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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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後日談

 諸々の準備を済ませ、コートを羽織って外に出ると、すでに日が暮れていた。

 ダンジョンに入ったのは昼前であったはずだが、かなり長い時間、この中で過ごしていたらしい。

 三人とも、途中から、時間の感覚がなくなっていた。

 恭介はといえば、「立っているのがやっと」という有様で、左右から遥と彼方に支えられて、どうにか歩けていた。

「ほとんど死んでたんだからね。

 息絶えてなかったのが、奇跡だったくらい」

「ダイナマイトかますところまでは前の打ち合わせで聞いていたけど。

 最後のあれは、ないんじゃないかなあ。

 いくらなんでも、あれ、正気の沙汰ではないでしょ」

 などと、左右からステレオでぐちぐちとお説教を聞かされる。

 だって、仕方がないじゃあないか。

 と、恭介は思う。

 他に方法が、思いつかなかったのだから。

 口に出して抗弁するほどの気力は、まだ戻っていなかった。

 よろよろと前進していくと、拍手に包まれていることに気づいた。

 どうやら、長時間ダンジョンを占有し、日が暮れてまでもこの場に留まっていたプレイヤーがそれなりの人数で残っていたらしい。

 それだけではなく。

「ご苦労だった」

 目の前に、小名木川生徒会長が立っていた。

「これで通算、四回目のダンジョンマスター討伐に成功したわけだな。

 全体数は十二カ所だから、すでに三分の一を制覇した形になる」

「そのうちの一カ所は、ダンジョン全体の制覇ではなく、ダンジョンマスターのみを討伐しただけですよ」

 彼方が、そう応じる。

「すいませんが、今は、早く拠点に帰って仲間を休ませたいので」

「はいはい、どうぞこちらへ」

 魔法少女隊の赤瀬が、割って入った。

「あちらに車を待機させてます」

「詳しい報告は、あとで。

 そうだな。

 こっちからそちらの拠点に出向いて、説明して貰おう」

 小名木川会長は、早口にそういう。

「それから、他のプレイヤーを鼓舞するため、なにか、ダンジョンマスターの遺品とかをしばらく貸して貰えないか?

