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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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寅のダンジョン攻略

「次は、罠のダンジョンにいこうか」

 謹慎が解けた途端、恭介はそういい出した。

「丑、だったっけ?

 競合するパーティが少なそうだし、攻略に時間がかかりそうだし」

「時間は、かかるでしょうね」

 遥はいった。

「なんでも、二百メートル進むごとに、なんらかの罠があるとか」

「落とし穴的なのが、多いって聞いている」

 彼方も意見を口にする。

「浮遊魔法を使えば、大半はクリア出来そうな気もするけどね」

 トライデントの三人も、この時点で魔法少女隊から浮遊魔法の使い方を教えて貰い、ある程度は使えるようになっていた。

「でも、競合が少ないって点は、どうだろう?

 あのダンジョン、結構人気あるって聞いているけど」

「そうなのか?」

 恭介が訊ねる。

「罠だらけのダンジョンって、ひたすら面倒臭そうな気がするけど」

「いや、だからさ」

 彼方が説明した。

「クリアを目指すのではなく、あくまでその罠自体が目的で。

 アトラクション感覚、っていうか」

「なるほど」

 恭介は頷いた。

「なら、順番待ちはするわけか」

「別のダンジョンにしない?」

 遥が提案する。

「寅、酉、午のどれか、とか」

「他のパーティが攻略したダンジョンか」

 恭介は意見を述べる。

「別にそっちが先でもいいけど。

 まあ、ダンジョンの情報は豊富にあるしなあ」

 寅のダンジョンは、魔法少女隊が最初に攻略した、虫系のモンスターばかりが出没するダンジョン。

 酉のダンジョンはユニークジョブズが、午のダンジョンは酔狂連が、それぞれ初日に攻略している。

 一度攻略されたダンジョンは、他のパーティもあとに続きやすいらしく、その後にもいくるかのパーティが攻略を完了させていた。

 この三つのダンジョンは、この時点で、

「パーティが最初に攻略完了しやすい、初心者向けダンジョン」

 と呼ばれていた。

「その手のダンジョンに、おれたちが割り込むのもなあ」

 恭介は、正直、あまり乗り気ではなかった。

「他の人たちの、邪魔にならないかな?」

「どのダンジョンも、毎日順番待ちになっているわけでさ」

 遥はいった。

「割り込む、ってことは、ないと思うけど。

 別に、特別扱いされているわけでもないし」

「それに、中に入るポーティによって、モンスターの強さが変動する、みたいな噂もあるしね」

 彼方は、そういい添える。

「他のパーティにとって難易度が低く感じたダンジョンでも、ぼくらが入って同じように感じるかどうかは、わからない」

「それもそうか」

 恭介は納得した。

「順番はともかく、いつかは攻略するわけだしな。

 どれを先にしても、大して変わらないか」

 というわけで、トライデントはまず、寅、酉、午の三ダンジョンの攻略を目標に設定する。


 その日のうちに三人は、市街地の中央広場に移動し、そこで三ダンジョンの様子を確認。

 一番、待機列の短かった寅のダンジョンへと向かう。

「虫のダンジョン、か」

「魔法で蹴散らして進めば、問題はないはず」

「恭介の、奇禍を引き寄せる呪いが発動したりしなければ、ね」

「ちょっと。

 縁起でもないこといわないでよ」

 順番待ちをしながら、三人はそんな会話をして過ごす。

 待機列は短く、待ち始めてから一時間もかからずに三人の番になる。

「一パーティ当たりの滞在時間、短すぎない?」

 遥が疑問の声をあげる。

「中に入ってみれば、なにが待っているのかわかるよ」

 恭介はそう答えた。

「否が応でも」

 三人は扉にてのひらを押しつけ、ダンジョンの中に入る。


「なるほど」

 恭介は周囲の光景を確認して頷く。

「確かに、虫だらけだな」

 初日に、風紀委員がこのダンジョンに入って、即座に出て来たのだった。

 幸いなことに、この三人は風紀委員の新城ほど、虫に嫌悪感を抱いている者はいなかった。

「とはいえ、あまり愉快な光景というわけでもないんだけどね」

 遥がいった。

「キョウちゃん。

