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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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謹慎の終わり

 恭介は考える。

 ダンジョンマスターは、どうも、別の時空、異空間の存在がコピーされたものである、らしい。

 その際、本物そのまま、というわけにはいかないらしく、諸々、本来の性質などがいくらか変質している。

 ドラゴンいわく、

「劣化コピー」

 ととのことであった。

 が、それにしたって、レベルアップやスキルで多少、強くなったくらいのティーンエイジャーが戦う相手としてとしては、荷が勝ち過ぎている。

 それはともかく。

「まず、おれたちが来た世界。

 それに、今、おれたちが居るこの世界」

 恭介は、口に出して、指折り数えはじめる。

「各ダンジョンマスターが実在する世界が、十二カ所。

 いったい、いくつあるんだろうな、世界とやらは」

 おそらく、無数に存在するのだろうな。

 とは、思う。

 その無数にある世界の中で、なんで恭介たちの世界を選択し、比較的無力な高校生をここまで連れてきたのか。

 単に強い存在が必要なら、屈強な職業軍人とか本物の魔法使いとか、もっと適任がいくらでも居そうに思うのだが。

「弱い存在を、強い存在に鍛えること自体に、意味があるとか?」

 そんな想定を、口に出してみる。

 そしてすぐに、

「いや、それはないな」

 と、自分で否定した。

 いくらなんでも、効率が悪すぎる。

 この場を仕組んだ何者かは、恭介たちプレイヤーを鍛えている。

 そう考えるのは間違えで、別の、なんらかの理由があるのだろうか?

「……わかんねーな」

 口に出して、そう結論する。

 今の時点では、判断材料が少な過ぎる。

 あるいは、神様のようなちょー強力な存在が、気まぐれや思いつきでこんな場を設けているのかも知れない。

 そうだとすれば、その渦中にある恭介たちとしては、そんな気まぐれに殺されないように、せいぜい用心深く過ごすしかなくなる。

 いずれにせよ、こんな場を用意する能力があるだけで、相手は恭介たちとは根本から違った原理で動き、とんでもない力を駆使する存在であることだけは確実だった。

 だとしたら、

「その動機なんか、想像するだけ無駄か」

 と、恭介は思う。

 どうも、家の中で寝てばかりだと、妙な方向にばかり考えが向かっていくようだ。

 本でも読むか。

 と、恭介は思い、ベッドのそばに放置してあった読みかけの本を手に取った。

 せっかく、時間が空いたのだから。

 という理由で、恭介はこのところ、マーケットで購入した本を何冊も読んでいる。

 恭介は、同年配の平均と比較してもかなり本を読んでいる方であったが、今、読んでいるジャンルはこれまで本気で読み込んだことがなかった。

 なんというか、イメージ的な安易な作劇である作品が多そうな気がして、これまで手が伸びなかったのだ。

「娯楽作品としてはそこそこ、だけど、今、この場の参考にはならなそうなのばかりだよな」

 本のページに眼を走らせながら、恭介は呟く。

 ここ数日、家の中で暇を持て余した恭介が読んでいるのは、いわゆるWEB発の「異世界物」というジャンルのフィクションになる。

 実際に読んでみると、確かに安易な造作の作品はあるのだが、それにしてもある程度、評価されている作品は、しっかり相応の工夫を盛り込んでいるように思えた。

 フィクション、娯楽作品としては、それなりに楽しめる。

 しかし。

「今の状況には、なんの足しにもならんな」

 という、結論になる。

 そうした作品は、かなり初期にその作品が目指すところ、目的地が提示され、その目標に至るまでの困難ないしは過程をつらつらと記述していく構造を持つものが多かった。

 しかし恭介たちは、別に、ここでなにをしろと目的を与えられているわけではない。

 マーケットを含むシステムと、それに状況を与えられただけであり、

「なにをしろ」

 と明確な目的は、与えられてはいない。

 まあ、元の世界でも、似たようなものだったけど。

 そうした目的は、個々人が自分の価値観に従って設定するもの、なのだろう。

 面倒臭いな。

 と、心底、そう思う。

 元の世界では、前提として、大人たちが作り維持している社会が、まがりなりにも機能していた。

 恭介たち高校生は、そこへあとから参加する新参者として、少なくとも立場は明確だった。

 しかし、ここでは。

 実質的に、恭介たちが自分たちの力で、一から社会を作らなければならない。

 今のところ、緩い分業体制がようやく形成されつつある段階になる。

 いずれにせよ。

「たった百五十人で、どうしろと」

 結局、そこになるのだ。

 これしか人数が居ないとなると、どう考えてもまともな社会は構成出来ない。

 労働力は、機会や人形遣いなどのスキルを駆使すれば、どうにか補填出来るのかも知れないが。

 圧倒的に、多様性が足りなくなるのだ。

 出来るのは、せいぜい少数の人間による半強制的な支配体制、だろう。

 人数が少なくなれば、どうしたって、右へならえで、発言力の強い人間の影響が強くなりすぎる。

 ことによると、いや、現在の延長でいうと、トライデントがその「発言力の強い人間」の役割を果たす可能性は、かなり大きいように見えた。

 恭介にいわせれば、それは、到底健全な社会とはいえない。

 恭介たちをこの世界に連れてきた何者かも、まさか、そんなつまらないことをさせたくて、こんな状況を作ったわけではないだろうに。

 だとすれば。

 やつらは、なにを目的にしているのか。

 恭介の思考は、そんなところを周回し続けている。

 まったく。

 恭介は、自嘲する。

 下手な考え、というやつだ。

 引きこもってばかりいると、どうにも思考が硬直化する。


 結局、恭介たちが謹慎を強いられた期間は、一週間ほどだった。

 それを長いとみるか短いとみるかは、感じ方によって変わるのだろうが、恭介はかなり長く感じた。

「いや、そう思ってくれないと、また無茶な真似をするでしょ」

 とは、遥のいい分である。

 恭介は、これに反論する言葉を思いつかなかった。

 無茶は、確かにしている。

 しかしそれは、どうしても必要な、「必要最低限の無茶」だった。

 とはいえ、これは恭介の立場からの言葉であり、それが遥や彼方に届かないからこそ、今回の謹慎処分もあったわけだが。

 こればかりは、価値観の相違というしかない。

 ともあれ、恭介は一週間ぶりに家の外に出た。

 その一週間の間に、Sソードマン、坂又どすこいズ、風紀委員の三パーティは一応、訓練を終えている。

 しかし、この三パーティは今後も拠点に出入りをして、交替で次に合宿所を訪れるパーティの訓練を手伝ってくれることになっていた。

 これに加えて、魔法少女隊もほぼ恒常的に訓練を手伝ってくれているので、トライデントの負担は当初想定していたよりもずっと、軽減される形になる。

 トライデントには、訓練などで拘束するより、ダンジョン攻略を進めて貰いたい。

 そう考えた生徒会側が、関係各所に掛け合った結果でもあった。

 どうも、トライデントというパーティは、戦績に歴然と差がある他のパーティからはかなり恐れられているらしく、直接指導にあたるのは差し障りがあるとか、なんとか。

 それは別に恭介たち三人に責任があるわけではなく、強いていえば、その戦績や実戦の際の目撃談、決闘のログなどが培った世間的なイメージのせい、なのだが。

 恭介たちにいわせれば、

「知らんがな」

 ということになる。

 いずれにせよ、トライデントの手間が大幅に軽減される結果となり、実際的なことをいうのなら、かなり助かった。

 心理的には、釈然としないものも、多々、感じるのだが。

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