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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接触篇

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戦士の誉れ、とは?

「実例を見せた方が早いか」

 八尾はそういって、倉庫から半壊したヘルメットを取り出した。

「こいつ、あんたらの弓矢で貫けると思うか?」

 よく見ると、その半壊したヘルメットは以前、恭介自身が身につけていたものだった。

 ダンジョンマスターとの戦闘によって役にあったなくなったので、酔狂連に預けて始末を任せていた物、になる。

「ひとつ、試させては貰えないかね」

 革鎧の中の一人が、ヘルメットの無事な部分を拳でコツコツ叩きながらいった。

「おそらく無理だとは思うんだが、実際に試してみないことには、なんともいえない」

「いいだろう」

 頷いて、八尾は森が途切れている地点まで自分の足で歩き、そこの適当な枝にヘルメットを固定した。

「これで、的に出来るか?」

「十分だ」

 試したいと申し出た革鎧はそういって、背負っていた長弓を構える。

 ヘルメットまでの距離は、おおよそ四十メートルといったところか。

 男は何度か長弓を引き絞り、矢を放つ。

 その度に、矢はヘルメットに命中し、しかし、貫通することなく弾き返された。

「なるほど」

 男は長弓を担ぎ直しながらいった。

「軽そうに見えて、存外に丈夫なのだな」

「で、だ」

 八尾は自分の倉庫からアサルトライフルを取り出し、ヘルメットに狙いをつける。

「こいつは、おれたちが元居た世界では、割と一般的な飛び道具になるんだが」

 八尾が引き金を引くと、立て続けに三発、銃声がなった。

 三点バーストで発砲し、ヘルメットは銃弾によって砕けた。

 おお。

 と、見守っていた向こう側の連中から声があがる。

「とまあ、こんな威力になる」

 八尾は、アサルトライフルを倉庫に収納して顔をあげた。

「こんな武器が普及したもんで、おれたちの世界では密集した隊列を組む戦い方はすっかり廃れてしまった。

 武器の威力が、歩兵が装備可能な防御力をずっと上回ったからだ。

 以来、おれたちは、重装備を捨てて、散兵で戦うのが集団戦の基本となっている」

「散兵、か」

 シュミセ・セッデスは、難しい表情をしている。

「頭では理解出来ているつもりだが、どうにもしっくりせんな。

 それに、先ほどの飛び道具だ。

 あれを扱うのには、どれほどの修練が必要となるのか?」

「確実に当てるつもりなら、それなりに長い修練が必要になります」

 八尾は即答した。

「しかし、ただ撃つだけならば、誰にでも出来ます。

 こういう風に」

 八尾は、今度は軽機関銃を取り出して、森に向けて引き金を引く。

 軽い発射音が連続して、ヘルメットを粉砕し、その背後にあった木の幹に無数の弾痕を残した。

「狙いをつけて引き金を引くだけで、発射することは、誰にもで出来るのです」

 八尾は、別世界から来た男たちを見渡してから、そういった。

「女でも子どもでも、銃弾がもたらす効果は変わりません。

 そのことの意味を、どうかお考えください」

 最後の方だけ敬語になっていたのは、本当に、相手に考えて欲しかったから、だろう。

「これでは、名誉もなにもあったものではないな」

 シュミセ・セッデスは、苦い表情になって、そういった。

「戦いが、戦士のみに許された専有物ではなくなってしまう。

 お主らの世界とやらは、どうやらわれらのそれよりは、戦いの苦渋が公平に分配されているようだ」


「いいの、あれ」

 遥が、仲間たちに確認する。

「いいんじゃないの?」

「そだねー」

 恭介と彼方は、投げやり気味に答えた。

「あのシュミセ・セッデスって人、ある意味高慢な人ではあるんだけど、どうやら損得勘定は出来るようだし」

「あの手の人は、あんまり下手に出るとかえってつけあがるからなあ」

 彼方は、そうつけ加える。

「ああして最初に、こっちに手を出せば手痛い目に遭うぞ、って情報を提示しておくのは、うまい抑止策になると思うよ」

 すぐそばで恭介たちの会話を聞いていたアトォ・フラナが、軽く笑い声をたてた。

 四人は、お馴染みの丸テーブルを囲んでいる。

「申し訳ない」

 金属鎧の一人が、声をかけてきた。

「まだ、待たされるのですか?」

「ああ、すいませんね」

 彼方が、頭をさげた。

「うちの、名目上のトップが、今こちらに向かっている最中ですので。

 ええと、そうですね。

 間が持たないようでしたら、なにか飲食物でも出しましょうか?」

