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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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不都合な予測

 横島会計は、ホワイトボードに書き込みをしている。

 小橋書記は、ノートパソコンを開いてひたすらキーを叩いている。

 常陸庶務は、複数のビデオカメラを三脚にセットして、この光景を記録している。

 生徒会の人たち、仕事しているなあ。

 恭介は、そんなことを考えている。


「そりゃ、使えるものはなんでも使うっしょ」

 楪の発言は、続いていた。

「能力的に不利なのは仕方がない。

 それ自体は変えられないけど、それ以外の部分でなら、フォロー出来る。

 レベルとか、スキルとか、装備とか。

 それに、人間関係なんかも、必要とあれば利用する。

 それって、悪いことなん?」

「いや、それこそが正解だと思うよ」

 彼方が、頷いてみせる。

「あくまで、この場では、ってことだけど。

 まあ、他のプレイヤーを騙したり陥れたりすると、あとで必然的に報復とかしっぺ返しを食らうから。

 その辺だけは、気をつけて欲しいかな」

「そんなん、当然だし」

 楪は、そう応じた。

「うちら、これでもうまくやっている方だと思う」

 そうなんだろうな。

 と、恭介も、思った。

 この楪をはじめとするSソードマンの女子三人は、その辺の社会的な配慮に関しては、恭介などよりもよほど手慣れているし達者、なのだろう。

 いかにも社交的な、陽キャという感じがする。


「Sソードマンの、特に女性の方、三人の課題は、ですね」

 彼方が、律儀にも本題を続けようとしている。

「決定打に欠ける。

 っていうのが、一番大きいかなあ、と。

 三人とも、おそらくはなんらかの上位職であると推測しているんですけど。

 それにしては、その強みを活かしきっていない」

「あー!

 それそれ!」

 楪が、大きな声を出した。

「一番、訊きたかったところ!

 わたしら、上位職になったんだけど、なんでそんなに強くないの?」

「どう思う?」

 ここで彼方に、水を向けられた。

「恭介」

「推測でいいのなら」

 恭介はいった。

「多分、だけど。

 上位職の固有ジョブとか、いろいろ試して性能をきちんと把握してないでしょ?」

「ああ、わかるかー」

 悪びれる様子もなく、楪はそういって頭を掻く。

「うちら、何日か前に宝玉を手に入れて、転職したばかりなんよね。

 性能の確認とか、まだこれから、っていうか」

「まあ、使いこなす前の段階、っていうことですね」

 彼方は、ばっさりとそう結論した。

「珍しいジョブとかスキルは、個人情報に属する内容になると思うので、この場では口外しないでください。

 あとで、匿名でwikiなどに書き込む程度なら、問題はないと思いますが。

 こういう公開の場でやりとりするには、ちょっと微妙な内容過ぎるんで」

「はーい」

 楪は、素直に頷く。

「あとで改めて、相談しまーす」

 相談に来るのは、既定路線なのか。

 恭介は、心の中で突っ込んだ。

 それが当然と思えるあたりが、陽キャなのだろうな。

 よくも悪くも、自己中心的。

 それが、悪いことだとはまったく思っていない。

「ねえ、キョウちゃん」

 小声で、遥が恭介に訊ねる。

「あの子、どう思う?」

「邪気はないけど、自己中心的」

 恭介は、小声で即答する。

「悪い人ではないと思うけど、こちらから積極的に関わりたくもないかな」

「そう」

 遥は、小さく頷く。

「キョウちゃんから見ると、そういうことになるのか」


 その他、細々とした質疑応答を経て、今回の決闘における反省会は終了した。

「さて、それでは」

 恭介たちが立ち去る前に、小名木川会長がすかさず声をかけてくる。

「現状と今後について、現時点での、お前さんたちの意見を聞いておきたい」

「それ、やらなけりゃ駄目ですか?」

 恭介が、実に嫌そうな表情になった。

「そんなに変わった意見、いえそうにないんですけど。

 会長だってさっき、ダンジョン攻略が終わるのも時間の問題だ、みたいにいっていたじゃないですか」

「その意見は、今も変わっていないんだが」

 小名木川会長は、そう続ける。

「問題は、どうなれば終わるのか。

 それに、終わった後に、なにがはじまるのか、だろう?

