛ばし、彼方は、決闘開始から二分もかからずに最初のパーティを壊滅させる。

 残った三パーティはといえば、いきなり移動した彼方を追いかけて移動してくる最中だった。

 しかし、足並みは揃っていなくて、各人がバラバラに走っている。

 無防備な。

 と、彼方は思う。

 遮蔽物がない場所だから、仕方がない側面はあるのだが。

 走ることに全力で、こちらを警戒している様子がないのは、あんまり、なのではないか。

 警告を与える意味も込めて、彼方は倉庫からZAPガンを取り出して、こちらに向かって来る連中を一人、また一人と射殺していく。

 彼方の場合、大盾に半ば身を隠しながらの銃撃だったから、無防備にこちらに駆けてくる連中よりもよほど安全だった。

 何人かが射殺された時点で、ようやく自分たちが攻撃される可能性を悟った残りの連中が、ようやく散り散りの方向に進みはじめた。

 それでも、見通しがいい場所だったので、彼方から相手の位置は丸見えであり、彼方は、さらに何人かを射殺する。

 慌てて盾を出す者も居たが、大きさから見て防弾性能にはあまり期待出来ず、実際に彼方はその盾を貫通して盾の使用者を射殺している。

 魔法耐性がついた装備は開発されてからまだ日が浅く、優先的に回して貰っているトライデントのような立場か、あるいは、大枚をはたいたパーティしかまだ入手していない。

 はず、だった。

 だから、ZAPガンは有効であり、実際、命中したプレイヤーは例外なく沈んでいる。

 危機感もないし、各人の動きがバラバラだし。

 と、彼方は思う。

 レベルだけあがっても、これじゃあなあ。

 とにかく、不測の事態への対応力が、ない。

 すでに半数以上を減らしたとはいえ、この時点でもまた十名以上が残っている。

 彼方の左右に回り込もうと移動している最中だった。

 包囲されると、面倒かな。

 そう考えた彼方は、盾を構えたまま、自分から見て左に回り込もうとしていた集団の、その先頭へと突進する。

 途中、ZAPガンで何人か射殺しながら移動し、その集団の移動する前の空間に出て、大盾を構え直して突進した。

 この大盾は高さ二メートル、幅一メートル半。

 酔狂連の最新作であり、あらゆる耐性を極めようとした結果、一トンを超える重量になってしまった。

 今の彼方でなければまともに持ちあげることもできない、そんな、かなりピーキーな代物になる。

 そんな大質量の大盾が正面から迫って来るわけであり、当然、その場に居た連中はすぐに逃げようとする。

 しかし、何名かがあえなく吹き飛ばされて決闘場から消える。

「残り、三分の一、ってところかな」

 片手で軽々と大盾を振るいながら、彼方が呟いた。

「この分だと、あっという間に終わっちゃうかな」

 実際、そうなった。


「ああ、お疲れ」

 決闘場から出て来ると、坂又が、すぐに声をかけてくる。

「なんというか、予想以上の活躍だったな」

 毒気が抜けた声だった。

「恭介とかねーちゃんほど派手じゃあなんだけどさ」

 彼方はいった。

「一応、ぼくもカンストではあるわけで」

「そうなんだよな」

 坂又はいった。

「高いパラメータと、それを使いこなす臨機応変さ。

 対戦した連中も、他のプレイヤーとの違いを思い知ったことと思う」

 トラウマとかになってなけりゃ、いいんだけど。

 大盾で吹き飛ばされた連中なんか、実質、交通事故に遭ったようなもんだしな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