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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接触篇

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アトォ・フラナの決闘

 接触してからまだ間もないこともあり、彼ら来訪者たちの詳しい背景などは、まだ聞き出せていない。

 とりあえず、一番大事なのは、彼ら二集団は、自分たちの間に起こった紛争を「比較的穏便に」解決する方法を求め、それを目的として儀式とやらをおこない、この場に現れたこと。

 そこで出くわした恭介たちに、「審判者」としての役割を期待していること。

 それくらいしか聞いていないのだが、それでも、そこから派生して、さらにいくつかのことを推測出来た。

 シュミセ・セッデスを代表者とする金属鎧の集団は、一応、支配者であるということはなっているものの、その意志や方針を一方的に被支配者側に押しつけるほどの権力は、持っていない。

 もしも強引な手段に訴えても問題がないのなら、そもそも、こんな儀式に乗っかる必要がない。

 そして、恭介たちに翻訳の魔法をかけた少女が代表する、表向きは「被支配者」とされる革鎧の集団も、決して無力なだけの被害者などではない。

 それは、この世界に転移してきた儀式や翻訳魔法などを、どうやら少女のみが知っていることからも、判然としていた。

 おそらく。

 と、恭介は想像する。

 革鎧の集団は、元の世界では、食糧をはじめとする各種物資の生産を一手に担っており、金属鎧の集団は、それを武力で抑圧して、どうにか支配権を保持している。

 そんな、関係ではないか。

 さらに想像を逞しくすると、革鎧の土地にあとから金属鎧の集団が侵攻してきて、どうにか定着しようとしている過程にある。

 その支配権が盤石になるほどの時間は、まだ経過していない。

 金属鎧の側は、革鎧の集団が本格的に反乱を起こし、自分たちの支配権が危うくなることを恐れている。

 この儀式とやらが成立しているのも、金属鎧側が、表向きの名分さえ立てば、ある程度までならば、革鎧の側に譲歩してもいい。

 おそらくは、そう考えている。

 そうとでも考えなければ、こんな儀式に参加する理由がないのだ。


「こんな茶番につき合っているおれたちが、一番、いい面の皮だよな」

 と、恭介は、そう思う。

 一見、恭介たちプレイヤー側に、なにもメリットがないようにも見えるのだが。

 よく考えると、そうでもない。

 仮に、あの少女が、世界を渡る技術を持っていて、それを他者に教えることも可能であれば。

 元の世界に帰還する、という、プレイヤーたちの多くが望んでいることが、かなり実現に向けて前進することになる。

 そうでなくても、別の世界との交流が、今後も継続可能であれば。

 これもまた、恭介たちプレイヤーにとって、かなりのメリットがある。

 彼方が指摘していたように、農耕その他、低技術でも持続可能な各職種のノウハウを学ぶことが、可能になるかも知れない。

 そうでなくても、あの少女が体現したように、彼らが未知の魔法を知っている可能性は高い。

 つまり、ここで彼らの機嫌を損ねても、プレイヤー側にはデメリットしか生じないのだ。

 こちらにデメリットが生じない限りは、友好的に接するのが、この場では正しい態度になる。

 と、恭介は、そう判断している。


「これまで聞いた状況ですと、こちら側から挑戦するのがいいと思います。

 ええと……」

「アトォ・フラナとお呼びください」

 彼方が、革鎧の代表者らしい少女にシステム画面の使い方を教えている。

「それでは、アトォ様。

 まず、システム画面を呼び出して」

「すていたすおぷん、と、呪文を唱えればいいんですね?

 あ、出ました」

「その調子です。

 慣れれば、無詠唱でもその画面を出せるようになります。

 そこから、決闘の項目をタップ、ええと、指で押して」

「こう、ですか。

 ここから……」

「決闘に参加する者の名前を選択して、人数を決定してください。

 確認されている限り、人数に制限はないようです。

 あ」

「なにか?」

「いえ。

 アトォ様も、決闘に参加なさるのですか?」

「この決闘とは、実際に死傷するものではないのでしょう?」

 アトォはそういって首を少し傾けた。

「なにより、家臣たちが戦いに望むのに、わたくしがそこから逃げていては示しがつきません」

「そう、ですか」

 彼方は、微妙な表情になっている。

 無理もないな。

 と、恭介は思う。

 アトォ・フラナは、少なくとも外見的には、かなりの年少に見える。

 十才を、いくつか超えたくらいか。

 小学校を出たか出ないか、といった年頃の少女が、暴力沙汰の現場に出ることに、抵抗をおぼえるのは仕方がない。

 元の世界での倫理観では、ということだが。

 ただ、彼方としても、強引にいい争ってまで止めるつもりもないようだ。


「まだか?」

 儀式によって森の中に生じた、円形の広場、その向こうの端で、シュミセ・セッデスが叫んだ。

「こちらの準備は整っているぞ!」

 向こう側では、遥がシステム画面の使い方をレクチャーしていた。

「今しばらく、お待ちを!」

 アトォは素早く指を動かし、参戦可能な人物名をすべて決闘に参加させる操作を済ませた。

「出来ました!

