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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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動向

 合宿所の基礎が出来はじめた頃に、十数名のプレイヤーたちが拠点を訪ねて来た。

 とりあえず、門を開いて拠点の中に入れて事情を訊いてみたところ、生徒会に誘導されて合宿所建築の手伝いに来たという。

 そのまま、手近な人形に、合宿所の建築現場へと道案内させた。

「フリーランサーズって人たちかな?」

「その人たちも、混ざっているね」

 恭介と彼方は、そんな会話を交わす。

「知った顔も何人か居たし。

 ただ、半分くらいは、知らない人だった」


 この頃、恭介たち三人は、敷地内の農場化の準備に多くの時間を割いていた。

 安定した食糧供給を目指すとなると、農業だけは厳しく、平行して家畜も飼う方が効率的だという。

 そのため、家畜のための小屋や放し飼いをするための広場、家畜化できそうな動物の収集と選定など、先の見えない作業を三人で分担しておこなっていた。

 先の見えない、というか、この世界の動植物についての知見が圧倒的に足りていない。

 おかげで、野生動物を生きたまま収集したり、それの飼育を試みてみたり、といった作業は、ほとんど手探りになる。

 捕まったまま逃げだそうとしない動物は?

 飼料としてなにが適切なのか?

 など、実際に試してみて、確認するしかなかった。

 トライ・アンド・エラーの連続であり、時間は、いくらあっても足りないくらいだった。

 ここ数日、というか、この世界に来てからこっち、日に日に寒さが増している。

 この世界でも元の世界のような季節があると仮定するならば、今はちょうど冬に向かう時期に相当するらしい。

 そのおかげかどうか、十分な餌を用意すれば逃げだそうとはしない野生動物は、それなりに居た。

 そのほとんどが草食動物であり、このまま一年を通して飼育が可能となり、繁殖にも成功すれば、畜産化の目処は立つ。

 ただし、成功するまでには、まだまだ多くの時間と試行錯誤が必要となるはずで、その辺は、三人も弁えて覚悟はしている。

 農業もそうだが、早急に結果が出るものでもないし、必ず成功するという事業でもない。

 賭けの要素が強く、確実性にも乏しいのだが、マーケットに頼らない自給体制を整えるとなると、そうした長期的な計画は試みないわけにはいかなかった。

 トライデントの三人は、他のプレイヤーたちと違うゲームを自発的にはじめていた。

 と、いうことになる。


 ダンジョン攻略の方はというと、何日かに一度程度の割合で、攻略報告のアナウンスがある程度には進んでいた。

 しかし、この時点では、一度攻略されたダンジョンが何度も別のパーティに攻略されるのは恒例となっており、そうではない、つまり、未攻略のダンジョンの攻略は、ほとんど進んでいない。

 出没するモンスターの強さや弱点など、攻略に必要な情報が蓄積された結果、しかるべきレベルにまで達したパーティが、順当に、攻略しやすくなったダンジョンをクリアしている。

