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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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説明会

「お疲れ様-っす」

 ダンジョンを出ると、いつものように赤瀬が待っていた。

 この赤瀬は、どうやら恭介たちが遅くなると、こうして出待ちをしてくれているらしい。

 実際、ダンジョン内で長時間活動した時は、疲労も大きいので助かるのだが。

「いつも済まないねー」

 遥が、冗談めかして、礼を述べる。

「いえいえ。

 いつもお世話になっていますし、これくらいどうってことないっす」

 赤瀬は、そういいながら、ランドクルーザーのドアを開けて三人をいざなう。

 周辺に、赤瀬以外に人影が見当たらなかった。

 今では、他のパーティによるダンジョン攻略も、珍しくはなくなっている。

 数日に一度くらいの頻度でどこかの迷宮が攻略されているので、少し前のように、注目を集めることもなくなっていた。

 それはそれで、気が楽でもあるのだが。


「それでどうでした、申のダンジョンは?」

 車を運転しながら、赤瀬が訊ねて来る。

「なんかね。

 いつもとは違った意味で、疲れるダンジョンだった」

 遥が答えた。

「ダンジョンマスターによって、ダンジョンの性格が違うってのは、わかっていたつもりなんだけどさ」

「ダンジョンマスターも、無理矢理拉致されて、無理矢理役目を押しつけられているパターンが、多いのかな」

 彼方が、恭介に話しかけている。

「辰のダンジョンマスターとか、今日の反応を見てみると、どうもそのパターンが多いみたいだね」

 恭介は、即答した。

「おれたちプレイヤーの時と同じだ。

 わけもわからずにここに連れてこられて、こういうルールで動けと指示だけ出される。

 たぶん、ダンジョンマスターの側も、なにかの条件を達成すればそれなりのリターンが貰えることになっているんだろうけど」

 その詳細までは、わからない。

 というより、ダンジョンマスターは種族も性質も異なるようだから、そのリターンについても、その種族にとって意味のある「なにか」が設定されている可能性が高い。

 ダンジョンマスターによって、まったく異なる報酬であっても、別におかしくはなかった。

「そうなると、面倒臭いよねえ」

「ああ、面倒臭いな」

 彼方と恭介は、そういって頷き合う。

「面倒臭いって、なにが?」

 遥が、訊いて来る。

「二人だけで納得していないで、こっちにもわかるように説明してくれない」

「いくつかの理由があるんだけれど」

「まず第一に、ダンジョンマスターとおれたちプレイヤーは、本来ならば接点がない種族同士なのに、こうして同じ盤上でやりあっている、ってこと」

 恭介は説明した。

「接触する機会さえなかった存在同士が、どういうわけか、戦っている。

 お互い、不本意だと思いながら。

 この構図は、ちょっといただけない」

「なるほど」

 遥は頷く。

「どちらも、お互いに敵意があるわけではなく、そう仕組まれたから、こうして戦っている。

 この構図が、いびつである、と」

「でも、それって」

 運転席の赤瀬がいった。

「わたしらプレイヤーやダンジョンマスターを無理に召喚?

 転移させた誰かが、一番悪いってことにならないっすか?」

「それは、今さらいうまでもない前提だね」

 彼方が、そう応じる。

「ただ、現状、その誰かの正体や目的、所在地など、すべてが不明。

 ダンジョンマスターたちも、嘘をいっているわけではないと仮定すれば、どうやらいいようにしてやられているらしいし。

 その誰かに関しては、ぼくたちプレイヤー側では、対応もなにも出来ない状態だ」

「居場所がわかってとっ捕まえられる状態だったら、とっくの昔に捕まえてわたしたちを元の世界に返すように、脅迫しているよね」

 遥も、そういい添える。

「それが出来そうにないから、次善の策として、用意されたルールに則って動いているわけだし」

「はあ」

 赤瀬が、生返事をする。

「面倒臭いんですねえ」

「面倒臭いんだよ」

 恭介がいった。

「ダンジョンマスターとおれたちプレイヤーは、ルール上敵対しているだけで、別に、恨み骨髄で敵対しているわけではない。

 今回のダンジョンマスターのように、条件が整えば、交渉をすることも可能」

「ええ!」

 赤瀬は、大きな声をあげる。

「ダンジョンマスターと、交渉したんですか!」

 赤瀬の常識に照らし合わせれば、それはかなりの異常な事態といえた。

「交渉したんだよ。

 詳しくは、帰ってから説明するけど」

 恭介は、そう応じる。

「って、いっても。

 ダンジョンマスターにも、役割的に課せられた制約があるっぽくてさ。

 勝手に、戦い自体をなしにしよう、って反故にするのは、出来ないっぽい。

 だから、戦いの意味を変質させて、再定義して来た」

「……そりゃあ」

 赤瀬は、しばらく絶句してから、そういった。

「なんというか、とんでもないことを、しでかしてきたんですねえ」

「まあ、恭介以外には思いつかないだろうし、まず実行しない手だよね」

 彼方も、そういって頷く。

「こんな奇策が本当に通用するものか。

 見守る側としては、すっごくヒヤヒヤしていたんだけど」

「そうなの?」

 遥は、首を傾げている。

「わたしは、キョウちゃんらしい、っていうか、いつものキョウちゃんだなー、ってしか、思わなかったけど」

「こちらの言葉を理解可能な相手にしか、通用しない手ではあるよ」

 恭介は、そう続ける。

「いや。

 仮に言葉を理解出来たとしても、最初に相手をしたダンジョンマスターみたいに、会話が通じない相手には通用しない手、になるのか」

「いやあ。

 なんというか」

 そういって、赤瀬は以後、運転に専念することにした。

「皆さん、お疲れでしょうし。

 詳しい事情は、拠点に戻ってから聞くことにしましょう」


「……って、いうことがあってさ」

 拠点内の三パーティ、そのうちの有志を食堂に集めて、彼方が今日の出来事を一通り、説明し終えた。

「申のダンジョンに関しては、今後、攻略難易度が、大きく下がると思うよ」

「なんと申しますか」

 桃木マネージャーが、そんな風にいった。

「ダンジョンマスターと交渉して、ルールを変えさせる、って。

 そんなこと、出来たんですね」

 半ば、いや、それ以上に呆れを含んだ口調だった。

「今回のダンジョンマスターが、たまたま物わかりがいいタイプだっただけだよ」

 恭介は、平然とした口調で、そういう。

「他のダンジョンマスターにも通用する手段だとは、思っていないし」

「いや、それは、そうなんですが」

 仙崎が、疑問を口にした。

「なんで、リバーシなんですか?」

「ルールの説明をするのが簡単だったから」

 恭介は、即答する。

「将棋とかチェスだと、駒の動かし方とか、説明するのが面倒だったし」

「あの」

 青山も、おずおずと発言する。

「ダンジョンマスターに、必ず勝てるという確信が、あったんですか?」

「いや、全然」

 恭介はいった。

「っていうか、負けてもよかったんだよ。

 こっちとしては、ダンジョンから出たいだけなんだから」

 他のパーティの事情は、よく知らないが。

 少なくともトライデントは、別に全ダンジョンの制覇を、目指しているわけではない。

「今回は、攻略出来ませんでした」

 という結果なら、それはそれで構わないのだ。

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