 今、そちらに挑戦状をお送りします!」

「おお!

 来たぞ!」

 シュミセ・セッデスは歓声をあげた。

「これで、承諾すればいいのだな!」

 無邪気な反応に見えた。

 実際、彼にしてみれば、新しい玩具を手にいれたようなものなのだろう。

 二集団はその瞬間、決闘空間にその姿を移行する。


「大丈夫かなあ」

 決闘がはじまるとすぐに、彼方がいった。

「大丈夫なんじゃない?」

 恭介は、答える。

「なにも成算がないなら、そもそも儀式をしようなんて思わないだろう」

 シュミセ・セッデス率いる金属鎧の集団の方が全般に体格がよい。

 若者から壮年の、いかにも「歴戦」的な外見をした男たちによって占められていた。

 対して、アトォ・フラナ率いる革鎧の集団は、比較的年かさな男たちによって占められている。

 全般に背が低めで、それだけではなく、手足も、対戦相手と比較して、細かった。

 挙動なども、バラバラに動いているのが丸わかりで、一見して、統率が取れていないようにも見える。

 職業的な軍人、ではなく、おそらく、普段は別の生業に就いている者たちが、急遽集められた感じか。


「いくぞ!」

 シュミセ・セデスは佩刀を引き抜いて号令をかけた。

「者ども、進め!」

 金属鎧の側は、長尺の槍を前方に掲げ、足並みを揃えて整然と前進してくる。

 普段から、訓練を受けている動きだった。

「皆さん」

 アトォ・フラナは、静かに告げた。

「お好きに動いてください」

 次の瞬間、革鎧の集団は、アトォ・フラナを除いて姿を消した。


「ありゃ」

 恭介たちに合流して来た遥が、決闘の様子を確認して、気の抜けた声を出す。

「ステルスモードじゃん」

「決闘に参加出来て、ステータス画面を開けた時点で気づいていたけど」

 恭介は、そう説明する。

「彼らも、おれたちと同じプレイヤーなんだよ。

 ただ、おそらくは、これまで、ステータス画面を開かないまま、ゲームを進めてきた」

「あ!」

 彼方が、大きな声を出す。

「そうか!

 ゲームとかラノベを知らない人たちが、ステータスオープンなんて唱えるはずがないし!」

「野生のプレイヤー、か」

 遥がいった。

「それで、ゲームのシステムを使いこなしているのは、姫様側、と。

 若様の方は、それ以前の、そうしたオプションが着かない場合の訓練しかしてないみたいだし」

「勝負には、ならないだろう」

 恭介はもう一度、決着を予想した。


 恭介の予想通り、シュミセ・セデスの軍は、ごく短時間のうちに瓦解した。

 姿が見えない敵たちに、予想外の方角から立て続けに攻撃を受け、一人また一人と倒され、決闘の場から姿を消していく。

 かろうじて隊列は崩れなかったものの、兵士たちはかなりまばらになり、隙間が目立ってきた。

 そこに、姿が見えない襲撃者たちが、直接、襲うようになる。

 背後や側面から立て続けに襲われ、すぐに、シュミセ・セデスの軍は総崩れになる。

 パニックを起こし、全員が、バラバラの方向に逃げ出したのだ。

「貴様ら、待て!

 待たぬか!」

 シュミセ・セデスは叫んだが、潰走は止まらなかった。

 バラバラに逃げた結果、シュミセ・セデスの軍は直前までよりもよほど早く、効率的にすり潰されていく。

 五分もかからずに、三十人居たシュミセ・セデスの軍は全滅し、シュミセ・セデス自身は決闘のフィールドで完全に孤立した。

「シュミセ・セデス様」

 アトォ・フラナは、そのシュミセ・セデスの直前にまで移動し、声をかける。

「降伏、してくださいますか?」

「どうにもならんな、これは」

 シュミセ・セデスは、そういって両手をあげた。

「お主らを、大きく侮っていたことを認めよう。

 降伏する」

 こうして、アトォ・フラナの決闘は終わった。

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