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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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樋口和穂

「ど、どうも」

 目深にフードを降ろしたパーカー姿の女子が、三人に頭をさげる。

「その、樋口です」

「確認しておきたいんだけど」

 まず遥が、口火を切った。

「樋口さんは、このまま市街地には居たくない。

 それで、間違っていない?」

「そうです」

 樋口は頷く。

「出来れば、昔の知り合いと、顔を合わせたくなくて」

「うちの拠点に移動するのはいいけど、そうなるとポイントを稼ぐ手段は限られて来る」

 彼方がいった。

「結城さんにも説明したけど、君には君にしか出来ない手段で、ポイントを稼いで貰おうと思っている。

 その点に、異存はないかな?」

「それも、了解です」

 樋口は、これにも頷いた。

「モンスターを相手にするよりは、ずっといい」

「なら、ここままついてきて貰おうか」

 恭介が、いった。

「って、そういや、足はどうしよ?」

「樋口さん、チャリくらいは乗れるよね?」

「乗れますけど」

 遥が確認すると、樋口は口を尖らせた。

「なら、よし。

 もう一台、チャリ買っちゃおう。

 この子のために全員で歩くのも、馬鹿らしいし」

 遥はそのままシステム画面を開き、マーケット画面でマウンテンバイクを注文する。

「それでは、くれぐれもお願いしますね」

 結城紬が、柔和な物腰で頭をさげた。

「樋口さんも、お元気で」

「あ、はい。

 今まで、お世話になりました」

 樋口も慌てて、結城紬に頭をさげる。

「はい、これ、樋口さんのチャリ」

 遥が、樋口に告げる。

「これに乗って、ついてきて。

 知り合いに気づかれたくないんなら、さっさと移動した方がいいでしょ?」

「あ、はい。

 ありがとうございます」

 樋口は渡されたマウンテンバイクに飛び乗り、慌てて三人のあとを追う。


「わあ」

 樋口は、市街地から出たところで感嘆の声を漏らす。

「街の外、こうなってたんだ」

「日々寒さが増しているから、多分、秋なんだと思う」

 先行していた彼方が、説明してくれる。

「本格的に紅葉してくるのは、これからなのかな」

 市街地の中は、壊れかけの建物とか本格的な廃墟しかなかった。

 それと比較すると、森の中を走るこの道は、かなり景色がいい。

「道が悪いから、気をつけてね」

 彼方は重ねて、そう注意する。

 三人の中で、この男子が一番親切だな。

 と、樋口は思う。

 唯一の女子、遥は、態度がぶっきらぼうだし。

 もう一人の男子、恭介は、口が重いのか、この時点では樋口に、ろくに話しかけてこない。

 まあ、この三人にしてみれば、結城紬にていよく樋口を押しつけられたわけであり、愛想をよくする理由もないのだが。

 その程度の自覚は、樋口にもあった。

 これから、どうなるんだろう?

 と、樋口は思う。

 彼方の説明によると、樋口はこの先、自分の食い扶持を稼ぐために、服飾職人になるという。

「もっといいアイデアが樋口さんにあるというんなら、別にそっちでもいいけどね」

 彼方は、そういっていた。

「とりあえず、こういってはなんだけど、うちでは樋口さんをお客さん扱いにする理由もないわけで。

 自分で使う分のポイントくらいは、自分で稼いで貰わないと困るんだ」

 それはまあ、仕方がない。

 これまでだって、結城紬があてがってきた半端仕事を、黙々とこなして来ている。

 それに、樋口自身は、自分でポイントを稼ぐ方法について、別にアイデアがあるわけでもない。

 だから、その提案に乗るしかなかった。

 ただ、この三人の拠点という場所が、どういう状態なのか。

 そうした情報をいっさい知らされていなかったので、当然、不安はあった。


「おお、帰って来たか」

 巨大な門の前で、男子が声をかけてくる。

「跳ね橋、完成したんですね」

「おう。

 今、ウィンチとかうまく作動するか、試験していたところだ」

 彼方とその男子が、そんな会話をしている。

「門番は、うちの人形にやらせようかと思う。

 人形ども。

 今、ここに居る人たちは関係者だ。

 この人たちが来たら、素直に開門してくれ。

 それで、その子は?」

「結城さんから頼まれて、しばらくうちで預かることになった子」

 遥は、そう説明する。

「詳しくは、夕食の時にでも説明するよ」

「そうか。

 おれは、酔狂連の鍛冶士、八尾だ」

「あ。

 樋口和穂といいます」

 樋口は、慌ててその男子、八尾に頭をさげる。

「酔狂連って、あの、生産職の?」

 つい先ほどまで結城紬の庇護下にあったので、その名前も自然と樋口の耳に入っていた。

「今は、こっちで活動しているんですか?」

「窓口は、市街地に残しているんだけどな」

 八尾はいった。

「本拠地は、もう実質、こっちみたいなもんだ」

 そう、なんだ。

 と、樋口は心の中で納得する。

 自分が引きこもっている間に、他のプレイヤーたちは活発に動いているらしい。


「おお」

「師匠たちが、女の子を連れ帰ってきた」

 続いて、魔法少女隊に引き合わされる。

「この子たちも、うちの拠点内で生活している仲間」

 彼方は、樋口にそう紹介してくれた。

「女の子同士だし、仲良くしてあげて欲しい」

「了解」

「師匠が、そういうのなら」

 この四人と彼方の関係は、いったいなんなのだろうか。

 普通の友人というには隔意があり、「師匠」呼びも、まんざら芝居でもないらしい。

 少なくともこの四人は、トライデントの三人に、ある種の敬意を持って接しているように見えた。

 もっと気になるのは、この四人は揃って作業服にヘルメット姿であることだ。

 作業着のそこここに、泥なども付着している。

 今まで、この四人でなにをやっていたのか。

「それで、進捗はどんな感じ?」

「土台は、どうにか終わった感じですかねえ」

「あとは、セメントが固まるのを待つ」

「作業が早いね。

 この分だと、先にそっちの家のが完成するかも」

「いえいえ。

 指示さえいただけば、そちらの作業もちゃんと進めますので」

「師匠たち三人は、気兼ねなく、しばらく市街地でのお勤めに励んでください」

 本当、この四人と三人の関係は、いったい、なんなのか?


 続いて、三人が寝泊まりしている建物に案内される。

「それで、樋口さんは今、どれくらいのポイント持っているの?」

 お茶を振る舞われたあと、遥に、単刀直入に、そう問われた。

「PPは、二百五十二万」

 樋口は、即答する。

「CPは、百八十万ほどでしょうか」

「そう」

 遥は真顔で頷く。

「少ないね。

 中堅どころのパーティでも、チュートリアル最終日には、一日でそれ以上は稼いでいたと思う」

 そういわれ、樋口の頬が熱を帯びる。

 いわれた通り、今の自分は、すっかり取り残されているのだろう。

 他の、プレイヤーたちから。

「問題は、そのポイントを今後、どう使うか、だよね」

 遥は、そう続ける。

「うちの弟は、服飾関係のスキルに全振りをすることを考えているけわけだけど。

 でも、わたしらは別に、樋口さんの保護者でもなんでもない。

 樋口さんの今後の人生に、責任も持てない。

 自分自身のことは、自分で決断して行動しないといけない。

 樋口さんは、今後、どうしたい?

 自分自身で、ちゃんと、真剣に考えて」

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