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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接触篇

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198/401

彼らの帰還

 その後、生徒会とセッデス、フラナ、この三つの勢力間でどのような関係を築くべきか、という議論が続く。

 この辺になると、恭介たちは完全に外野であり、意見を求められなければ口を挟むこともなかった。

 セッデス、フラナ、両勢力とも武器や魔法関係の技術や知識を欲していて、なんらかの対価と交換で持ち帰ることを望んでいる。

 対価、というか、この場合は、ずばりポイントになる。

 この手の交渉は交易するだけの価値がある物品を捜すところからはじめることが多いわけだが、三勢力はともに実質、同じプレットホーム上の参加者のようなものであり、共通の価値があらかじめ数値化されていることで、手間が省けた形になる。

 それ以外に、対モンスター戦のノウハウなども、両勢力は欲しがっていた。

 なにしろこちらは、すでにプレイヤーのほぼ全員がダンジョンでの戦闘を経験しており、事実上、豊富な戦訓を蓄えている。

「一応、生徒会の方でも、これまでに出現したモンスターのデータとか、蓄積してはいるんだけどな」

 小名木川会長は、そういった。

「ただこれも、そっちでも同じモンスター今後出て来るのか不明なんで、そのまま活用出来るかどうかは。

 正直、わからないぞ」

「そんなデータ、集めていたんですか?」

 恭介は、思わず確認した。

「wikiくらいしか、情報源がないものと思ってた」

「いや、プレイヤー全員の安全を確保するためには、それくらいのことはするだろう、普通」

 小名木川会長は、呆れ顔になって答える。

「お前らは、どちらかというと、データが出そろう前に出ていって、そのまま結果を出して来るからな。

 そんなデータ、必要もないだろう」

 いわれてみれば、確かに。

 恭介としても、心当たりが多すぎるくらいだった。

「そんでもって、お前らの戦闘データは、他では参考にならんのだわ」

 小名木川会長は、そう続ける。

「発見次第一撃で撃破、か。

 さもなくは、とことん苦戦してどうにか相手を倒す。

 ほとんど、この二パターンでな。

 どっちにしろ、他のパーティでは、真似出来ない」

「なるほど」

 ナトォ・フラナはそういって頷く。

「こちらのお三方は、そういう立ち位置になるわけですね」

 なんでそこで深く納得するような表情をするのかな。

 と、恭介などは思う。

 その横で、シュミセ・セッデスなんかも、

「そうであろう」

 とかいいながら、何度も頷いている。


 相互不可侵条約、みたいな約束も交わしていた。

 とはいえ、彼ら二勢力にとって、この場所が世界の壁まで越えて侵攻して来る価値があるとは思えず、その逆にこちらの側があちらに侵攻する方法もない。

 この時点では、二勢力にしてみると、こちらのダンジョン攻略をそのまま進めさせておく方が都合がいいくらいなのだ。

 どちらかというとこれは、お互いの意志と方針を確認するための口約束、程度の意味合いになる。

 二勢力は、ともに、マーケットでは手に入らない武器や道具、魔法やその他の細かいノウハウを強く欲していた。

 そのためには定期的に、まとまった人数が両世界を往来させて学ばせ、物品を持ち帰る方のが効率的である。

 そういう結論になり、三勢力ともこの案に合意、次の来訪の日時なども打ち合わせた。

「この場所、わたしらの本拠地からはかなり離れていてなあ」

 その際、小名木川会長はそうつけ加えることも忘れなかった。

「出来れば、次に来る時は、もっと本拠地に近い場所に出てくれると助かる」

「わかりました」

 その言葉に、アトォ・フラナは素直に頷く。

「次回以降は、気をつけましょう」

「ところで、さ」

 遥が、アトォ・フラナに訊ねた。

「なんでこんな、何もない場所に出ようと思ったわけ?」