 その様子だとかなりの激闘だったようだから、さぞかし大物のダンジョンマスターだったんだろうし」

「ああ、はい。

 わかりました」

 彼方は、あっさりとその言葉に頷いた。

「中央広場なら、広さ的になんとか間に合うか」

 小声でそう呟いてから、

「赤瀬さん、一度、中央広場に寄って」

 と、赤瀬に頼む。

「はいはい。

 仰せのままに」

 そんなやり取りの末、三人は赤瀬のランドクルーザーの後部座席に乗り込む。

 そのあたりたりから、うつらうつらして来たのか、恭介の記憶はどうもはっきりしない。

 途中、彼方が一度車を降りて、周辺からなんともいえない絶叫とか悲鳴が響いたのは、うっすらとおぼえている。


「あ、目が覚めた」

 次に気がつくと、遥が、そう声をかけてきた。

「寝ていただけとは思ったんだけどね。

 それでも、心配はたっぷりしたんだけど」

 ゆっくりと頭を巡らせて確認すると、自宅の寝室だった。

「どれくらい寝ていた?」

「ええと、今で、三十時間を少し超えたくらい、かな」

 恭介が確認すると、遥が答える。

「その程度で、済んだか」

 恭介は、深々と息を吐いた。

「いや、その程度、ではないから」

 遥が、いった。

「今回は、本当に危なかったんだから。

 今後は、あんな真似はしないように」

 そういわれてもな。

 と、恭介は思う。

 心配してくれるのはありがたいと思うが、あの状況では、他のやりようがなかった。

 自分が死ぬか、ダンジョンマスターが死ぬか。

 どちらが先に死ぬにせよ、とりあえず、残りの二人はその場から脱出できる。

 結果として、恭介の方が生き残ったわけだが、その逆であったとしても、恭介としては後悔していないはずだ。

 なにせ、恭介たちプレイヤーは、一度死んでも聖女様によって復活可能な、特権がある。

 だとすれば、それを前提として作戦を組むのが、恭介としては自然な発想になるのだが。

 しかし、この遥は、たとえ復活するにせよ、そうした発想自体を嫌っているようだ。

 この辺は、価値観の違い。

 なんだろうな。

 と、恭介は、思う。

 だとすれば、今後は、それも尊重するしかない。

 難易度が、またあがるなあ。

 と、恭介は、心中でぼやく。

「とりあえず、トイレにいきたいな」

 恭介は、口に出してはそういった。

「あと、腹が減った」


 トイレを済ませてから、薄いオートミールのようなものを啜る。

「胃袋が縮まっているから、いきなり重い食べ物は駄目」

 といわれたから、仕方がなかった。

 食後、お茶を啜る。

 例の、ドラゴンから振る舞って貰ったお茶と、同じ香りがした。

 どうやら、律儀にも戦利品として、あの茶葉を贈呈してくれたらしい。

「今回は、結構大盤振る舞いだったねえ」

 遥が、説明してくれる。

「ドラゴンの遺体だけでも、酔狂連が泣いて喜ぶほどの収穫だったんだけど。

 それ以外に、武器とか防具一式。

 それと、称号とか」

「称号?」

 恭介が訊き返すと、遥は、

「自分のステータス、確認して」

 という。

 いわれた通りにステータス画面を開いた恭介は、

「……ドラゴンスレイヤー?」

 と、疑問の声をあげる。

「ドラゴンとか爬虫類系のモンスターに、攻撃力二割増しの特効、だって」

 恭介が説明テキストを読む前に、遥が説明してくれた。

「恭介が寝ている間に、結構な騒ぎだったんだよ。

 彼方が、中央広場にドラゴンの首を置いてくるもんだから、阿鼻叫喚の騒ぎになったり。

 一夜明けると、今度は攻略マジ勢がその首を見て、別の意味で騒ぎ出したり。

 生徒会の人たちがここまで来て、彼方の説明を聞いたり。

 その説明の途中で、生徒会の人たちの顔色から血の気が失せたり。

 酔狂連の人たちは、ドラゴンの死骸を見て半狂乱になっているし。

 まあ、全体として見ると、今回の攻略は、いい方向に刺激を与えたんじゃないかな、って。

 他のプレイヤーたちも、これまでよりも奮発して、ダンジョンに挑むようになったそうだし」

「ドラゴンの首」

 恭介は、その単語に反応する。

「あのデカいのを、中央広場に置いたのか」

「置いたんだよ」

 遥が、頷く。

「生徒会長さんが、なにか、他のプレイヤーを刺激するようなものを置いていってくれないか。

 とか、いうからさ」

「そりゃあ、まあ」

 恭介は、いった。

「えらい、騒ぎだったろうな」

「えらい騒ぎだったよ、本当」

 遥は答える。

「でもそのおかげで、ここ数日、安定していたプレイヤーたちに、発破をかける効果はあったみたい。

 昨日だけでも、新たに三カ所のダンジョンマスターが討伐された」

「たまたま、そういう時期だったのか知れないけどね」

「そうかもね」

 いずれにせよ、小名木川生徒会長の思惑通りには、なっているわけだ。

 と、恭介は思う。

 生徒会としては、ここ数日の停滞ぶりを歯痒く思っていたのだろうし。

 多少なりとも役に立てたのなら、いい結果なのかも知れない。

「彼方は?」

「中央広場に、ドラゴンの首を取りにいっている」

 遥は即答する。

「いついまでも晒しておいていいものでもないしね」

 それは、そうだな。

 と、恭介は思う。

 あのドラゴンは、こちらの攻撃を受けるだけで、こちらへの攻撃を積極的にしてこなかった。

 恭介たちへの同情などではなく、単純に、自らの意思に反してダンジョンマスターへ据えられたことへの意趣返し、だとは思うのだが。

 そのおかげで、恭介たちは、形だけでも勝ちを拾ったのだ。

 今後、あのダンジョンマスターが、他のプレイヤーたちにどういう待遇をするものか。

 個人的には、興味もある。

「ダンジョンマスターも、いろいろだよなあ」

「そうだねえ」

 そんなことをいいつつ、遥とともに、お茶を啜る。

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