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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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風紀委員VSSソードマン

 トライデントがこれまでに攻略したのは、戌、子、巳、辰、未、申、亥の、七カ所のダンジョンになる。

 未攻略のダンジョンは、卯、寅、酉、午、丑の五カ所。

 ただし、このうち、寅、酉、午の三カ所は、すでに他のパーティによって攻略済みであり、どうやら今のトライデントでも問題なく攻略出来そうであった。

 卯のダンジョンは、例によって水に満たされており、丑のダンジョンは罠まみれで、どちらもモンスターとの戦闘能力以外の要素が問われることになる。

 とりあえず、この時点で、トライデントは十二カ所あるうち、半分以上を攻略していた。

 この実績は、全パーティ中でも最大数になる。


「だからまあ、別に焦らなくてもいいよ」

 というのが、宙野姉弟の、共通した見解になる。

「焦りすぎているかなあ、おれ」

 恭介は、ベッドの上でそういった。

「たまたま、攻略出来そうな条件の場所があったから、挑んでみただけなんだが」

「それは、それでいいとして」

 遥は、強引に会話を閉める。

「キョウちゃんは、何日か、自宅で謹慎してて。

 いくら回復術があるからっていっても、一回でここまでやられるのは、ちょっとひどい。

 少しは、休養しなけりゃ駄目だよ」

 というわけで、恭介はしばらく自宅から出られないことになった。

 まあ、いいか。

 と、恭介は思う。

 外に出られないなら出られないで、やりたいことはあるし。


 訓練の方は、佳境に入っていた。

 基礎訓練では教えるべきことがほとんどなくなり、「あとは自主練でどうにかしろ」といった段階に入っている。

 Sソードマン以外の二パーティは、もともと体力的には問題がなかった。

 あとは、具体的な戦術に合わせて、細かい調整や武器、装備類の刷新などを済ませ、あとは実戦に近い演習を続けるくらいしか、この場でやるべきことがない。

「というか」

 遥は、そんな風にいう。

「これからどういう戦いをやらされるのか、まったく見当がつかないからね。

 ぶっちゃけ、具体的な対策も、立てようがない、っていうか」

「それでも、負けにくい戦い方はあるわけで」

 彼方は、そう受ける。

「地味でも、それをやっていくしかないよ」

 というわけで、例によって決闘デュエルシステムを利用しての実戦形式演習だった。

 いきなり魔法少女隊や宙野姉弟をぶつけるわけにはいかないので、三パーティで組み合わせを作って、決闘して貰っている。

 風紀委員と坂又どすこいズは、多少、得意分野は異なるものの、ともに「ほぼ同質のスキル構成を持つ人員によるパーティ」という点では、似た性質を持っている。

 結果、その二パーティとは異なる性質を持つSソードマンの出番が、どうしても増えてしまう。

 こうした決闘は、やり過ぎてもあまり効果がないので、一日に一度に回数制限を課していたが、三パーティの中で、Sソードマンが連日決闘している形になった。

 Sソードマンは、異なるジョブによる四人パーティであり、ここ数日の訓練により、基礎的な能力とそれぞれの職能に合わせた戦い方を磨いて来た。

 今は、その向上させた性能を十全に活かすべく、パーティ内での分業やコンビネーションのやり方を学んでいる最中になる。

 この拠点に来た当時のSソードマンは、各人が連携などまるで考えず、バラバラに動いていた。

 パーティというよりは、個人プレイに走るプレーヤーの集団でしかなく、

「よくここまで、レベルをあげられたな」

 と呆れるくらいに連携が出来ていなかった。

 四人のうち、女子三人の仲がよく、割と意思の疎通を取りながら行動していたのが幸いしていたが、ありたいにいえば、

「ひどい」

 仕上がりといえた。

 ここ数日、基礎体力訓練やら魔法少女隊との決闘を経て、考えるところがあったらしく、目に見えて、マシにはなって来ているのだが。

「他の二パーティが最初から割と連携が取れていたから、なおさら、悪目立ちしていたんだよな」

 遥は、そう評する。

