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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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卯のダンジョン

 まず恭介が杖を掲げて雷撃の魔法を水中にお見舞いする。

「いい感じ」

 パーティ共有の倉庫内に、続々と大量のモンスターの死体やらごく少量のドロップアイテムが入ってくるのを確認した彼方が、告げる。

「まだまだ、来てるね。

 まだ。

 まだ。

 はい、止まった。

 もう、入ってもいいかな?」

「最終的に、どれくらいのポイントが入ったんだ?」

 鹿骨が訊ねる。

「ポイントだけだと、五百八十五万、かなあ」

 彼方と同じようにシステム画面をチェックしていた遥が答えた。

「そ、そうか」

 鹿骨は、若干、うろたえたようだった。

「そんなに、か」

「恭介の魔法、ちょっとおかしいから」

 遥が、慰めるようなことをいう。

 以前に聞いた時は、この入口で一発魔法を使うと、一回で十万単位のポイントが入る、とか、いっていた。

 しかし、恭介の場合、文字通りに魔法の威力が桁違いなのだろう。

 通常の感覚で比較すると、いろいろと不安になって来ることは、理解が出来た。

「近場のモンスターは全滅した、ってことでしょ?」

 墨俣ジョーズの女子が、そんなことをいう。

「リポップする前に、中に入ろうよ」

「そのために来たんだしな」

 恭介はそういって、レギュレーターを咥える。

「この中の偵察も兼ねているし、迅速に行動しよう」

 六人は前後して水の中に飛び込んだ。


 一度水の中に入ると、プレイヤー同士のコミュニケーションはかなり限定される。

 システムを介した通信は音声がメインであったし、レギュレーターを咥えている状態だと、当然、会話は不可能だった。

 システムにキーボードを表示させて文章を打鍵する、という方法はあったが、これは、いかにも迂遠で時間がかかり、とっさの場合には役に立たない。

 結局、手振りなどのジャスチャーで意思を伝え合うしかない。

 水の中は深くて、広かった。

 あまり深く潜ると光源が乏しくなるので、六人は深度二メートルくらいを保持しながら先へ先へと泳いでいく。

 卯のダンジョン入口付近になるこの付近は、広大な、なにもない場所になっていて、先になにがあるのか見通せない。

 そのまま、何百メートルか、黙々と水中を泳いでいく。

 しばらくそうして、はじめて壁にぶつかる。

 鹿骨が手振りで、

「浮上しよう」

 と全員に伝え、その指示に従って全員が浮上した。

「壁にぶつかったわけだが」

 鹿骨はいった。

「この壁伝いに移動するにして、まずどちらに行く?

 右か、左か」

「どっちでも同じでしょ」

 墨俣ジョーズの女子がいった。

「結局、両方調べないといけないわけだし」

「でも、時間制限もあるし」

 墨俣ジョーズの、もう一人の女子も意見をいう。

「この拾い場所で一斉にモンスターがリポップしはじめたら、この人数では対処しきれないっしょ」

 墨俣ジョーズが出して来た三名のうち、鹿骨を除く二名は女子だった。

 先に発言したのが斎木で、あとに発言したのが阿辻。

「モンスターがリポップするまで、ここで立ち往生している?」

 遥が、指摘をする。

「鹿骨。

 一応、この六名のリーダーはあんたなんだから、こんなことは自分で決めていいよ。

 いちいち、他のメンバーの意見を聞かなくても」

「だね」

 彼方も、その言葉に頷いた。

「それよりも今は、時間が惜しい。

 今回、一番優先させるべきは、このダンジョンの調査なわけでさ。

 このままだと、モンスターの分布状況、入口付近しかわかっていない。

 そんな状態で、終わっちゃう」

「あと、出来れば、戦闘データななんかも持ち帰りたいんだけど」

 恭介が、そう続けた。

「そのためには、いつまでもこんな広い場所に居るより、もう少し狭い場所に移動したいんだが」

「わかった」

 鹿骨はそういって、レギュレーターを咥えた。

「しばらく、おれが先導する」

 六人は再び潜水し、進みはじめた。

 入口を背にして、壁伝いに、右の方向に。


 さらにしばらく進むと、幸いなことに、壁に切れ目が入った、隘路が見つかった。

 鹿骨は手振りで合図して、六人をその中に誘う。

 隘路の中に入ると、思ったよりも暗かったので、六人はそれぞれのヘッドライトをつけた。

 静かで、なにもないな。

 と、恭介は思う。

 が、すぐに、遥が反応した。

 手首を閃かせ、短剣を投げる。

 この六人の中で、遥の察知が、一番遠くまで感知出来た。

 六人は、短剣が進んだ先に向き直り、臨戦態勢を取る。

 しかし、しばらくして、遥は右手の指で丸を作って示した。

 どうやら、短剣の一撃で、脅威を葬れた、らしい。

 六人は頷き合って、さらに先に進む。


 モンスターとの遭遇は、さほど頻繁ではなかった。

 あったとしても、遥が、続いて恭介が反応すると、即座に片付く。

 感知能力では遥が、攻撃能力では恭介が、他の六人よりも遥かに優れていたため、他の四人の出番はほとんどなかった。

 恭介自身の属性もあって、ZAPガンは、なんだかんだいって頼りになった。

 隘路は、水中だけではなく、水上も開けた状態であったので、ときおり、頭を上に出して休憩出来た。

 そうした時には、短く会話などもしている。

「こういう通路、定期的に形が変わるんだよね?」

 阿辻がいった。

「もったいないなあ。

 地形データとか、あとで来る人も利用出来ればいいのに」

「ダンジョンによって、地形が変わる頻度は違うみたいだけど」

 斎木がいう。

「まあ、どんなモンスターが出て来るのか、くらいは参考に出来るかな」

「このダンジョンに関していえば、ここまで潜ったのはぼくらがはじめてだから」

 彼方が、システム画面を確認しながらいった。

「持ち帰るデータは、かなり貴重なはずなんだけどね。

 今のところ、魚っぽいモンスターがほとんどで、たまに、甲殻類っぽいのとか、頭足類っぽいのが混ざっている感じかなあ」

「甲殻類はわかるけど、頭足類って?」

「イカとかタコとか、あっち系の生物」

 彼方が斎木の疑問に答える。

「一説によると、かなり頭がいいそうだから、警戒しておく方がいいね。

 魔法とか使われたら、手こずるかも知れない」

「魔法を使う、イカやタコ」

 斎木は、そういったあと、しばらく絶句していた。

「想像すると笑っちゃいそうだけど、そうだよね。

 こんな世界だしね。

 なんでもアリだよね」

 阿辻は、自分自身に信じ込ませるような口調でそういって、何度も頷いている。

「仮定の問題は、ともかく」

 恭介がいった。

「この先、どんなモンスターが居るのか。

 実際に進んでいけば、いやでもわかる」

「だよねー」

 遥は、頷いた。

「論より証拠、空想よりも体験」

「では、そろそろ再開するか」

 鹿骨はそういって、レギュレーターを咥えた。

「あまり長居をしても集中力が続かないので、今から一時間後を目安にして、ダンジョンを脱出しよう。

 このまま、何事もなければ、だが」


 幸いなことに、その後もたいしたアクシデントは起こらなかった。

 六人は一度浮上して短く相談したあと、卯のダンジョンから脱出する。

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