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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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奇妙なお茶会

「確認しておきますが」

 彼方がドラゴンに対して確認する。

「ぼくらが、このまま退出したいと申し出れば、素直に出してはくれるのですよね?」

「お主らが、そのように望めばな」

 ドラゴンは、答える。

「だが、その仮定は、あまり意味がないな。

 仮に今回、お主らが戦いを避けたところで、いずれは、ここに戻るはずだ。

 ならば、わざわざ一度帰るのは無駄というものではないか?」

 そんなんだよなあ。

 と、恭介は心の中で思う。

 今回、戦わずにこのダンジョンを出たとしても、いずれは、ここを再訪することになる。

 その時に、いまよりも有利な条件になるとは、思えなかった。

 むしろ、難易度調整がかかって、かえって今よりも不利になる可能性すらある。

 ドラゴンがいう通り、

「今の時点で戦いを避けるのは、無駄」

 なのだ。

「ええと、ドラゴン様」

 おずおず、といった感じで、今度は遥が訊ねる。

「ドラゴン様は、どのような経緯で、こんなところでダンジョンマスターなどを勤められているのでしょうか?」

「それがなあ」

 ドラゴンは、深々と吐息をついてから、続ける。

「なんとも情けないことながら、未知の存在に拉致されたらしい」

「拉致、ですか?」

 恭介が、首を傾げる。

「あなた様ほどの存在が、ですか?」

「言葉の綾、というやつだな。

 拉致されたというのは、つまり、ここに居るのは、本来の吾ではない。

 この場に居る吾は、本来の吾の、ひどく劣った模倣。

 そのような存在であると、心得よ」

「劣化コピー、というわけですか」

 恭介は、頷いた。

「失礼ないい方になりますが、あなた様は、われわれプレイヤーでも倒せる存在になるのでしょうか?」

「倒せる可能性は、ある。

 その、はずである」

 ドラゴンは、厳かな口調で答える。

「そうでなくては、この吾をダンジョンマスターとして規定する意味が、わからぬ。

 本来の吾であれば、有限の生命を持つ生物ごときがまみえて無事で居られるような存在ではないのであるが」

「随分、偉い方なんですねえ」

 遥かが、素直に感心した声を出す。

「その、ドラゴン様のコピー元となるお方は」

「そうさの。

 いくつもの生命が生じ、世代を重ね、その姿を変えては消滅するまでをその目で目撃出来た。

 そんな、存在であった。

 とでもいえば、多少は伝わるところがあるか」

「そんなの、ほとんど神様みたいなものじゃないか」

 彼方が、悲鳴のような声をあげる。

「勝ち負けとか強さ以前に、存在としての格が違う」

「だから、先ほども伝えたであろう。

 この場に居る吾は、本来の吾から大きく劣る、ああ、お主らの言葉では、劣化コピーというのであったな。

 そのような、存在である、と。

 こうしてダンジョンマスターとして規定されているということは、所詮はお主らプレイヤーが打倒しうる程度には、力を弱められている。

 そうでなくては、ダンジョンマスターとしての役割をまっとう出来ん」

「それは、また」

 恭介は、この場でかけるべき言葉を、必死に脳内で検索する。

「ご苦労様でございます」

「いったであろう。

 お互い、難儀な立場であると」

 ドラゴンは、鼻孔から荒い息をつく。

「そちらも、このような場で戦い続けることは、大いに不本意なことであろう。

 その不本意は、この吾にしても同じこと。

 が、そのように定められた上は、戦いを避ける道はない。

 決着がつかない限りは、この状態がいつまでも継続することになる」

「なるほど」

 彼方は頷いた。

「ひとつ、お聞きしますが。

 そのような偉大な方から模倣としてのあなた様を摘出し、ダンジョンマスターとしてこの場に据えた存在について、心当たりはございますか?」

「それがなあ。

 情けないことに、皆目見当がつかぬのだ」

 ドラゴンは、大仰な動作をつけて嘆いて見せた。

「記憶を弄られておるのか、もっと根本的な部分から、手を加えられ吾という存在が変質しておるのか。

 いずれにせよ、わからぬことは、わからぬ。

 仮に、なにか知っていたとしても、ダンジョンマスターとしての役目を考えるに、うかつにプレイヤーたるお主らに明かせるとも思えぬのだがな」

「そういうものですか」

「そういうものなのだ。

 お主らプレイヤーとわれらダンジョン勢とは、本来的に敵対する存在として規定されておる。

 そのわれらが敵に相当するプレイヤーに対して、こちらの内情を明かすのは、一種の利敵行為に相当する。

 そうでは、ないか?」

 このダンジョンマスターをこの場に置いた何者かと、ダンジョンマスターとは、別に利害などが一致して動いているわけではない。

 むしろ、このドラゴンに関しては、そうした上の存在に対して、含むところがある。

 恭介たち三人をお茶に誘ったのも、そうした謎の存在に関する、ささやかな意趣返しなのかも知れなかった。

 おそらく、だが。

 ダンジョンマスターに許されたルールに反しない範囲で、そこから逸脱した行為をすることが、このお茶会の目的である。

 そう考えると、しっくり来るのだった。

 案外。

 と、恭介は思う。

 このドラゴンとは、こうした立場で出会わなければ、それなりに友好的な関係を築けたのかも知れない。


「あなた様を、この場に据えた何者かは」

 恭介は、慎重に言葉を選びながら、問いかけた。

「元のあなた様よりも、強力な存在だと思いますか?」

「ふむ。

 興味深い問いかけだ」

 ドラゴンは、そんな反応をする。

「元の吾よりも強力な存在、ではなかろうな。

 そんな存在について、元の吾がなにも知らずに無防備でいたとも思えぬ。

 どちらかというと、狡知に長けた、逃げ隠れをするのがうまい。

 そのような存在ではないか?

 吾がこうしてこの場に居ることを鑑みれば、それなりに知恵は回るようであるが」

「なるほど」

 恭介は頷いた。

「強くはないが、狡猾で用心深い存在である、と。

 そんな存在が、プレイヤーを集めたりダンジョンやダンジョンマスターを用意したりした理由とか、想像がつきますか?」

「皆目、わからぬな」

 ドラゴンは即答する。

「そも、吾の思考は、根本的に、強者のそれである。

 このような小細工に興じる小物の心理など、推し量れようはずもない。

 仮に、ある程度推察出来たとしても、立場上、お主らにそのまま伝えられるとも思えぬが」

「そうですか」

 恭介は、いった。

「だいたい、想像していた通りの返答でした。

 ありがとうございます」

「返答の想像がついても、問わずにはいられぬのか?」

「そういう性分ですので」

 恭介は、そう返す。

「少し休憩してから、本題である戦闘に移ろうかと思います。

 それで、よろしいでしょうか?」

「ふむ」

 ドラゴンは、鷹揚に頷いた。

「そちらの準備が整い次第、好きにはじめるがよい」

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