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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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近況と躊躇

 恭介たち三人の新居が完成してから、数日が経過した。

 その間、トライデントの三人は魔法少女隊の家造りを手伝ったり、農作業をするための準備などをして過ごしている。

 最初の作物として、彼方はジャガイモを選択した。

 比較的栽培がしやすく、カロリーベースで見ても栄養素的に見ても、効率がいい作物だったから。

 というのが、理由になる。

「ただ、季節がなあ」

 彼方は、そうぼやいた。

「ちょっと、遅めになっているかも知れない」

 ジャガイモを栽培する季節として適しているのは、春と秋。

 このうち、より栽培がやさしいのは春。

 この土地の季節の移ろいについては、相変わらず知る術がないのだが、最近、日に日に気温がさがっているのは確かだった。

 彼方としては、

「最初からうまくいくはずがない」

 程度の認識で、作業を進めている。

 種芋を購入して日光にさらし、発芽を促す。

 人形たちに森の中から落ち葉を拾い集めさせて、拠点内の一画に積みあげて堆肥を作る準備をする。

 マーケットで購入した肥料などを漉き込みながら、土を耕す。

 そうした地味な作業を、恭介や遥、人形たちに手伝わせながら淡々と続けていた。


「やあ、どうも」

 そうして過ごしていたある日、生徒会の常陸庶務が拠点を訪れた。

「舗装工事が、ぼちぼちこちらまで届きそうなんで、挨拶に来ました」

 そういえば、最近、工事をしているらしい物音が、拠点にまで届いて来ることがあった。

 わざわざ挨拶に来た常陸は、招き入れたれた恭介たちの新居を物珍しそうに見回す。

「へー。

 これが」

 不躾、という味方も出来るが、この常陸にとっては、それだけこの家が物珍しいのだろう。

「家を造っているとは聞いていましたが、本当に完成したんですね。

 いや、ご立派な。

 お世辞抜きで、想像よりもずっとちゃんとしていたんで、かなり驚きました」

 遠慮のない物言いをするやつだな。

 と、恭介は内心で苦笑いを浮かべる。

 よくいえば素直、そうではない見方をすれば、根が単純な性格なのだろう。

「市街地の方は、相変わらずなの?」

 彼方が、訊ねた。

「相変わらず、なんでしょうね」

 常陸はそういって、頷いた。

「とりたてて、問題は起きていません。

 いや、細かい不満点などは、例によってプレイヤーたちからちょいちょいあがっているんですが。

 そういうのってたいてい、おれたちにはどうしようもない問題か、それとも長期的に、地道に労力をかけていかないと解決しないタイプの問題なんで。

 少なくともこちらに相談をしたくなるような問題は、起こっていません」

「市街地の人たちが、自力で解決不能な問題は起こっていない」

 彼方が確認する。

「そういう解釈で、間違いない?」

「ええ、そうです」

 常陸はぶんぶんと何度も大きく頷いた。

「おれ、そういいたかったんです。

 会長からも、今回はなんにもことづかっていませんし」

「まあ、大事ないようでよかったよ」

 恭介がいった。

「またなんか無理難題を押しつけられるのかと、いつも心配なんだ」

「いえいえ。

 確かに、最初の方はトライデントの方々にも、いろいろお世話になっていますが。

 最近は、実に落ち着いたもので」

 常陸は、そうまくしたてる。

「あ、そういえば、ひとつだけ。

 会長から確認してくるようにいわれてました」

「それは、なに?」

 即座に、遥が反応する。

「あ、いえいえい。

 別に、お願いというほどでもないんですけど」

 常陸は、慌てた口調で反応する。

「その、卯のダンジョン攻略を手伝って貰った分の報酬がまだだから、なにか欲しいものとかがあったら遠慮なくいって欲しい。

 会長からは、そういわれています」

「ああ、そういえば」

 恭介も、頷く。

「そっちの報酬は、まだ貰っていなかったな」

 あの直後、子のダンジョンを攻略してしまった騒動とかあったので、恭介たちはその件について、すっかり忘れていた。

