表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

135/401

強敵

 異音がして、ほんの一瞬、敵の動きが止まった。

 ような、気がした。

「は?」

 敵の猛攻をどうにか捌き、凌いでいた彼方が、間の抜けた声を出す。

「なんでお前が、接近戦をしているんだよ!」

 敵を挟んで反対側、相変わらずステルスモードで姿こそ見えなかったが。

 そこに居る何者かが、敵に対して攻撃を、それも、かなり苛烈な攻撃をおこなったのは、確かだった。

 その証拠に、敵の六本ある腕のうち、四本が向こう側に回って、剣を受け止めている。

 その剣による打撃はかなり重いらしく、四本の腕は小刻みに増えるていた。

「火遁!」

 その剣の周囲に火炎が起こり、剣自体はあっという間に離れていく。

 おそらく。

 と、彼方は予測する。

 魔力を込めることで重量を増す剣で、恭介が敵を攻撃して。

 その一撃を敵に受け止められたと察した遥が、恭介を抱えて逃げた。

 と、いったところだろう。

「いや、敵の動きが意外と速くて」

 遠くから、恭介の間延びした声が聞こえてくる。

「狙撃するのも難しそうだから、直接どついてみた」

 アホな。

 と、彼方は思う。

 遠方からの飽和攻撃によってに動きを止め、その隙に乗じて決定打を与える。

 今まで、たいていのモンスターは、そのメソッドで仕留めてきている。

 今回の敵は、フットワークが軽くて動きも速いから、その足止め戦法を使う隙がない。

 だから、恭介たちが焦るのも、理解出来ないわけではない。

 だが。

 だからといって。

「紙装甲のやつらが、揃って近接戦闘に振り替えてんじゃねーよ!」

 彼方にしては珍しく、怒気を含んだ声を出す。

 どうしてそうしているのか。

 そこに至った思考は、トレース出来た。

 しかし、その内容を納得が出来るかといったら、別のことになる。

 この敵の攻撃をまともに食らったら、恭介も遥も、一撃で沈む。

 今回対峙しているのは、その程度の重さのある攻撃を、常時普通に放って来る敵なのだ。

 正面から攻撃を受けるのは、自分に任せておけよ。

 と、彼方としては、思ってしまう。

「魔力に対する耐性が強い以上、物理で攻撃するしかないじゃん」

 そういう遥の声は、高速で移動しているせいか、奇妙に歪んでいる。

 三人がそんなやり取りをしている間にも、敵は、彼方へ攻撃する手を休めることはない。

 継続して、絶え間なく、彼方を攻撃している。

 彼方は、それを盾でいなし続ける。

「お」

 敵の顔、その下半分が、がくりと落ちた。

 顎が大きく開き、作り物めいた舌が丸見えになる。

 彼方は、なんとも形容のしようがない悪寒を感じ、本能に従って大きく後ずさり、距離を取る。

 敵の口から、大きな火炎が伸びた。

 かろうじて、盾で受け止めて直撃は免れたが、彼方があのまま距離を取っていなかったら、全身が火だるまになっていたはずだ。

 ヤバいな、こいつは。

 と、彼方は思う。

 生物というより、知性ある存在によって設計された被造物、に、近い存在なのだろう。

 彼方たちプレイヤーが操る人形などよりも、よほど高度な動きと判断能力を持って動く、存在。

「ロボット。

 いや、オートマトンってところかな」

 彼方は、呟く。

 その敵は、三つある顔、すべての口を大きく開いて盛大に火炎を吐き続けていた。

 頭部も、自由に回転させられるようで、ときおりその火炎が円滑に左右に揺れ、吐き出される向きを変える。

 この状態では、迂闊に近寄れない。

 その時。

 大きな、濁音が響く。

 敵の口、その一つに、なにかが飛び込んで、したたかに打撃を与えたらしい。

 口の一つが開いたまま、炎を出さないで、代わりに黒煙を出すようになっている。

 恭介か。

 と、彼方は思う。

 おそらく、敵の足が止まったので、アンチマテリアルライフルあたりで、狙撃をおこなったのだろう。

 その辺の切り替えは、かなり機転を利かせる男だった。

 敵は、残り二つの口を閉じる。

 開いたままの口からは、黒煙を吐き続けている。

「多少は、ダメージになったかな」

 意外と近くから、恭介の声が聞こえた。

「口の中を攻撃しても、その程度かよ」

 どうやら、ステルスモードのまま、刻々と移動し、居場所を移しているらしい。

「来るよ!」

 遠くから、遥の声が聞こえる。

 叱責するような、口調だった。

 彼方は盾を持ち直し、再び敵の攻撃を受ける。

 他の二人が、どういう手段に訴えようとも、構わない。

 気にかけない。

 彼方は、敵の攻撃をひたすら受けながら、そう思った。

 タンクである自分の役割は、敵の注意を引き、ひたすらその攻撃を受け止め続ける。

 それだけだ。

 あとは。

 残りの二人が、どうにかしてくれるだろう。

 そう考えるしか、なかった。


 しばらく、一進一退の攻防が続く。

 敵のアルゴリズムは、思ったよりも柔軟で、恭介や遥による奇襲を受ける度に適切な対応をしている。

 驚いたのは、この敵は何度か武器を持ち替えている、ということだ。

 なにもないように見える虚空から、新たな剣や槍、弓などを取り出したのを確認している。

 どうやらこの敵は、プレイヤーたちが使う、倉庫に似た機能を自由に使えるらしい。

 そして、細身の外観に似合わない、耐久力。

 先ほど、口の中にアンチマテリアルライフルの直撃を受けても、口が閉まらなくなる、といった程度の損傷で済んでいる。

 彼方は、その時の弾頭の種類までは確認していなかったが、どんな弾頭であろうとも、運動エネルギー量自体はそんなに違わない。

 とにかく、頑丈な敵であることは、確かだった。

 さらにいえば、魔法による攻撃が、ほとんど効果がないことも、確認されている。

 多少の傷くらいは与えられるが、大破させることは難しい。

 ありたいにいって、攻略がかなり難しい敵といえる。

 持久戦に、なるかな。

 と、彼方は思う。

 こちらの損耗を最小限に抑えながら、時間をかけて小さな傷を与え続け、どうにか倒しきるところまで、粘る。

 今のところ、他の方法を思いつかない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