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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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唖然

 しばらくして、両膝が破壊された敵は、すでに三本の手首を失っていた。

 首は傾いだまま戻らなくなり、胴体部分も全体に煤けている。

 三つある顔面は、一つは口が開きっぱなし、あとの二つも、度重なる攻撃を受け、片目などを失い、うつろな穴をそのまま露出している。

「本当に、硬い敵だな」

 恭介は、そう呟く。

 これまで、生物系のモンスターを相手にすることが多かったせいもあり、今回のダンジョンマスターについては、半ば本気で呆れている。

 細い手首部分や関節部ならともかく、胴体部など、太い部位の破壊法が、なかなか思いつかない。

 とりあえず、手首をすべて潰したら、首を狙うか。

 などと、恭介は考えている。

 首を切断して動きが止まれば、いいんだが。


「これまでちょっと、恭介の魔法攻撃に頼り過ぎていたかなあ」

 少し離れた場所で、彼方がそんなことをいう。

「魔法抵抗が大きい敵が来た途端、ここまで手こずるとは思わなかった」

「帰ったら、物理攻撃力をあげる方法を考えよう」

 恭介は、そう答えておく。

「とりあえず今は、こいつを片付けることに全力を尽くして」

 目の前のこいつを片付けないことには、このダンジョンから出ることは出来ないのだ。

 と、思う。

 恭介たちが入って来た巨大な扉は、今では閉ざされている。

 これはつまり、決着がつくまで、この場から出られない、ということなのだろう。

 相手か、こちらか。

 どちらかに死者が出ないことには、終わらない仕様らしい。

 もちろん恭介たちは、自分の側から死者を出すつもりはなかった。

 敵の機動力を奪うことに成功したので、まだしも余裕があるのだが。

 ここまで長い時間をかけてもとどめを刺せなかった。

 この事実は、三人に忸怩たる思いを抱かせるのに十分だった。

 これまで、モンスター戦に関しては、割合順調に進んでいたから、なおさら堪えている。

 一刻も早く、ここの攻略を終わらせたい。

 そういう気持ちが、強くなっていた。

「あ!」

 いちはやく異変に気づいた恭介は、短く叫んだ。

「離れて!」

 ステルスモードの遥の行動は確認出来ないが、彼方はその越えに反応して、即座に飛び退く。

 敵は、腰あたりから異音を発し、自分の両脚を切り離した。

 続いて、そこから少し離れた場所に、巨大な物体が出現する。

「嘘でしょ!」

 遥が、絶叫した。

「おかわりがあるなんて、聞いてないって!」

 両脚を切り離した敵は、新たに出現した巨大な物体に、残った体を接続する。

 すると、全長五メートル以上にはなる、半人半蛇の姿になる。

 役立たずになった両脚を捨てて、代わりのオプションパーツを手に入れた形だ。

「前より、強くなってないか、これ」

 珍しく、彼方が狼狽えた様子を見せる。

「この下半身の蛇体も、魔法を受け付けないのかな?」

「試してみる」

 恭介はZAPガンを取り出し、敵の下半身に無属性魔法を浴びせる。

「ほとんど、効果はないようだ」

「落ち着いているんじゃないよ!」

 遥が、叫ぶ。

「早く攻略法、考えて!」

 三人の混乱をよそに、敵の方は落ち着いた様子で自分の体を見おろし、何度か下半身の蛇体を震わせた。

 おそらく、動作チェックといったところだろうな。

 と、恭介は思う。

 失った手首まで交換していないということは、交換用のパーツがもともとないのか、それともなんらくの制約があって、交換できないのだろう。

 それについては、素直に幸運だと思う。

 これで三対の両腕まで元に戻ったら、目もあてられない。

 敵は、上半身を高く持ちあげ、恭介たち三人を見おろす。

 本物の蛇だったら、鎌首をもたげた。

 とかいう、動作に相当するのだろう。

 つまりは、臨戦態勢だ。

「どうする、恭介」

 彼方が、訊ねて来る。

「とりあえず」

 恭介は答えた。