 そんな、感じになる。

 トライデントでも苦戦を強いられた巳、辰のダンジョンは、まだ他のパーティに攻略されていないし、中に水中世界が広がっている卯のダンジョンは、未攻略のままだった。

 恭介たちが最初に倒したダンジョンマスターが待ち構えている戌のダンジョンは、何度か攻略されている。

 レベル九十以上になるプレイヤーたちも着実に増えており、進展はそれなりにあるのだが、その歩みはかなり遅々としていた。

 そして、三カ所以上のダンジョン攻略に成功したパーティは、まだトライデント以外に現れては居なかった。

 二カ所のダンジョン攻略に成功したパーティはいくつか出てはいたが、ダンジョンを攻略したあとは、数日の休養を取るのが恒例となっている。

 負傷者が出たり、そうではなくても立て続けに別のダンジョンに挑むのは、精神的にも肉体的にもきつい。

 というのが、その理由だった。

 彼方にいわせると、

「ほとんど死んでいた」

 恭介ほどではないにしろ、ダンジョンマスターに挑めば、相応のダメージを受けるのは避けられない。

 そうした認識が、全プレイヤーに広がっている。

 ダンジョンを進み、どうやらダンジョンマスターが待機している大扉の前まで辿り着いたものの、そこで引き返すパーティも、少なくはないようだ。

 恭介としては、そうしたパーティやプレイヤーのことを侮ったり非難をしたりする気には、なれなかったが。

 この世界に転移させられたことまで含めて、別に自発的にやっていることでもない。

 大きなリスクを背負ってまでダンジョンマスターに挑まなかったとしなかったとしても、それはそれで納得が出来るのだった。

 誰だって、痛い思いはしたくないだろうし、相応の対価を支払えば生き返るとわかっていても、好んで死にたくはないだろうし。

 むしろ、この時点で、

「なにがなんでも全ダンジョンを制覇してやる!」

 的な、大きなモチベーションを持っているプレイヤーは、ほとんどいないのではないか。

 と、恭介などは予想している。

 ほとんどのプレイヤーにとって、ダンジョンに入るのはポイントを獲得する駄目の手段に過ぎず、そこそこにやって、当座の生活に困らない程度のポイントさえ稼げればいい。

 そういうスタンスのプレイヤーが、大半なのではないか。

 市街地に残っているプレイヤーたちが、普段、どのような生活をしているのか、恭介は多くを知らなかった。

 が、こちらに強制的に転移させられてから、すでに少なくはない月日が流れているわけで。

 この環境に適応したライフスタイルとでもいうべきものが、ぼちぼち形成されているのではないか。


「まあ、わたしらなんかも適当に稼いで適当にだらだらして、好きにやっているけどねー」

 ジョブ付与術士の吉良明梨は、そういった。

「一度ダンジョンに入れば、かなり稼げるし、当分は遊べるし。

 そういう人、結構多いよ」

 この吉良明梨と左内覇気、ユニークジョブズというパーティの二人は、最近拠点内に出入りをするようになった。

 合宿所の建築作業も、左内が二本足歩行の召喚獣を召喚し、手伝うこともあったが、吉良明梨の方はほとんどなにもしない。

 いや、正確には、作業員たちに定期的にバフをかけているのだが、その効果持続時間は長く、バフをかけた本人はなにもせずに怠けているように見える。

 もう一方の左内は、毎日のように料理を作っては、作業に従事する人々に振る舞っていた。

 割と手際がよく、味も、はっきりいって、三人が作る料理よりは、うまい。

 家庭料理とか素人の域を超えて、プロの料理人が出す味に近かった。

「マーケットで、ほとんどの食材や調味料が手に入りますから」

 どこで料理をおぼえたのか、と、問われると、こんな、返答にもなっていない回答をする。

 中には、この左内の料理を目当てに建築現場に通ってくる者も居て、なかなかの人気であった。

 一方の吉良明梨はといえば、なんの役にも立たず、手伝おうともせず、たんに左内について来てはぶらぶらと拠点内をうろついている。

 自然と、恭介たちと会話をする機会も増えた。

「あんたが目的もなくぶらぶらしているのは、見ればわかるけどさ」

 遥がいった。

「市街地の人も、大半がそんな感じなの?」

「そんな感じですよう」

 吉良が答える。

「目的意識を持って動いている人なんて、ほとんどいませんて。

 あ、これで時間に捕らわれずに創作活動が出来る、って張り切っている人も、若干居ますけど」

「創作活動?」

「二次創作とかキャラ絵とか、そっち系。

 こっちではSNSを使えないので、そこだけは悔しがっていましたが」

 元の世界のネットには、接続料を支払えばアクセスすることが可能だった。

 ただし、恭介たちがこの世界に来た時点まで、それに、こちらからなにかの情報をアップロードすることは出来ない。

 という制約が、存在する。

 当然、描いた絵をどこかのSNSなどにアップすることも出来なかった。

 なにかの創作活動をするにしても、それはあくまで、こちらの世界内部で完結する。

 というのが、前提条件となる。

 享受可能な人数が、最大で百五十名までと限られているのなら、やり甲斐も大きく削がれるのではないか。

 などと、そばで聞いていた恭介は思う。

 もっとも、恭介自身はこれまでその手の創作活動とは無縁の生活を送ってきたので、あくまで想像するだけであり、それがどこまで正確な感情なのかは、まったく判断が出来なかったが。

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