「よろしいのですか?」

 こころもち、その青年の顔が輝いたような気がした。

「そうしていただけると、ありがたい。

 こちらも、決闘で負けて意気消沈している者が多く、なにやら気散じの種があればおおいに助かります」

「ああ、その程度はお安いご用です」

 彼方は頷いて、左内に連絡を取り、同時に、倉庫内にしまい込んでいた石竈を出して安置した。

「そいつを使うのか?」

 恭介が確認する。

「うん」

 彼方は頷いた。

「いい機会だし、人数も多いし。

 ピザでも焼こうかと。

 あと、左内くんにも、手軽に作れる料理、いくつか作って貰おう」

「石竈の火起こしは任せろ。

 以前、やったことがあるからな」

「なんか、楽しそうですね」

 その様子を見ていたアトォ・フアナが、感想を述べる。

「もっと殺伐とした雰囲気になると予想していたのですが」

「ぶっちゃけ、あなた方間の揉め事は、どう決着しようがわたしらには関係ないからね」

 遥はいった。

「それより重要なのは、今後、あなた方とどういう関係を築いていくのか、で。

 それを考えると、この場に居る人たちに親切にしておいて、損はないっしょ。

 実際には、うちの二人はその場を楽しむことしか考えてないと思うけど」

「楽しむことしか考えていない?」

「そ。

 なんでも、楽しまないよりも楽しんでやる方がいいよ」

 遥は、そう説明する。

「その方が、気分的に楽でしょ」


 左内が来て、バーベキュー用のコンロをいくつか取り出し、本格的に調理を開始する。

 それと並行して、自分の倉庫から取り出した寸胴鍋をコンロの上に置いて、紙のカップに中に入ったスープを注いで配りはじめた。

 樋口が、給仕役として盆を持って、忙しくあちこちに動き回りはじめる。

 上空での警戒を辞めて地上に降りてきた魔法少女隊の四人も、左内や樋口を手伝いはじめた。

 温かいスープはどちらの陣営の兵士たちにも好評で、これを配ったことで、かなり場の空気が和らいだ気がする。

 この寒空の下、当てもなく待ち続けるのも苦痛だろうしな。

 と、恭介は思った。

 恭介はといえば、早々に石竈を暖め終え、その中にマーケットで調達した出来合いのピザ生地を投入する。

 すぐに、チーズが焼ける匂いが、周囲に漂いはじめた。


「あー!」

 そんな最中に到着した楪夜が、大きな声をあげた。

「なんか知らないけど、楽しいことやってる!」

「今日の訓練当番は、Sソードマンだったけか?」

「どうやら、そのようだね」

 恭介と彼方は、そんなやり取りをする。

 八尾から生徒会に連絡がいっているはずだったが、同じ内容が拠点にも伝わったのだろう。

 拠点にいて、すぐに動ける連中が先にこちらに到着した、ということらしい。

「あー、楪さん」

 彼方は、焼き上がったばかりのピザを一切れつまみあげ、楪の口前に持っていった。

「これ、あげるからさ。

 ちょっと、余興に協力してくれないかなあ?」

「熱」

 一口、ピザを咀嚼して呑み込んでから、楪は答える。

「余興って、なに?」

「決闘」

 彼方は答えた。

「別の世界から来たお客さんたちが、退屈しているご様子だ」

「それ、本気を出しちゃっても、いいの?」

「もちろん」

 彼方は、平然とした態度で頷く。

「君たちの実力を、彼らに示してやりたまえ」

「いえー!」

 楪は、食べかけのピザを片手に、もう一方の腕をあげてぶんぶんと振った。

「誰か、うちと決闘してくんないかなあ!

 なんでもあり、どちらかが死んだら終わりって条件で!」

 異世界から来た兵士たちは、戸惑ったような表情で顔を見合わせる。

「どうする?」

「だって、相手は女子どもだぞ」

「だが、本人がやりがっているし」

「あの決闘とやらは、死んでも死なない。

 あそこで死んだおれが断言する」

「ならば、ああ」

「いい……のか?」

「許す」

 シュミセ・セッデスが、鷹揚に頷いた。

「決闘では誰も傷つかぬようだし、なにより、ここは異界だ。

 戦士の誉れもなにも、あったものではないようだしな。

 なにより、このおれが、やつらの実力とやらをこの目で確かめてみたい」

 この発言がきっかけとなって、楪に対戦相手が殺到した。

 楪は、そうした対戦相手を順番に、決闘の場で射殺し続けた。

 図らずも、先に八尾が説明した内容を、実地に証明した形となる。

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― 新着の感想 ―
前話の最後から時間飛びました? 自分の読解力がないだけかもしれない。
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