「逃げて。

 対策は、おいおい考える」

 恭介と遥は、相変わらずステルスモードだった。

 自分から声をあげたり、攻撃をしたりしなければ、敵に居場所を気づかれることはない。

 結果、唯一目視可能な彼方だけが、標的となる。

 敵は、上半身を丸ごとおもりにして、上から下方へと、彼方にぶつけてきた。

「この!」

 彼方は、かろうじて盾でそれを受け止め、それどころか、押し返す。

「舐めるなって!」

 押し返された敵の上半身は、五メートル以上、上方に持ちあがった。

「こっちだって、レベルなりに耐久力と力があがってるんだ!」

 彼方は、そう啖呵を切った。

「多少しつこくされたとしても、すぐに潰されるかよ!」

 つまりは、彼方がしばらく持ちこたえている間に、下半身を換装した敵の攻略法を、思いつかなくてはいけない。

 まいったなあ。

 と、恭介は思った。

 マジで、なにも思いつかなかった。


「ということで、なにかない?」

「キョウちゃんにもわからないことが、わたしにわかるわけないじゃない」

 ステルスモードのまま、敵からかなり距離を取って、二人はこそこそと打ち合わせをする。

「あの体にダメージ入れる方法、って、結局物理になるじゃない?」

「そうはいっても、あの巨体だからなあ。

 今までは、関節とか細い部分を狙ったから、どうにかなったんだが」

 珍しく、恭介は本気で弱っていた。

「あいつの体、本当に硬いし」

 離れた場所では、彼方がその巨体の敵相手に孤軍奮闘している。

 健闘しているとは思うのだが、敵にダメージを入れる方法を思いつかないと、いずれは体力が尽きてやられるだろう。

 なにか、方法はないか。

 忙しく、恭介は自分の頭の中を検索する。

「うぃ」

 そんな恭介の手に、そっと鉤爪が置かれる。

「うぃくん」

 遥がいった。

「なにか、名案とかあるの?」

「うぃ」

 うぃは、片手をあげてその声に応え、恭介に向かってはなにやら手振りで伝えようとする。

「その格好は。

 ええと、こいつか?」

 恭介は、ZAPガンを取りだして、うぃに示した。

「うぃ」

 うぃは頷き、恭介からZAPガンを受け取り、器用に鉤爪で操作してホルダーを伸ばし、狙撃モードにする。

「それ、あの敵には効かなかったんだけど」

 恭介はそういいながらも、うぃの手元を覗き込む。

 うぃは、とんとん、と、ZAPガンを鉤爪の先で叩いたあと、すっと、瞬時に、ZAPガンのグリップの中に消えた。

「おい」

 恭介は、呟く。

「いくらなんでも、出鱈目だ」

「出鱈目でも、ご都合主義でもいいじゃない」

 遥がいった。

「この場の危機を、逃れられるんなら」

 半信半疑のまま、恭介はZAPガンを構えた。

 うぃが入り込んだグリップ部分は、ZAPガンの魔力を蓄える場所になる。

 つまりは。

 うぃを、撃ち込むってことか?

 出鱈目だ。

 と、恭介は思う。

 仮に成功すれとすれば、遥がいった通りに、ご都合主義ということになるだろう。

 照準をつけた先では、相変わらず敵と彼方が、盛大にどつき合っている。

 敵の、特に下半身部分が、以前と比較するとかなり太くなっていた。

 狙いは、かえってつけやすい。

 あの、下半身と上半身の、接合部分を狙う。

 恭介は冷静な気持ちで引き金を引いた。

 なにも効果がなかったとしても、もともとなのである。

 が、恭介の予想に反して、敵の上半身と下半身は、見事に分断される。

「は?」

 思わず、恭介はそんな声を漏らした。

「うぃ」

 ZAPガンのグリップから、そんな声が聞こえる。

 その声はまるで、次の攻撃を促しているように、思えた。

 どうとでもなれ。

 そう思いつつ、恭介は立て続けに引き金を引く。

 まず、落下中の上半身が、何度かの銃撃を受けてきれいに姿を消した。

 続いて、残った下半身も、端から順番に銃撃して、消していく。

 想定外の成り行きに目を丸くしている彼方の姿が、視界の隅に映った。

 ああ。

 と、恭介は、思う。

 あとで説明するの、面倒だな。

 と。

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