表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

142/401

試用

「うん。

 いいんじゃないかな」

 長柄の得物を軽々と振り回してから、彼方がいった。

「これ、柄がぽっきりいったりしないよね?」

「何十トン単位の力がかからない限りは、大丈夫ですね」

 岸見が答える。

「うちの材料担当は、そう申しております」

「常識的な強度、ってことかな」

 そう答えながらも、彼方はその得物をいろいろな角度から振り回していた。

 柄の長さが、三メートル近くもある。

 先端にウェイトが着いているから、分類としては、メイスの一種でいいのだろう。

 しかし、外見的には槍に近く、異形の得物といえた。

「試しに、魔力を込めてみ」

「わかった」

 遥がいうと、彼方はすぐに応じて長柄のメイスを構え直す。

「こんなもんかな?」

 ぶん、と振り抜く、風音からして、先ほどとは違った。

「軽々と振り回しているから、重さがよくわからないよ」

 恭介が指摘する。

「ちょっと、その状態のまま、地面でも叩いてみないか」

「そうだね」

 彼方は、二、三度武器を振り回したあと、メイスの先端を地面に叩きつける。

 轟音がして、派手に土煙があがった。

「ええー」

 岸見が、微妙な声を出す。

「……どう見ても一メートル以上、地面にのめり込んでいるんですけどぉ」

「柄は、確かに丈夫そうだね」

 何事もなかったようにメイスの先端を地面から引きあげて、彼方がいった。

「これ、いい値で引き取ります。

 あと、これの柄の長さが違うのもありますか?」


 結局、彼方は柄の長さが二メートルの物、一メートルの物も含めて、三種類のメイスを数本ずつ購入した。

 破損した場合の予備も同時購入した形になる。

 彼方たちの用途は実戦であり、「唯一の武器が壊れて戦えない」という事態を避けようとするのは当然、という認識があった。

「あとは、剣ですが」

 岸見は倉庫から何振りかの剣を取り出して、恭介に渡す。

「今のところ、こんなところですね。

 前に渡した試作品と、あまり代わり映えしない品になりますが」

「長さは、さほど変わらないんだな」

 数本の剣を目の前にして、恭介は呟く。

「ええと。

 大まかにわけると、片刃で反りがはいったものと、両刃の直剣、か」

「日本刀型が人気ありますけど、あれは、柄と本体がバラバラな構造なんで、極端に大きな力が入ると柄の方が壊れる可能性があるんですね」

 岸見が、説明してくれる。

「今回お持ちした品は、そうした欠点を克服した、柄と本体が一体化した物になります」

「元の世界の基準とは、いろいろ違うもんね」

 遥は、そういって頷く。

「元の世界では、全長三メートルとか五メートル以上のモンスターを相手にする機会がなかったし」

「剣のことはよくわからないけど、もう少しリーチが欲しいかな」

 恭介がいった。

「ハルねーもいったように、デカい相手が多いからさ。

 こっちに武器も、相応に大きくしないと、肝心なところに届かないっていうか」

「それ、槍でよくないですか?」

「槍を使うくらいなら、飛び道具に頼るかな」

 恭介はいった。

「剣でないと発言しないスキルとかありそうだし」

「はあ」

 岸見は、しぶしぶ、といった態で頷く。

「どれくらいの長さをご所望ですか?」

「そーだなあ」

 恭介は、巳のダンジョンマスターを基準にして想像してみる。

「刃渡りが、二メートル半くらいあると嬉しい」

「全長が、ではなく、刃渡りが、ですか」

「そう、刃渡りが」

 岸見に確認されて、恭介は頷いた。

「もっと長くてもいいけど」

「ああ、もう!」

 数秒考え込んだあと、岸見は、そう叫ぶ。

「わかりました!

 技術的な課題をクリアする必要があるんで、うちの八尾と相談してみます!」

 流石に、その場で確約はしてくれなかったが、一応、作ってはみてくれるらしい。

 その場では、直剣と片刃剣、二種類一本ずつを購入する。

 実際に使ってみないと、その違いがわからない。

 恭介が、そう判断したからだ。


「どう、剣士のジョブは?」

「固有スキルの使いこなしに苦労している」

 彼方に訊かれたので、恭介はそう答えた。

「足運びっていうんだけど」

「移動系のスキルか」

 彼方は答えた。

「それ、便利そうだね。

 ぼくにも教えて」

 そういって、彼方は右手を差し出す。

 恭介はそのまま彼方の手を握る。

「足運びのスキルを教えてください」

「教える」

 教授の儀式を終え、彼方は手指を何度か握り直す。

「あんまり、なにかが変わった気がしないね」

「地味なんだよなあ、このスキル」

 恭介はそう答える。

「実際に使ってみればわかるよ。

 試してみる?」

 恭介は倉庫から直剣を取り出し、彼方に差し出す。

「構えて、スキルを使ってみな」

「うん。

 やってみる」

 彼方は直剣を受け取り、鞘から抜いて構えてみる。

「これで、足運び、と。

 ああ、こういう感じか」

 何度か前後に滑るように移動し、彼方は頷いた。

「なるほど、って感じだねえ。

 これ、使いこなすと縮地とかに見えるんじゃないかな」

「縮地?」

「知らない?

 離れた場所にしゅっと一瞬で移動する技。

 一部界隈では、割とポピュラーなんだけど」

「どこの界隈だよ」

 恭介は、苦笑いを浮かべる。

「条件にもよるけど、それに近いことは可能なんじゃないかな」

「キョウちゃん!」

 遥が、右手を差し出しながら叫んだ。

「それ、こっちにも教える」

「ああ、別にいいけど」

 恭介は、そう返答する。

「忍者のハルねーには、このスキル、別に要らなくない?」

「いいから教える!」

「う、うん」


 その後、恭介はしばらく、盾を構えた彼方相手に剣の使い勝手を試してみる。

 体力と防御力に秀でたロードのジョブに就いている彼方相手ならば、全力で斬りつけても事故が起こる可能性は少ない。

 その意味で、格好の練習相手でもあった。

「直剣も、片刃剣も、どっちもあまり変わんないかなあ」

 しばらく試した結果、恭介はそう結論する。

「実戦で使えば、また意見が違ってくるのかも知れないけど」

「居合いとか、やりたくない?

 あれは、片刃の方がやりやすいと思うけど」

「居合い、ねえ」

 恭介は、そう答えておく。

「必要か、あれ。

 ダンジョンとか、立て続けに戦うような環境なら、最初から抜き身の剣を持っているし。

 なんなら、そのまま倉庫に入れておけるし」

「その手のロマンにまったく興味ないんだよね、恭介」

「ロマンはともかく」

 遥が、割って入る。

「どう?

 剣で、戦えそう?」

「相手による、かな」

 恭介は答えた。

「人間と等身大の相手なら、問題はないと思うけど。

 それよりも大きなモンスターは、やってみないとわからない」

 自分が剣を使って全長三メートル以上のモンスターを倒す場面を、恭介はうまくイメージ出来なかった。

 斬りつけると、倒す、は、恭介の中で、厳然と違う。

 だからこそ、刃渡りが長い得物を求めたわけであるが。

「別にキョウちゃんが、とどめを刺す必要もないんだけどね」

 遥は、そうコメントする。

「うーん。

 そうね。

 明日あたり、一度軽くダンジョンに潜って、お試ししてみましょうか」

「剣士用のスキルも、まだ試してないし」

 彼方はいった。

「そんなに急ぐ必要もないと思うけどね。

 まあ、実戦で試すのもありか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