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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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ゴツい鎧、居合い、魔力弓

 恭介が左内に確認をしてから、内海は楪に肩を貸してもらって、よたよたとした足取りで、二人して女子寮の方に歩いていった。

 それと入れ替わりに、三人の人影が射撃場の方に向かって来る。

 三人、ではあったが、より正確にいうのなら、二人といかつい一人、ということなるのかも知れない。

「どうしたの、その格好」

 三人が近くまで来たところで、遥が問いかけた。

「消去法でいうと、中に入っているのは美濃ちゃんだよね?」

「美濃でぇーす」

 そういっていかついのが、両手でピースをしてくれた。

「酔狂連で、これを勧められましたぁー」

 身長二メートルを超えるゴツい全身鎧の中から、ぐぐもった声が聞こえてくる。

「鎧というより、ロボット。

 いや、パワードスーツっぽい外見だな」

 恭介は、それを見た感想を簡潔に述べる。

「実際、いくらかはパワーサポート機能もあるって」

 彼方が、説明をしてくれる。

「バッテリーがあまり保たないから、普段は機能オフしているそうだけど」

「連中、どさぐさに紛れてこんな趣味なものを作っていたのか」

「どさぐさに紛れて、って。

 趣味だとは思うけど、これはこれでニーズがあるんじゃないかな?

 それに、装甲とか甲冑関係だけでも、相当数のバリエーションを用意しているそうだし。

 これも、あくまでそのうちの一種類、ってことなんでしょ」

「これ、防御力は大丈夫なのか?」

「戦車には劣るけど、防弾リムジンよりはよほど壊れにくい。

 だ、そうだよ」

「その比較が、よくわからない」

「実は、ぼくもそう」

「ねえ、中の人。

 美濃さん」

 ぐだぐだと会話を続ける男子勢には構わず、遥は、ゴツい全身鎧に語りかける。

「それ、どう見ても可愛くは見えないんだけど。

 あんたは、それでもいいの?」

「えー。

 これ、格好いいじゃないですかぁ」

 美濃は、そう答えて全身鎧を身震いさせた。

「なにより、この中、意外に快適なんですよ?

 空調が効いていて」

「そうか、そうか」

 遥は、頷いた。

「それでは、その格好のまま、演習場の外周を走って来て」

「ええ?」

 ゴツい全身甲冑は、驚きの声をあげる。

「あんな広い場所を、一周ですか?」

「一周ではないから」

 遥はにこやかに笑って訂正した。

「体力が切れる限界まで、走り続けて。

 空調が効いているその中なら、生身よりは長く走れるだろうし」


「他の二人はどうしたの?」

「今、休憩中」

 彼方の問いに、恭介が答えている。

「内海さんが全身汗まみれになっていたんで、楪さんにつき添って貰ってシャワーを浴びにいってる」

「ああ。

 ねーちゃん、体育会系だからなあ」

「で、そっちの男子は、目当ての装備は揃えられたの?」

 遥は、外野の雑音を気にせず、今度は奥村に語りかける。

「ああ」

 奥村は頷いた。

「なんとか、な。

 予備の武器も含めて、結構な散財になったが」

「ポイントなんて、あとでいくらでも稼げるでしょ」

 遥はいった。

「どうする?

 あんたも走る?

 それとも、居合いとかの練習でもする」

「居合いの練習を、したいな」

 奥村はいった。

「思えば、このスキルはこれまで、ろくに使う機会もなかった」

「そう」

 遥は頷く。

「で、どっちが相手をする?」

「そりゃ、彼方だろう」

 恭介が即答した。

「おれとハルねーは、紙装甲だし。

 攻撃を避けてたら、練習にはならないし」

「ということで、彼方、よろしく」

「はいはい」

 彼方は、素直に頷いてから、自分の倉庫から巨大な盾を取り出した。

「それでは、奥村さん。

 向こうで、少し練習、してみますか」


 しばらく、奥村の攻撃を、盾を構えた彼方が受け止めていた。

「どんな感じ?」

「普通の攻撃より、居合いの方がかなり強い」

 しばらくして、恭介が訊ねると、彼方は答える。

「体感で倍くらい、威力が違うかな」

「平然と、受け止めているんじゃねえ」

 奥村が、そういう。

「これ、結構疲れるんだぞ」

 確かに奥村は、かなり汗をかいているようだ。

「それ、連撃って出来るのかな?」

 恭介がいった。

「あと、実戦で使う想定なら、様々な体勢から、いつでも出せるようにしておいた方がいい」

「お前」

 流石に足を止めて、奥村は恭介を睨む。

「これ、疲れるって、いってるだろ」

「だから、慣れてください」

 恭介は涼しい顔で答えた。

「出し惜しみしているうちに全滅したら、どうするんですか?

