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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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巳のダンジョン

 三人は一度、中央広場に戻る。

 そこは相変わらず賑やかな空間になっていて、大勢のプレイヤーがたむろして休憩したり駄弁ったりと、思い思いに過ごしていた。

 まだ昼には早い時間だったので、中央広場を抜けて政庁一階の食堂に入り、自販機の飲み物だけ買ってテーブルにつく。

 食堂の隅に設けられていた売店に桃木マネージャーが座っていたので、軽く手をあげて挨拶しておく。

 桃木マネージャーも、黙礼を返しただけだった。

 あちらも仕事中だから、邪魔してはいけない。


「狙い目は、巳のダンジョンかなあ」

 攻略wikiを確認しながら、彼方がいった。

「あそこも他のダンジョンとは違っていて、どうも、フロアという概念がないらしい。

 今まで、あそこのダンジョンで最長に粘ったパーティは、四時間以上も中に居たらしいけど。

 それでも、下に降りる階段は見つからなかった、って」

「その代わり、どこかに強制転移させられる魔方陣だらけなんでしょ」

 遥が指摘をする。

「その転移も、どうやらランダムっぽいし。

 よほど気が長くないと、ダンジョンマスターのところまで辿り着ける気がしない」

「でも、うちには、幸運値の高い人が居るから」

 彼方が指摘をする。

「あ」

 そういって、遥も恭介の方に顔を向け、まじまじと見つめた。

「居るねえ。

 珍しく、幸運値が育っている人が。

 キョウちゃん。

 今、幸運、プラスいくつかな?」

「ええと」

 恭介は自分のステータス画面を表示して、確認する。

「今、プラス21だね」

「いけそう」

 遥は、そういって頷いた。


 少し休憩してから、三人は今度は巳のダンジョンに向かう。

 巳のダンジョン前は、少し騒がしかった。

 待っているパーティ数は、三パティほどであり、「混雑している」というほどでもない。

「割と人気なんだね、ここ」

「ダンジョンというよりも、アトラクションみたいな感覚なんじゃないか?」

「ここのモンスターは、そんなに強くはないっていうしね」

 順番待ちをする間に、三人はそんな風に囁き合う。

 巳のダンジョンにポップするモンスターは、二本足歩行型と動物型が半々くらい。

 そのうち二本足歩行型はスキルのような力も使うようだが、実際に戦ってみるとさほど苦戦はしない、という。

 モンスターがさほど強くないのならば、プレイヤーにとってもそれだけリスクは少ない。

 モンスターの強さよりも、ダンジョンマスターの元に辿り着くまでの行程でプレイヤーに苦労を強いるタイプのダンジョンなのだろう。

 一時間半ほど待たされて、ようやく三人の番となる。

 一パーティ当たりのダンジョン内滞在時間が長めだから、待ち時間も長くなる傾向になるらしい。

 その間、三人は雑談を交わしたり、恭介は倉庫の中から本を出して読んだりして、時間を潰した。

 つき合いが長いせいもあって、こうした時に三人でだらだら過ごしてもあまり苦にはならない。

 そうした過ごし方にも、三人はある程度、慣れていた。

 巳のダンジョン内部に入る。

「おお」

 恭介が、呟く。

「本当に、転移魔方陣がある」

「戌のダンジョンで見たものよりも、かなり小さい気がするけど」

 彼方も、そうコメントする。

「転移魔方陣、らしいね。

 このサイズでも、機能はするのか」

 魔方陣の中に記されている文字列は、恭介たちが知るどんな文字にも似ていない。

「ひょっとしたら、あとで解読とか出来る可能性もあるから」

 彼方はそういって、魔方陣の画像に撮った。

「はい、男子ども」

 遥がいう。

「さっさと先にいくよ」

 三人は、ほぼ同時に転移魔方陣を踏む。


「子のダンジョンの時よりは頻繁に出て来て、歯ごたえがない感じかなあ」

 何度か転移をしてあとで、恭介はそう感想を漏らした。