「別に、自分で選んだというわけでもないのですが」

 アトォ・フラナはそう答えた。

「審判者にふさわしい誰かが居る場所を占いまして。

 それで、その審判者の近くに目的地を定めて転移して来た形になります」

「特定の人物を狙って、か」

 遥は、微妙な表情になる。

「その審判者って、結局、このキョウちゃんのことだったんでしょ?」

「そうですね。

 適任だったと思います」

 アトォ・フラナは遥に向かって頷いて見せた。

「そのおかげで、審判の儀式がかなり円滑に終了出来ました。

 予想よりも、ずっと穏便に済んだと思います」

「キョウちゃん、普段はこんな場所まで来ないし、別のところに居ることが多いんだけど」

 遥は、首を傾げる。

「なんで、ここ?」

「それは、不思議ですね」

 アトォ・フラナも、遥に倣って首を傾げる。

「こちらも、占いの結果に従っただけですので。

 何故、と問われましても、わかりません」

「もともと、ぼくらがここまで来たのもさ」

 彼方がいった。

「野生動物がいっぱい、拠点の方まで移動して来ているらしいから、その原因を探るため、だったはずで。

 その動物の移動は、どうやら、ここで起こった魔力の異常発生が原因だったみたいなんだけど。

 この場合、どっちが原因で、どっちが結果になるわけ?」

「タイムパラドックス、みたいなもんだな」

 恭介が感想を述べた。

「多分、考えても納得のいく答えにはならないと思う」

 わからないことは、わからないままでも、いいのではないか。

 などと、恭介は思う。


 もろもろの打ち合わせが終わり、別世界からの来訪者はそのまま帰還することになった。

 次の来訪は、十分な準備を整えてから、ということになる。

 そろそろ日も暮れかけた時分、二勢力合わせて六十名の来訪者が森の中に出来た広場の中央に集まり、アトォ・フラナが厳かな口調で呪文を詠唱する。

 しばらくして、来訪者たちの姿が、瞬時に消え失せた。

「ああ、終わった終わった」

 小名木川会長は、そう声に出す。

「こういう会談は緊張して肩が凝るってぇのに、今回は完全に不意打ちだったからな。

 余計に疲れた気がする」

 他の者たちも、この場からの撤収作業に取りかかっていた。

 バーベキューに使った機材などの片付けを手伝ったあと、魔法少女隊の三人は、

「完全に日が落ちる前に」

 といって、箒に乗って帰っていく。

 生徒会組とSソードマンも、すぐに道まで戻って、それぞれの車両に乗り込んで帰っていった。

 八尾も、倉庫から出したオフロードに乗って去っていった。

「わたしらも、帰りますか」

 赤瀬が、倉庫からランドクルーザーを出しながら、そういう。

「それで、そちらのお嬢さんは、どうするんすか?」

「お嬢さん?」

「って、あれ?」

 全員の視線が、まだそこに居たアトォ・フラナに集中する。

「ええと」

 その場に居た全員を代表して、彼方が訊ねた。

「なんで君だけ、帰っていないのかな?」

「だって、こんな興味深いところはありませんから」

 アトォ・フラナは臆することなく答えた。

「それに、次回の転移場所も、こちらから示しておいた方が確実ですし」

「もう日が暮れるけど、泊まる場所のあてとか……あるわけ、ないよねえ」

 遥は、そういって頭を掻いた。

「なれならば、別に野宿でも」

 アトォ・フラナは、そう続ける。

「うちの一族では、野営も別に珍しくはありませんし」

「そういうわけにもいかんでしょ」

 恭介がいった。

「とりあえず、今夜は、拠点内に泊まって貰おう。

 そのあとのことは、拠点に帰ってから考えよう」

「拠点というと、審判者様が普段、居住している場所ですね?」

「そうだけど、その、審判者というのはやめてくれ」

「それでは、なんとお呼びすれば?」

「恭介、で」

「それでは、キョウスケ様。

 その他の皆様も」

 そういって、アトォは微笑んだ。

「今後とも、よろしくお願いします」

 年齢相応の、邪気のない笑みだった。

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