 お前さんなら、なにか予想はしているんじゃないのか?」

「やだなあ」

 恭介はいった。

「予想というか、妄想というか。

 とにかく、なんの根拠もない妄言ならば、どうにか口に出来ますが。

 正直、今の時点でそんなことをいっても、あまり意味があるとも思いません」

「それで、構わない」

 小名木川会長は、即答した。

「こっちは、指標になりそうなものがまったくなくって、途方に暮れているんだ。

 多少、不確実なもんでも、まるでないよりはマシだ」

「はぁ」

 恭介は、露骨に大きなため息をついて見せる。

「それでは、これから披露する内容には、たいした根拠はないっていう前提を、くれぐれも忘れないでください。

 最初に、ええと。

 ダンジョン攻略が、いつ終わるか、でしたよね。

 判断材料がほとんどないんで、どうなれば終わると断言することは出来ません。

 これは、以前とまるで同じ。

 ただ、攻略が終了するタイミングについて、いくつかのパターンを想像することは出来ます」

「続けろ」

「終了条件、その一。

 同一のパーティが、すべてのダンジョン攻略を終えた時点。

 終了条件、その二。

 複数の、たとえば、五とか十とか、切りのいい数のパーティが、すべてのダンジョン攻略を終えた時点。

 終了条件、その三。

 すべてのプレイヤーが、すべてのダンジョン攻略を、体験した時点」

「おい!」

 小名木川会長は、最後の条件を聞いた途端、大きな声をあげる。

「それが、達成不可能だとは思わないが。

 それでも、その条件を達成するには、まだまだ途方もない時間がかかるんじゃないのか?」

「かかるでしょうね」

 恭介は、あっさりと頷く。

「そもそも、このダンジョンは。

 いったい、なんのために設置、公開されていると、会長は思いますか?」

「それは、その」

 小名木川会長は、口ごもる。

「正直にいうと、まったく予想がつかないな」

「あくまで、おれの予想になりますが」

 恭介は、そう前置きしてから、続ける。

「ダンジョンは、プレイヤーをレベルアップして、強くするための方便でしかないと思います。

 だから、終了条件について、予想してもあまり意味がない。

 プレイヤーがある程度強くなったら。

 それは、平均値なのか、それとも、何十人がレベルいくつに達したとか、具体的な指針があるのか、こちらの立場としてはなにもわかりませんが。

 この状況を作ったやつらの意図するところまで、プレイヤーたちが育てば。

 ダンジョンが終わろうが、存続しようが、次のフェーズがはじまると思っています」

「次のフェーズ、とは、なんだ?」

 小名木川会長は、重ねて質問をした。

「わかりませんね。

 判断材料が、まったくありませんから」

 恭介は、あっさり首を横に振る。

「ただ、やつらのやり口をこれまで見てきて、そういうことになるんじゃないかと、予測しているだけです。

 生徒会をはじめから組織して、全プレイヤーが生き残るように仕向ける。

 同じように、ユニークジョブ聖女という安全装置を設定する。

 チュートリアル期間を設けて、この世界のシステムに馴染ませる。

 そういう段階を経たあとに、あのダンジョンが出て来たわけです。

 やつらは、全プレイヤーを生かしたまま、強い存在として育てたいのではないか?

 というのが、おれの予測になります」

「強いプレイヤーを大勢育てて、そのあとはどうなる?」

「さあね」

 恭介は、あっさりと首を横に振った。

「さっきいった、次のフェーズが、実際に何になるのか。

 今のおれには、まったく予想がつきません。

 あるいは、次のフェーズだけではまだ学習内容が揃わなくて、本当の本番は、まだいくつかのフェーズを経たあとに来るのかも知れませんが。

 とにかく、やつらにはなにかの目的があって、おれたち全員を強い存在に鍛えようとしているのではないか。

 というのが、おれの考える予測です。

 もちろん、こんな予測、外れていた方がいい。

 いつか、誰が全ダンジョンを制覇して、その賞品として、全プレイヤーを元の世界に帰すことを望み、あっさりとおれたちは元の世界に戻れるのかも知れない。

 むしろ、未来図としては、その方がずっといいでしょう。

 めでたしめでたし、だ。

 ただ、おれ自身は、そこまで都合のいい未来を、信じることは出来ないというだけです」


 周囲が、しん、と、静まりかえっている。

 あーあ。

 と、恭介は、思った。

 こうなるから、この予測は口にしたくなかったのだ。

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