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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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顔合わせ

「服装、変わっているね」

 遥が、指摘をする。

「私服の子が、増えた」

 そういえば、そうだな。

 と、恭介は思う。

 少し前まで、制服か学校指定のジャージが多かった気がする。

 こうした服装は、マーケットでの販売価格が異様に安かったからだ。

 これも、プレイヤー全般の所有ポイントに、余裕が出て来た影響になるだろう。

 精神的に余裕が出て来たこと自体は、喜ぶべきなんだろうな。

 とも、思う。

 ダンジョン攻略が開始されて、この異世界での生活も、新しいフェーズに入ったことは、どうやら確実なようだ。

 それぐらい、以前と、つまり、チュートリアル期間と、今とでは、雰囲気が異なっている。

 元の世界に変える方法がいっこうに見つからず、それで、半ば自棄になって現状に適応とした末の、どこか捨て鉢な明るさ、とでもいおうか。

 こうなることを、納得しないわけにはいかない。

 しかし、どこかに、危ういものも、感じてしまう。

 中央広場の様子を見る恭介の心境は、複雑だった。


 午後一時ちょうどに、小橋書記と横島会計が政庁から出て来た。

「こちらになります」

 挨拶もそこそこに、横島会計が案内してくれる。

「本日は顔合わせと、これから使用するプールへの案内が主な目的になります」

「卯の迷宮を攻略したいと希望している人は、何名くらいになるんですか?」

 彼方が、訊ねる。

「現在のところ、二十名くらいですね」

 小橋書記が、答えてくれる。

「合計で三パーティです。

 今のところ、ですが。

 これからもっと増えるかも知れません」

「それはまた、なんで」

 恭介が、質問した。

「あの迷宮に、人気があるとも思えませんが」

「他の迷宮は、ええと、比較的レベルの高いプレーヤーが、詰めかけていますので」

 小橋書記は、言葉を選びつつ、説明してくれる。

「卯の迷宮を希望する人というのは、だいたい比較的低いレベルの方々になります」

「その理由、訊いてもいいかな」

 今度は遥が、問いかけた。

「あの迷宮、低レベルの人の手に負えるとも思わないんだけど」

「手に負える、というより、他に選択肢がない、のですね」

 横島会計が、答えてくれる。

「それに、水の中に入らなければ、比較的安全なダンジョンでもあります。

 その、岸辺に立って、雷系の魔法、大きいのを一発やるだけで、十万ポイント前後は稼げますので」

「ああ」

 彼方は、頷く。

「水は、伝導体だから」

「そういうことです」

 横島会計も、頷いた。

「結構広い範囲にまで、電撃が届くようでして。

 それで、低いレベルのプレイヤーが、入れ替わり立ち替わりあのダンジョンに、詰めかけているわけです」

 リスクが低く、さして苦労もせずに稼げるダンジョン。

 だとすれば、低いレベルのプレーヤーが殺到するのも、頷ける。

 水の中に入れば、事情は違ってくるのだろうが。

「そういう事情だと、あのダンジョン」

 恭介が、想像した光景を口に出す。

「一分、かかるかかからないかのうちに、パーティが入れ替わり出入りしている感じになっているわけですか?」

「現状では、そうなりますね」

 小橋書記が、頷いた。

「水の中に潜るようになると、事情は違ってくるのでしょうが。

 それに、そうして貰わないと、いつまで経っても攻略が進まないのですが」


 中央広場から徒歩五分ほど歩いたところに、突然、ぽっかりと大きな水たまりが出現する。

 周囲を荒れ果てた建物群に取り囲まれているので、案内された先で急に視界が開いて、その足元に光陽を反射する水たまりが出て来る印象だった。

 これが、急遽用意したプールか、と、恭介は思った。

「深さは、八メートルほどになります」

 横島会計が説明した。

「足はつかないので、そのつもりで使用してください。

 これはあくまで、潜水を想定したプールです」

「学校のプールとは違う、ってことでしょ」

 遥は頷いた。

「了解しました」

「それで、あちらに居るのが」

 対岸にたむろしていた男女が、こっちに向かって歩いて来る。

 見覚えのある顔と、初対面の顔。

 半々ぐらいの比率だった。

 そのうち、見覚えのある方は、チュートリアル最終日に、中央広場周辺で共闘したプレイヤーたち、だと思う。

 おそらく、だが。

 生徒会の影響が強く、まだレベルの低いプレイヤーが相当数、こちらに流れてきているのだろう。

 案の定、そうした見覚えのあるプレイヤーたちは、彼方に黙礼したり声をかけたりしている。


「まずは呼びかけに応じてくれたことに、感謝します」

 日に焼けた顔をした男子生徒が、彼方たち三人に挨拶をした。

「今回、卯のダンジョン攻略を呼びかけた、墨俣すのまたジョーズのリーダー、鹿骨ししぼね司です」

「ああ、やっぱり」

 遥が、頷く。

「水泳部が、主催か」

