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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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再会

 樋口和穂は、遥の様子に気圧されている。

 圧が強い。

 それだけではなく、確かに、いっている内容は、間違いではないのだ。

 少なくとも樋口には、間違っていないように思える。


「この世界は、否定しようがないリアルだから」

 遥がいった。

「今後、なにかの拍子に元の世界に帰還する方法が、見つかるかも知れない。

 でも、今この時点では、その手掛かりすらない。

 だったら、今後も、ここで過ごすことを前提に、自分のことを考えなければならない。

 ここまでは、理解出来る?」

 樋口は、こくこくと無言のまま頷く。

「で、ここには、両親とか教師とか、頼りになる大人たちも居ない。

 大人たちが作った社会とか、インフラとかもない。

 全部、自分たちの手で、どうにかしていくしかない。

 これ、サバイバルなんだよ?

 マーケットとかポイントとか、そうしたシステムの支援があるから、若干マイルドに思えるのかも知れないけど。

 この世界は、決してゲームなんかじゃない。

 ここまで、理解出来ている?」

 樋口はまた、こくこくと頷く。

 そうだ。

 ここには、大人たちは居ない。

 もう、その都合に振り回されなくてもいい。

「この前提に立って、もう一度確認するけど。

 樋口さんは、今後、なにをして生きていきたい?

 これは、そういう問題だから」

「ええ、と」

 樋口は、忙しく頭を回転させる。

 なんで、こんなことになったんだろう?

「もう、誰かの期待に、応えなくてもいいんですか?」

「樋口さんが、これまでどういう生き方をしていたのか、知らないけど」

 遥は、指摘をする。

「その、期待をしている誰かって、この世界に居るわけ?」

 そう、なのだ。

 これまで、樋口自身の価値観を規定して来た存在は、すべて、元の世界にしか、ない。

 元の世界での方法論が、そのまま通用すると盲信していたのが、根本的な間違いであって。

「わたしたちは」

 樋口は、そう結論する。

「もう誰も、手助けはしてくれない。

 そう、なんですよね?」

「まあ、そうね」

 遥は、頷いた。

「わたしらにとっては、元からそれが当たり前だったけど」

「とりあえず、モンスターを倒す生活は、いやです。

 自分に向いているとは思えない」

 考えつつ、樋口はその思考を口に出す。

「自分になにが出来るのか、っていったら。

 家事とか、うん、裁縫も、か。

 誰にでも出来る仕事には、付加価値はつけられない。

 裁縫が、今の自分でも出来そうで、なおかつ、他の人には簡単に真似されそうもない労働になるわけで。

 うん。

 最初に勧められた通り、服飾関係にスキルとか全振りにした方が、他の道を選ぶよりは、勝ち筋がありそうです」

「自分で選んだのなら、それでいい」

 遥は、そういって頷く。

「仮にこの先、失敗したとしても、踏ん切りがつくでしょうし」

 結局、そこ。

 つまりは、失敗した時、自分の弟である彼方に矛先が向くのが。

 遥は、気に入らなかったのかも知れない。


「終わった?」

 当の彼方が、のんびりとした口調でいった。

「樋口さん、なにか、食べたいものとかある?

 今日の夕食、まだメニューが決まっていないんだよね」

「自分で作るんですか?」

 樋口が、確認する。

「レトルトとかではなく?」

「たまにはレトルトにしてもいいんだけど、毎日それだと飽きるでしょ」

 彼方はいった。

「早いところ用意しないと、人数が多いから、大変なんだよね」

「多い、って。

 全部で、何人になるんですか?」

「樋口さんを入れて、十四人のはず。

 予定外のお客さんとか、来なかったら、だけど」

「十四人」

 樋口は、少し絶句した。

「どうして、そういうことになるんですか?」


 樋口が、

「麺類が食べたい」

 とリクエストしたので、その日は鍋焼きうどんになった。

 鉄鍋にうどんと具材を並べ、つゆを張ってから、カセットコンロや七輪を総動員して、ぐつぐつ煮込んでいく。

「パスタはこの前、やったしなあ」

 と、恭介は供述する。

「ラーメンは、なんか面倒臭い拘りを持っている人が多そうで、あまり出したくない。

 あれ、本格的にスープとか作りはじめると、すっげぇ手間が取られるし」

「この拠点には、現在三つのパーティが居住していて」

 樋口は、先ほど教えられたことを口に出して整理している。

「トライデントが、三人。

 魔法少女隊が、四人。

 酔狂連が、六人」

「そのうち、酔狂連というのが、生産職のパーティで」

 彼方が補足説明をする。

「樋口さんがこのまま服飾関係の生産職になるんなら、そっちのパーティの世話になった方がいいと思う。

 生産物の流通とか、酔狂連さんは現在進行形で構築している最中だし」

「酔狂連。

 さっき見かけた、八尾さんって人が入っているパーティ、でしたっけ?」

「うん。

 他にもいろいろ居るけど、あそこも、女子の方が多いくらいだから。

 そんなに居心地は悪くない、と、思うけど。

 まあ、詳しくは夕食の時にでも紹介するから、その時に相談しよう」

「はぁ」

 この辺の事情には、詳しくないわけで。

 樋口としては、生返事をするしかない。


「ばんわーっす」

「おお、だし汁の香りが」

「今晩は、鍋焼きですか」

 少しして、魔法少女隊の四名が、どやどやと入ってくる。

 ここで本格的に樋口を四人に紹介して、四人の方も自己紹介をする流れとなった。

「皆さんは、ダンジョンに行かなくてもいいんですか?」

 その際、樋口は気になっていたことを訊ねる。

「実は今、わたしら、レベルがあがり過ぎている状態で」

 四人を代表して、赤瀬が説明する。

「全員、八十後半。

 他のプレイヤーがこっちにあがって来るまで、少し待っていた方がいいかなあ、って」

「あんまりレベルをあげ過ぎると、生徒会から用事を頼まれる回数も増えるんだよ」

 実感の籠もった口調で、恭介が補足をした。

「そういう面倒があるんで、あんまり他のプレイヤーと差をつけるのは、得策ではないんだ」

「はぁ」

 これにも、樋口は生返事をする。

 正直にいって、よく理解出来ない。

 ただ、この二つのパーティが、他のプレイヤーたちとは違った論理で動いていることだけは、どうにか、理解が出来た。

 続いて、酔狂連の面々も、集まってきた。

「おお、なんだ。

 樋口が居るではないか」

 三和が、薪ストーブの間に入るなり、そういった。

「息災だったか?

 元気ならば、それでいいが」

「三和ぁ!」

 樋口が、大声を出す。

「なんであんたがここに!

 え。

 ええっ!

 それに、引きこもり不登校の浅黄姉妹まで!」

「お知り合い?」

 恭介が、傍らの桃木に訊ねた。

「浅黄姉妹とうちのリーダーの三和、それに、浅黄姉妹と、こちらの樋口様は、同じマンションにお住まいで。

 つまり、元の世界では、ということですが」

 桃木は、淡々と説明した。

「年齢も近いし、自然に幼少時から顔見知りにはなるかと」

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