表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

133/401

攻略再開

「ああ、やるの?」

 夕食の席で恭介が切り出すと、遥はあっさりと頷いた。

「いいよ、別に。

 どうせ、いつかは手を着けると思っていたし」

「農作業も、春先からが本番のつもりでいるしね」

 彼方も、すぐに承諾する。

「いつまでも、後回しにしている理由もないかな」

 自分たちの新居がすでに完成している今、ダンジョン攻略を躊躇うべき理由はない。

 二人とも、そう考えているようだった。

「師匠たち、ついにいくんですか?」

「わたしたちと同時に攻略していく感じになりますね」

 赤瀬と仙崎がいった。

 魔法少女隊の住居も、完成したばかり。

 もともとこの四人は、自分たちの住居が完成すればダンジョン攻略に乗り出すと、公言していた。

「戌と子、師匠たちはすでに二つのダンジョンを攻略している」

「最初の戌は、ダンジョン全部を攻略したことになるのかなあ?

 ダンジョンマスターは、倒しているけど」

 緑川と青山は、そんなことをいい合っている。

「その辺は、全部のダンジョンを攻略すればわかるだろう」

 八尾が、意見を述べる。

「戌を除く十一カ所を全部攻略して、なにも起こらなかったら改めて戌のダンジョンを攻略すれば無駄がない」

「他の真面目なプレイヤーたちが、クソ真面目に攻略に精を出しているからな」

 三和は、露悪的ないい方をした。

「今なら、各ダンジョンの情報も、初期よりはよほど揃っている。

 攻略するのには、有利な条件といえるだろう」

「なんか、欲しい装備とかない?」

 岸見が、訪ねた。

「あんまり凝ったのだと時間はかかるけど、出来るだけリクエストに応えるよ」

「おみやげに、新しい素材と魔石プリーズ」

「あ、ちゃんと対価は支払いますからね」

 青葉と紅葉の浅黄姉妹は、そういった。

「新しい服とか、要ります?」

 樋口が、訊ねてきた。

「可能な限り、即納しますが」

「あ、じゃあ」

 遥が、片手をあげた。

「ぼちぼち防寒着、アウターが欲しいかな。

 めっきり寒くなってきたんで、ぬくいのが欲しい」

「はい」

 樋口は、頷く。

「それくらいなら、すぐに対応出来ます」

「それと、あまり派手じゃないの」

 重ねて、遥が条件をつける。

「金ぴかとか、人目を引く色使いとかは勘弁して欲しいかな」


 翌朝、樋口は本当に三人分のコートを届けて来た。

 一見して生地が薄いように見えたが、実際に来てみるとかなり暖かい。

 色は、恭介と彼方の分がモスグリーン、遥の分がアイボリーホワイト。

 この色とデザインなら、街中で着ていても、そんなに人目は引かないだろう。

「ああ、ありがたい」

 遥はそういって、樋口のいい値でポイントを支払う。

 生地に何種類かの付与効果を与えているとかで、それなりの値段だった。

 ここで値引き交渉をするほど、この三人はポイントに困ってはいなかった。

 三人は前のダンジョンマスター戦で入手した装備を身につけ、その上にコートを羽織る。

 そのまま、マウンテンバイクに跨がって市街地へと向かった。

 舗装されたばかりの道は、快適だった。

 道幅が広くなっているのを見ると、舗装の際に両脇の木をいくらか伐採したらしい。

 元の世界風にいえば、二車線、プラス、両脇にかなり広めの歩道分、くらいの道幅になる。

 三人以外に、通っている車両も通行人も居ない。

 市街地まで、何者にも邪魔されずにマウンテンバイクを飛ばすのは、予想以上に気持ちがよかった。


 まず中央広場に向かい、そこで各ダンジョンの混雑情報を得る。

「まだ早いのか、割と空いているな」

 恭介は、政庁の壁に設置されているディスプレイを見あげながらいった。

「どこも、そんなに並んいない」

「じゃあ、寅のダンジョンにいかない?」

 遥が、提案して来る。

「あそこのダンジョン、出て来るモンスターはそんなに強くはないけど、とにかく数が多いっていってたし」

「寅っていうと」

 彼方は、少し考え込む表情になった。

「とにかく虫が、うじゃうじゃ出て来るところか。

 別にいいけど、いまだに誰にも攻略されていないってことは、なにか理由があると思うんだよね」

「いってみればわかるよ」