「まあ、墨俣ジョーズは、元の世界の水泳部が中心となったパーティですがね」

 鹿骨は、苦笑いを浮かべる。

「ダイビングの経験者はそんなに居ないんで、苦労しているところではある。

 ご活躍のようだな、宙野」

「そっちも頑張っているようだね、鹿骨」

 二人は、そういって片手をあげる。

 やっぱり、顔見知りだよな。

 と、恭介は納得する。

 体育会の部活には、それなりのコネというものがあるらしい。

「いっておくけど、わたしらも水中戦の経験、ないからね」

 遥は、鹿骨に向かってまくし立てる。

「ご期待には添えない結果に、なるかも知れない」

「だが、そちらの三人は、誰よりも実戦経験が豊富だ」

 鹿骨は、反論する。

「そこで得られた知見は、絶対に役に立つ」

「あの、質問、いいっすか?」

 恭介は、遠慮しないで片手をあげた。

「いくつか、疑問があるんですが」

「ああ。

 君が、パーティリーダーだということだったな」

 鹿骨がいった。

「これから、よろしくお願いする。

 疑問とは、なんだい?」

「まず、なんでパーティ名が墨俣ジョーズ、なんですか?

 リーダーの名前とは違うし、なにか由来とかがあるのかな、って」

「墨俣は、水泳部部長の名前だ。

 その部長は、こちらの世界には来ていない。」

 鹿骨は、即答する。

「うちのパーティも、いろいろあってな。

 リーダーの名前をつけると反発して来る人が居るんで、あえてこの場には居ない人の名前を借りている」

 全校生徒が、この世界に来ているわけではない。

 だから、その部長氏が、この世界に居ないことは、別に不思議には思わなかった。

 だが、このパーティも結構、ややこしい事情を抱えてそうだな、とは、思う。

「別に人の名前を入れなくてもよかったのに」

「それならそれで、結構意見が割れてな」

 鹿骨は、真面目な表情のまま、説明してくれる。

「結局、不在の人物の名前を借りるのが、一番、パーティ内の全員が納得できる形だったんだ」

「それでは、次の質問。

 なんで、あえてあの卯のダンジョンを攻略しようと思ったんですか?」

「あくまで、個人的な回答になると思うが」

 鹿骨は、いった。

「あんな広い場所、みすみす見逃すのはもったいないじゃないか。

 あんな場所で自由に泳げたら、気持ちいいと思ってな。

 そのためには、中に居るモンスターは、少し邪魔だ」

「今度は、こちらから質問、いいですか?」

 今回はじめて見る顔の男子が、片手をあげて質問する。

「トランデント、っていいましたっけ?

 こいつら、本当に強いんですか?」

 周辺のプレイヤーが、ざっ、と、その男子から距離を取った。

「お前、馬鹿」

「あの映像を、見てなかったのか?」

「あ、こいつ、終わったわ」

 周辺のプレイヤーたちが、小声でそんなことを囁き合っている。

「そうですね」

 横島会計が、どこかひんやりした口調で、いった。

「他にも、納得をしていない方も、居るかも知れません。

 馬酔木くん。

 少し、面倒をおかけしますが、ここで、デモンストレーションをお願いしてもよろしいでしょうか?」

 形としては疑問形だったが、有無をいわさない雰囲気を醸し出している。

「具体的に、なにをやればよろしいのでしょうか?」

 恭介は、ことらさらにのんびりとした口調を作っていった。

「可能であれば、時間や手間を節約できる方法だと、嬉しいのですが」

「そうですね。

 そんなにお手間は取らせません」

 横島会計は、目だけが笑っていない笑みを浮かべて、そう続ける。

「この周辺の建物は、すべて、解体が予定されている建物になります。

 あの、対岸にある建物を標的にして、攻撃をして貰えませんでしょうか?」

「わかりました」

 恭介は頷いて、自分のシステム画面からマップ情報を確認する。

 その建物の周辺に、プレイヤーは居ない。

「まず、あの建物壁に穴をあけます」

 宣言して、恭介は自分の倉庫からあの弓を取りだした。

 軽く狙いをつけ、二階建ての建物を、撃つ。

「え?」

「穴、って」

「確かに、空いているけど」

「向こう側にまで、突き抜けてる」

 見物していたプレイヤーたちが、ざわめきはじめた。

 直径一メートルほどの穴が、完全に一棟の建物を貫通していて、その穴から、建物の向こう側の風景が見える状態になっていた。

 恭介は、もう何度か弦を引いて、直径一メートルの穴を増やしていった。

 最初のうち、ざわめいていた観衆は、次第に口を閉じはじめる。

「そこまで穴だらけにしたら、そのまま放置しておくの危ないので」

 横島会計が、いった。

「その建物、丸ごといっちゃってください」

 恭介は無言で頷いて、弓を上に向けて、弦を引く。

 それを手放してから、何拍かあけて、その建物は丸ごと消失した。

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― 新着の感想 ―
前にも出て来ましたが水自体は絶縁体です。 あくまでも水に溶けてる不純物を通して電気が流れるだけです。 余計な事ですが。
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