「今では、かなり改善しているよ」

 彼方は、そう応じる。

「あのパーティ、別に、個々人の能力が低いわけではないからね。

 その能力を、活かしきっていなかっただけで」

 今、Sソードマンは風紀委員と決闘をおこなっている。

 人数で勝る風紀委員がSソードマンを包囲しようとしたが、その輪の中から内海がすでに飛び出していた。

 Sソードマンは、例によって奥村を除く三人は最初からステルスモードになっている。

 しかし、風紀委員も何人かは斥候職を経験しており、ステルスモードになった人員の現在地は、おおよそ把握していた。

 その、はずである。

「ただ、その察知も、慣れていないと認識が遅れるからなあ」

 察知などのスキルによって得られる感覚は、視覚や聴覚などとは違い、生来ある感覚ではない。

 スキル経由で得る情報を正しく、速やかに認識出来るかどうかは、個人差によることが大きかった。

 経験と、それに、どこまで切実にその情報を欲しているかによって、正確に認識するまで、かなり時間差が出るのだ。

 一言でいうと、

「普段から慣れるように心がけていないと、使いこなすことは難しい」

 ということになる。

 風紀委員の察知持ちは、この時点では、熟練するところまで届いていないようだ。

 実際、包囲の外に出た内海の現在地を、見失っているように見える。

「こうなると、翻弄されるね」

 彼方がいった。

 包囲網の中に残った三人は、ダメージディーラーの奥村と、防御力の高い美濃、それに、遠距離攻撃を得意とする楪。

 この三人が連携して抵抗すると、多少の人数差があったとしても、すぐに崩すことは出来ない。

 その上、現在地が不明で移動力の高い内海が包囲の外に居るとなると、風紀委員も油断が出来ない状況だった。

「風紀委員の子たち、能力は高いんだけど、アドリブに弱いからなあ」

 遥は、そういった。

「これが坂又さんたちだったら、もう少し、粘れるんだろうけど」

 遥も、今回は、風紀委員の未来に悲観的であるようだ。

 案の定、背後のどこからか狙撃をされ、風紀委員の何名かが足を痛めている。

 すぐに回復術をかけられているようだったが、包囲網を狭める動きは止まっていた。

 すると、包囲網の中から、Sソードマンの三人が反攻を開始する。

 足を止めた風紀委員の一人に攻撃が集中し、すぐに風紀委員の人数が一人減った。

 包囲網に穴が空き、その空間を埋めようと、穴の左右に居た風紀委員が慌てて移動しはじめる。

 すると、また包囲網外の背後から、また足を狙った攻撃が来る。

 背後から攻撃をした内海は、今では、ZAPガンを使いこなすようになっている。

 風紀委員も装備を刷新し、対魔法耐性も以前よりはずっと増しているのだが、無属性魔法はそうした魔法耐性にあまり影響されない性質があった。

 さらにいえば、通常の銃火器とは違い、音なども発しないため、攻撃者の現在地がわかりにくいという性質もある。

 とはいえ、その魔法耐性のおかげで、何発か当たってもすぐに戦闘不能になるわけではない。

 ただ、程度の差こそあれ、負傷はするので、回復するための時間は必要となる。

 実際の戦闘においては、回復を待つ間、連携が不可能となる。

 Sソードマンは、そうした性質をうまく利用して、風紀委員を個別撃破している形だった。

 結果は、見えたな。

 と、宙野姉弟は、二人して思っている。

 おそらくは、だが。

 風紀委員は、ここから逆転する手段を、持っていない。

「相打ち覚悟で、包囲している三人を順番に片付けていけば、そのまま押しつぶして勝てる可能性もあったんだけどね」

 遥は、そう呟いた。

「新城ちゃん、いい子なんだけど、そういう思い切りはない方だからなあ」

 基本的な能力が高い風紀委員が、同等か、同等以上の能力を持つ相手に、なかなか勝ちきれない理由は、はっきりしている。

 リーダーの新城が、小を捨てて大を取る、戦略的な思考をよしとしないせいだった。

 全員で戦い、全員で勝とうとする。

 これは、短所といえば短所であったが。

「そういいうパーティが、ひとつくらいはあってもいいかな」

 と、遥個人は、思っている。

 なにも、すべてのパーティが、同質の存在である必要はない。

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