 一度、全部焼き払っちゃって」

「出来るけど」

 恭介は、そう応じる。

「酸素とか、大丈夫かな?」

 自分の魔法が原因で一酸化炭素中毒、とか、間抜けにもほどがある。

「大丈夫なはず」

 彼方がいった。

「ダンジョンは広大だし、ちょっとやそっとじゃ、どうにもならないよ。

 これまでも、酸欠で放り出されたプレイヤーとか、居ないはずだし」

「それじゃあ、目につくところ、片っ端から焼きながら進むか」

 恭介はそういって、倉庫から杖を取り出す。


 進捗状況は円滑だった。

 円滑すぎた、というべきか。

 これまでと比較すると、だが。

「これ、みんな早くに出て来たの」

 遥がいった。

「このダンジョン、どこでも切りあげられるからだね。

 多分、だけど」

「モンスターは、こちらに襲いかかってくるけど、初歩的な魔法をおぼえていれば、楽々対処可能だしねえ」

 彼方が、そう応える。

「自分のペースで進めるし、さして苦戦をするところもない、っていうか」

「あとは、地形だな」

 恭介が、そういう。

「ほら、出て来た。

 以前にも見た、階層差だ」

 この三人は、この寅のダンジョンに、一度挑んですぐに出て来ている。

 高さ数十メートルという高低差がダンジョン内部にあり、以前の三人はなんの準備もしていなかったので、すぐに引き返していた。

 だが、今回は、浮遊魔法をおぼえているので、この手の高低差によってゆくてを遮られるということもなかった。

 まず、下の階層を恭介が火魔法で一掃し、その上で、三人が浮遊魔法を使って漂うようにして、下に降りる。

「あっけない」

 遥が、そういう。

「前に引き返したのは、なんだったのか」

「浮遊魔法がもっとポピュラーになれば」

 彼方がいった。

「ますます難易度がさがりそうだよね、このダンジョン」

「この調子で、先に進むぞ」

 恭介は杖を掲げながら、そう続けた。

「出来れば今日中に、攻略完了したい」


 そんな調子で、特に困難に直面するということもなく、三人はダンジョンを進んでいく。

 何度か階層をくだり、四時間ほどをかけて深層へと進み、見覚えのある大きな扉がある場所まで出た。

「この扉は、どのダンジョンも共通なんだな」

 恭介がいった。

「魔法少女隊の四人は、ここのマスターはオオムカデとかいっていたっけ?

 準備が出来たら、両側から開けて。

 おれは、まず大きな魔法をぶち込む」

「了解」

「はいはーい」

 彼方と遥はほぼ同時に返答し、両開き扉の、左右に取りついた。

 何度か同じようなことをしてきているので、三人とも動作が手慣れている。

「いつでも開けていいよ」

 恭介が杖を掲げながらいった。

「そんじゃあ」

「いっせーの、せ。

 と」


 これまでの行程と同じく、寅のダンジョンマスター戦も、特に苦労はしなかった。

 強いていえば、生命力が強く、なかなか倒れないあたりが苦労といえば苦労だったが。

 それは、とにかく時間さえかければ解決する。

 それよりも、恭介が立て続けに大がかりな火魔法を連発していたおかげで、反撃らしい反撃が来る様子もなく、他の二人が暇を持て余していた。

 仕方がないから、遥と彼方も杖を持って、ダンジョンマスターに適当な魔法を連発する。

 二人とも、恭介ほど極端に大きな効果は望めないものの、一通りの攻撃魔法は使えた。

「この追加攻撃、意味あるのかなあ?」

「さあね」

 遥の疑問に、彼方が答える。

「多少の時短には、なっているんじゃないかなあ」

 三人がかりの魔法攻撃を開始して一時間以上経過してから、ようやく寅のダンジョンマスターは力尽きる。


『寅のダンジョンが攻略されました』


 毎度おなじみのアナウンスが、今回も三人の脳裏に響いた。

「出るか」

「そうだねー」

「戦利品の確認なんかは、拠点に戻ってからにしよう」

 これまでで一番、「何事もなかった」攻略ではないのか。

 今回はとにかく、本当に楽に攻略が完了した。

 という、感触がある。

「なんにせよ」

 恭介が、そんなことをいった。

「今回は、呪いが発動しなかったようで、よかった」


 これで、トライデントが攻略したダンジョンは八つめ。

 未攻略のダンジョンは、残すところ四つとなる。

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