 恭介はいった。

「虫が出るだけなら、広域殲滅戦に向いている魔術師なら一発でクリア出来るはずだし」

 別に、攻略しにくい、なんらかの理由があるんだろうな。

 とは、恭介も思う。


 コートを着ているせいか、誰も三人に気がつかないようだ。

 それとも、顔は知られていても、これまで拠点に引っ込んでいたせいで、今、この場に出て来ているとは思われていないだけか。

 とにかく、二十分ほどの待ち時間も、誰からも声をかけられることなく、穏やかに過ごせた。

 順番が回って来て、三人はダンジョンの扉に掌をおしつけ、寅のダンジョンの中に入る。

「うわ」

「確かに、虫だらけだな」

「これ、殺虫剤とかでなんとかならないのかな?」

「それよりも魔法を使う方が、手っ取り早い」

 恭介は杖を取りだして前方に特大の炎を進ませ、そこに居た虫たちを一掃する。

「酸欠には、ならないのかな?」

「ここかなり広いみたいだから、大丈夫じゃないか。

 もしもそうなっても、おれたちが倒れるよりも先にこの炎が消えると思うし」

 そんなことをいい合いながら、三人は先へと進む。

 このダンジョンの内部は、ごつごつとした岩肌が剥き出しになっていて、あまり人造物という印象がない。

 光源がどこにあるのかさっぱりとわからないが、どこまで進んでも不思議に暗くなるということもなかった。

 まあ、無限にモンスターがポップする、不思議な空間だしな。

 と、恭介も、

「そういうものだ」

 的に、割り切ることにする。

 深く考察したところで、身のある結論に至る気がしなかった。

 十分ほどいくつかの曲がり角を挟んで進み、唐突に、三人は足を止めた。

「ああ、なるほど」

 彼方がいった。

「このダンジョンがこれまで攻略されていないのも、やはり理由はあったんだな」

 恭介たちがこれまで進んで来た通路はそこでぷっつりと途切れ、足元には広い空間が広がっている。

 恭介の足元から二十メートル以上の距離を挟んだ空間の下に、視界の先まで埋め尽くす大小の虫がひしめていた。

「下の虫を魔法で一掃するのは、可能だと思う」

 恭介は、冷静な声で指摘をする。

「ただ、この距離を真下に移動する方法は、思いつかない。

 多少骨折してもいいんなら、思い切って飛び降りるという方法もあるけど」

 致命傷さえ避ければ、そのあとで、回復術とかポーションで治療する。

 という手段が、あることはあるのだ。

「痛いね、それ」

「痛いな」

 遥が確認し、恭介は頷く。

「お勧めは出来ない」

「恭介、浮遊とか、空を飛ぶ魔法を使えなかったっけ?」

「おれは、使えないな。

 今のところ空を飛べる魔法は、あの四人の専売特許だ」

「では、いったん外に出てもいいんじゃないかな」

 彼方はいった。

「ここで無理をする必要もないし」

「賛成」

 遥が、片手をあげてその意見に賛同した。

「なんならさ、ここは先にあの子たち攻略して貰って、そのあとで詳しい情報とか聞いて攻略するっていうのもありだし」

「じゃあ、いったん外に出るか」

 恭介はそういって三人がコートを羽織るのを待ち、片手をあげ、

「おれたちのパーティは攻略失敗を認め、ここでリタイアします」

 と、宣言する。

 次の瞬間、恭介たち三人は、寅のダンジョンの扉前に居た。


「出て来る時間から見て、断層までは着いた感じか?」

 順番待ちをしていたパーティから、そう声をかけられる。

「そうそう」

 遥が、軽い口調で応じる。

「下調べなしでいきなり入ったもんで。

 あんな風になっているとは、思っていなかった。

 なんの準備もしていなかったし、いったん出て来たってわけ」

「そんなところだろうな」

 その男子は頷く。

「アンカーと縄ばしごとか、その手の道具を用意しておけば、あの下までは降りられるはずだ」

「その先にも、まだなんかあるんだ?」

「あるな。

 詳しくは、攻略Wikiでも読んで参考にしてくれ。

 それじゃあ、おれたちもいってくる」

 そういって、次のパーティが扉の向こうに姿を消す。

「攻略Wiki、か」

 彼方が呟く。

「大勢でダンジョンを攻略しているんだから、そりゃ、そういうのも出来るよな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