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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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遺物

「指の構造は、人間とほぼ同じ、かあ」

 武器職人の岸見が、ダンジョンマスターの指を検分しながら感慨深げな口調でいう。

「これ、制御も含めて、複雑な処理能力が要求されるんだよね。

 それを、六本も同時にこなしていたとなると。

 うーん。

 これが生物なのか何者かの被造物なのかはわからないけど。

 こんな個体を造れるって時点でもう、人類の知性を軽く超えているんだよなあ」

「素材も、なんだかよくわからん物質だなあ」

 八尾がいった。

「プラスチックのような、特殊な有機物のようにも見えるが。

 今から浅黄姉妹が詳しい成分分析をおこなうから、詳しくはそっちの結果待ちだ。

 ぱっと見でわかる特性としては、極めて硬い。

 同時に、柔軟性も持っている。

 相反する特性が両立する、夢の素材ということになるな。

 これを量産できるようになれば、出来ることも一気に増えるんだが」

「目が六つあるのもね。

 普通の生物はそういう構造になっていないし、視覚以外の五感もこいつの中でどう処理をしているのか、まったく想像つかないわ」

 そういってから、岸見はトライデントの三人に向き直る。

「こいつ、動きはどうだった?」

「素早い方だと思うよ」

 彼方が答える。

「この巨体だから、移動速度こそそこそこだったけど。

 でも、三人同時に攻撃しても、普通にそれ、捌けていたし」

「体の造りも精巧だけど、どういう情報処理系をしているんだよ」

 岸見はそういって、自分の頭を掻きむしった。

「高レベルプレイヤーの体感でそれってことは、つまりは、並の野生動物以上の反応速度ってわけで。

 ああ、もう。

 本当にわかんねーな、この世界のあれこれ。

 元の世界の常識と、かけ離れすぎている」

「元の世界には、そもそも三面六臂の生物なんざいないからなあ」

 八尾がいった。

「神話とか伝承の世界ならば、それなりに居るんだが。

 興福寺の阿修羅王像が、確かそれに近い姿だったっけ?」

「仏教の守護者とか、神格化された存在はなんでもありだからな」

 恭介がいった。

「インドの神様とかのイメージも混入しているし。

 それよりもおれとしては、この下半身のが気になるんだが」

「蛇、だよなあ」

「蛇、だね。

 よく見ると、鱗もあるっぽいし」

「移動とか姿勢制御なんかも、この鱗がかなり助けていたんだろうな」

「多分ね」

「これ、最初は二本足歩行していたんだって?」

「そう。

 ある程度ダメージ入ってから、この下半身が出て来て、合体した」

 恭介は答えてから、破損した両脚を倉庫から取り出す。

「で、その時に、こいつが切り離した脚が、これね」

「これかあ」

 八尾は、床に転がった両脚をマジマジと見つめる。

「目測で、全長三メートル前後、ってところかな。

 細身だけど、これ、重量はかなりある。

 それで、軽々と動いていたってことは、うん。

 どういう機構で運動していたのか、まるで想像がつかない。

 構成素材そのものに、エネルギー源が分散して蓄えられている形か?」

「生物の筋肉だよね、そのシステムだと」

 岸見が、そう応じる。

「やっぱり、生物と見なすべきなのかなあ。

 いやでも、ある時点で下半身を切り離して、別の作動原理で動く下半身につけ替えるって。

 どう考えても、生物的ではないし」

「別に、無理に分類する必要もないだろう」

 八尾はいった。

「こっちに来てから諸々の出鱈目ぶりは、今さらだし。

 こいつはこういう存在だ。

 そう受け入れて、分析するしかない」

「ぼく、初見からこいつ、ロボットかオートマトンみたいな存在だと思っていたんだけど」

 彼方が、意見を述べる。

「それって、おかしいのかな?」

「別に、おかしくはないな」

 八尾は即答した。

「なにより、実際に対面して戦ったあんたがいうんだ。

 そうした所見は、むしろ最大限に尊重されるべきだと思う。

 そうか。

 こいつは、人工物に見えたのか。

 理由を聞いてもいいか?」

「感情がないかな、って」

 彼方は即答する。

「知性が低い動物でも、恐れたり怯んだりはするでしょ。

 でもこいつには、そういう揺らぎが感じられなかった。

 淡々と、指示されていた動作を繰り返しているように見えたから」

「なる」

 岸見が、その言葉に頷く。

「そういう感想は、とても貴重だよ。

 この場で聞けてよかった」

「こいつ、ここでこれから、詳しく分析するんだろう?」

 恭介は、確認する。

「だったらその結果、ある程度まとまったら、攻略wikiにでもアップしておいてくれないか?

 これからも、巳のダンジョンに挑むプレイヤーは居るわけだし」


 酔狂連の連中は、まだまだこれから巳のダンジョンマスターを調査するという。

 長居しても仕方がないので、トライデントの三人は、聞き取り調査が済んだ時点でそこを去り、自宅へと帰った。

「あの人たちの分析結果、今後の攻略に役立つと思う?」

 帰り道で、遥がそう訊ねて来る。

「分析結果そのものというより、分析の際にわかった知見は、なんらかの形でフィードバックされるだろ」

 恭介は、そう答えた。

「素材開発とか、武器とか。

 だから、まるっきり無駄ってことはないし、戦利品としては十分だと思うよ」

「なにより、あの人たちが喜んでいるし」

 彼方が、そうつけ加える。

「あれはあれで、いんじゃないかな。

 それよりもぼく、今日は疲れたよ。

 早く寝たい」

 その言葉通り、彼方は帰宅するなり、

「おやすみ」

 の一言を残して自室に入る。

「面倒臭いからさ」

 遥が、恭介の腕を掴んでいった。

「このまま二人でお風呂を済ませちゃおうか?」


 翌日、ダンジョン攻略は休むことにした。

 律儀に毎日ダンジョンに入るべき理由もなかったし、拠点の方でも仕事はそれなりにあり、少なくとも退屈はしない。

 彼方は、発芽したジャガイモを切って、畑に植える準備をしている。

 遥は、人形何体かを連れて森の中に入っていった。

 恭介はといえば、転職した剣士のジョブについて、いろいろ調べている。

「固有スキルは、足運び、か」

 口に出して、そう呟く。

 一つだけ、というのも珍しいかな。

 魔術師と同じく、固有スキルが限定される代わりに、活用可能なスキルが数多く用意されている形なのかも知れない。

 意外だったのは、その唯一の固有スキルも、攻撃用スキルではなかったことだ。

 外に出た恭介は、早速、その固有スキルを試してみる。

「足運び、と」

 口に出して歩いたりしてみたが、なにも起こっていないように感じた。

 剣を持たないと発動しないのかな。

 そう思い、倉庫中から例の魔力を消費して重量を変える剣を出して、構える。

「足運び」

 口に出し、意識を集中して、動く。

 自然と、すり足に近い形で、滑るように前進した。

 これか。

 と、恭介は思う。

 狙撃手の命中補正と同じく、身体操作を補助してくれる系のスキルであるようだ。

 慣れないと、意識して使いこなすのは難しいかも知れない。

 なら、しばらく練習しておくか。

 剣を構えたまま、恭介は、しばらく前後左右、様々な方向に移動する動作を試してみる。

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