 このダンジョンに出没する、モンスターについての印象になる。

「子のダンジョンに出て来たモンスター、確かにここのよりは丈夫だったかも」

 遥も、そうこぼす。

「どっちのモンスターも、ほとんど一撃で片付けているけどね」

 彼方が、事実を指摘した。

「それも、かなりの遠距離で。

 うちのパーティ、ほとんど近接戦用兵力、要らないんじゃないかなあ」

「そこはそれ、今のうちに楽をしている。

 とでも、思ってて」

 遥がいった。

「はい、そっちの方向」

「はいよ」

 そういう雑談の合間にも、恭介はZAPガンでモンスターを狩り続けている。

「これじゃあ、散歩しているのとたいして変わらないね。

 緊張感にかけるっていうか」

「本当に緊張していたら、少なくとも勝ち目は薄くなるんだけどな」

 恭介がいった。

「リラックスした状態で全力を出せるのが、理想だよ」

「そうだねー」

 遥も、その意見に同意した。


「誰だよ、四時間以上かかるとかいったやつ」

「今、入ってから、ようやく一時間ってところかな」

「誰かさんの幸運値のおかげ。

 っていうことに、しておこう」

 物々しく強大な扉の前で、三人はそんなことをいい合いながら、コートを脱いで倉庫にしまう。

 恭介は杖を、彼方は盾を、遥はゴーグルをそれぞれ倉庫から取り出して身につけた。

 恭介と遥が、ステルスモードに移行する。

「このダンジョン、ボス部屋まで辿り着いたプレイヤーは居ないから。

 当然、中にどんなやつが居るのか、まったくわからない」

 彼方がいった。

「最大限に警戒して、身を引き締めていこう」

「了解」

「わかった」

 恭介と遥は、ステルスモードのまま頷く。

 前の時と同じく、扉の直前で恭介が杖を構え、彼方と遥が巨大な扉を押し開ける。

 これまでに体験したダンジョンマスターの部屋よりも、ずっと広い空間が広がっていた。

 その中央部に、ぽつんとひとつだけ、異形が座っている。

 恭介の放った巨大な火球は、その異形に向かって進んでいく。

 ただ、その空間が広すぎて、火球が異形に到着するまで、まだ数秒はかかりそうだ。

「三面六臂、っていうやつかなあ」

 彼方が、その異形について形容した。

「一つの頭部に顔が三つ着いていて、それぞれの顔の向きに合わせて両腕がある。

 三つの顔に、六本の腕。

 仏像なんかに、よくある造形だ。

 あれが、生物なのか人形なのかは、よくわからないけど」

「気をつけて」

 ステルス状態の遥が、小声で注意をした。

「あれ一体しかいないっていうことは、あれ、赤鬼と同等かそれ以上の強さになるよ」

「着弾」

 同じく、ステルス状態の恭介が報告する。

「でも、ああ。

 凄いな。

 無傷に見える。

 今回のは、強力な魔法耐性持ちらしい」

 呆れたような口調でいいながら、恭介は倉庫に杖をしまい、代わりにアンチマテリアルライフルを取り出す。

「来るよ」

 そういう遥の声は、途中で遠ざかっていく。

「彼方、うまく受け流して」

「囮、よろしく」

 恭介も、その声を最後に完全に気配を消す。

「はいはい」

 猛然とこちらに迫ってくる敵に対して鹵獲品の盾を構えながら、彼方はいった。

「タンク役は、敵を引きつけてなんぼってね」

 いい終えた直後、距離を詰めてきた敵が、盾に激突する。

 体当たりをしたあと、六本の腕を駆使して別方向から、間髪を入れずに攻撃が来る。

 そうした攻撃を、彼方は平然と受け止め、受け流した。

 六本の腕には、それぞれ剣や矛などの武器が握られている。

 全長三メートル、っていうところかな。

 攻撃を受け流しながら、彼方は観察する。

 細身であることも手伝って、遠くに居た時は、大きさを性格に目測出来なかった。

 華奢な印象に関わらず、攻撃は重いし、早い。

 なにより、動きに遅滞がなく、間髪を入れずに次の攻撃に移行するので、隙がない。

 自分一人で相手をしたら、長く保たないな。

 と、彼方は、そう思った。

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