 あれから、生徒会に連絡すら取っていない。

 だから、催促されている形になる。

「それって、別に急ぐ用件でもないんでしょ?」

 しばらく間をおいて、遥がいった。

「なにかあったらこちらから連絡するから、しばらくお待ちくださいって会長には伝えておいて」

 実質、保留ということになった。

 常陸としても、こうして恭介たちに伝えたことで用件は済んでいると考えているのか、それ以上に催促してくることはなく、素直に頷いている。

「あと、それから」

 恭介は、そういい添えた。

「工事に従事している人たちに、伝えて。

 こっちまで足を伸ばすのが億劫ではなかったら、休憩場所くらいは提供するって」


 酔狂連の中で、マネージャーの桃井と武器職人の岸見は、交替で数日おきに市街地を訪ねていた。

 酔狂連が造った製品を売るは、だいたい生徒会が運営する売店に任せていたが、オーダーメイドとなると人任せにも出来ない。

 毎日とはいかないが、二日か三日に一度はこの二人が市街地に赴き、ユーザーから直接細かい要望などを聞いて、製品に反映させている。

 物作りという行為に関していえば、酔狂連というポーティは基本、愚直なまでに誠実だった。

 そのおかげか、市街地内部でも次第に人形を作ったり使ったりするプレイヤーが増えている。

 もともと、労働力は不足がちだったし、なにより、不平不満をいわずに黙々と働く手下は、ひどく便利なのだ。

 政庁の一階には生徒会が運営する食堂があるのだが、そこの調理場、清掃、皿洗いなどの労働は、今ではほとんど人形によってまかなわれている、という。

 実際の調理は、手順が細かく味の調整などがあるため、まだまだ人間が直接やった方が早いくらいだったが、保温された料理を皿に盛って出すくらいは、人形で十分だった。

 こうした人形を活用することによって、食堂は営業時間が延び、同時に、かなりの省力化に成功している。

 他のプレイヤーたちも、自分たちの拠点内部の整備をこうした人形たちに任せる例が多いようだ。

 ダンジョン攻略がはじまって以来、ほとんどプレイヤーはそれ以前と比べると、潤沢なポイントを得られるようになっている。

 新居を造ってしまった恭介たちではないにせよ、自分たちの住居に手を入れて、多少なりとも居心地をよくしようとするプレイヤーたちは多かった。

 というより、ここに至って、ようやくそこまで気にするくらいに、心理的な余裕が出来た。

 と、いうべきだろうか。

 家具や内装品をマーケットで購入するプレイヤーが、増えているという。

 それと、浄水槽を導入しはじめるパーティも増えていた。

 ダンジョンの攻略が長引くに連れて、パーティメンバーの固定化が進み、以前ほどの流動性はなくなった、ともいう。


「でも、大多数のプレイヤーは、レベルでいうと七十前後に固まっているんだよなあ」

 ランキングの画面を確認しながら、恭介は呟く。

 恭介たちが子のダンジョンをかなり楽に攻略出来た一番の要因は、恭介たち三人のレベルが、すでに九十以上はあったおかげだろう。

 と、恭介は思っている。

 どうやらあのダンジョンは、レベル九十前後で攻略可能なように、設定されているらしい。

 そう考えると、レベル七十前後のプレイヤーなら、苦労するのは目に見えていた。

 こうして攻略が長引いているのも、決して理由がないわけではない。

 単純に、多くのプレイヤーが、クリア可能な実力に至っていないからだ。

 魔法少女隊の四人は、自分たちの家が完成したら、ぼちぼちダンジョン攻略に挑戦するつもりらしい。

 彼女たちのレベルは、現在、八十後半。

 多少苦労するかも知れないが、案外あっさりダンジョンを攻略してしまうのではないか。

 と、恭介は、予測をする。

 そうなると、なにか変わるかなぁ?

 いや、あまり、変わる要素もないか。

 どこかのパーティが、十二カ所あるダンジョンの全部を攻略すれば、なんらかの変化があるのかも知れないが。

 その全ダンジョン制覇に一番近いパーティは、おそらく恭介たちのトライデントなのだ。

 レベルで判断すると、そういうことになる。

「どうするかなあ」

 ぽつりと、口に出して呟く。

 他の二人に、相談するべきだ。

 と、恭介は思う。

 返答は、わかりきっている気もするが。

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