 いつでも、どんな時でも出せるようになってはじめて、実用技になるんです」

「簡単に、いってくれるな」

 絞り出すように、奥村がいった。

「お前のチート弓じゃねーんだぞ」

「チートなのは、弓ではなく恭介自身、なんだけどね」

 彼方が、余計なことをいう。

「あの弓、他の人が使って、あんなに極端な威力は出ないんですよ」

 そういわれた奥村は、一瞬、硬直した。

「……そう、なのか?」

「ええ、まあ」

 恭介は、あっさりと頷く。

「元はといえば酔狂連が作った試作品で、作った本人もあの威力に驚いていたくらいですから」

 事実は事実なので、仕方がない。

 そういう風な、淡々とした口調だった。

「なんでも、魔法の効果には、かなりの個人差があるそうで」

 恭介は、そう続けた。

「お疑いなら、一度、この射撃場であの弓を使ってみますか?」

「疑うわけではないが、納得がいかない」

 奥村はいった。

「一度、試させて貰えるか?」


「で、今度はなにしてるの?」

 帰って来てそうそう、楪が訊ねて来る。

「キョウちゃんの弓、奥村が試してみるって」

 遥が、簡潔に説明した。

「あの、ちょー強力なのを?」

 楪は、ドン引きしている。

「あんなのに使わせちゃって、大丈夫なんすか?」

「大丈夫、な、はずなんだけどね」

 彼方がいった。

「あの弓、特注とかじゃあなくて、普通の魔力弓だから。

 他の人が使っても、たいした威力にはならないはず」

「ふぇ?」

 楪の顔が、驚きに歪む。

「そ、そうなんですか?」

「おそらく、武器関係だけではないと思うけど」

 彼方は、説明を続けた。

「魔力を使うアイテムの威力は、どうも属人性が強いらしいんだ。

 そう、説明されている」

「なに?

 今度はなにやってんの?」

 楪よりも少し遅れて来た内海が、楪に説明を求めた。

「うちのリーダーが」

 うんぬん、と、楪がたった今聞いたばかりの情報を、かいつまんで内海に伝える。


「ところで、これまで、弓を使った経験は?」

「ない。

 皆無だ」

 射撃場に立った恭介と奥村は、そんな会話をしている。

「まあ、大丈夫かな?

 おれも、ぶっつけ本番だったし」

 短く考えた末、恭介は、そう結論する。

 少なくとも、大爆発とかはしないだろう。

「まあ、見よう見まねで、引いてみてください」

 何度か使ってみれば、奥村も納得するだろう。

「そうする」

 奥村は軽く頷いて、恭介から渡された弓を標的に向けて引く。

「思ったよりも、軽いな」

「質量ゼロの魔力を飛ばす弓、ですから」

「そんなもんか」

 そのまま、弦を放す。

 弓は戻ったが、遠くの標的に変化は見られなかった。

「外れた、のかな?」

 恭介は、首を傾げる。

「いや、今のは、空打ちだと思う」

 奥村はいった。

「魔力というものを込めずに、そのまま指を放しただけだ。

 というか、魔力を込めるというのが、よくわからん」

「ああ。

 はいはい」

 恭介は、そういって頷く。

「ちなみに、奥村さん。

 これまで、魔法を使った経験は?」

「ほとんど、ない」

 奥村は断言した。

「必要に迫られた時に、何度かあるだけだ」

「なるほど」

 恭介は、頷く。

 それでは、

「魔力を込める」

 といわれても、わからないか。

「あー、もう!」

 楪が、割り込んできた。

「リーダー!

 なにやってんの!

 やるなら、ちゃんとやってよ!

 その弓、貸してみて!」

「あ、いや」

 奥村が、助けを求めるように、顔を恭介の方に向ける。

「いいですよ」

 恭介はいった。

「渡しても」

「やりぃ!」

 楪は、奥村からひったくるようにして弓を奪うと、そのまま、標的に向けて弓を引く。

 なかなか、様になっているな。

 その姿勢を見て、恭介は、そう思った。

 少し間をおいて、楪は弦を放した。

 ぼん、と、小さな音を立てて、標的の遥かに手前に、土埃が起きた。

「ざっと見、飛距離は三十メートルくらい、かなあ」

 遥が、目測して、そう述べる。

「魔力の不足か、弓を引く力が弱かったのか。

 その両方か。

 とにかく、楪ちゃんだとその弓は扱えないってことだね」

 そのあと、内海も魔力弓を試してみる。

 楪の土埃が起きた地点よりも、遥かに手前に土埃が起こった。

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