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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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市街地の変化

 ダンジョン攻略が開始されてから、三日目の朝。

 恭介たちトライデントの三人は、拠点内部の人気のない場所を選んで、投擲の練習をしている。

 練習、とはいえ、実質は、「命中補正」というスキルの実用試験、という意味合いの方が強かった。


「ああ、なるほど」

 彼方は、適当な石を拾いあげては投げつけ、しきりに頷いている。

「フォームとかを、スキルが自動的に正しいものにしてくれるのか。

 なんというか、便利過ぎるスキルだね」

「事前に、このままだと命中しないとか、判断しちゃうのも便利過ぎる」

 遥も、つけ加える。

「こんなスキル取ったらら、実質、百発百中になるよね、うん。

 当たらなさそうな時は、投げなければいいんだもん」

「こちらにいましたか」

 酔狂連の岸見が、三人に近寄って来た。

「物音が聞こえたので、念のために来てみたのですが。

 ご依頼の品、出来ていますが。

 どうしますか?」

「どうします、とは?」

 恭介が、訊ね返す。

「せっかくですので、この場で試射をしておくのもよろしいかと」

「それもそうだね」

 彼方が、頷いた。

「水属性戦用だからって、別に、水中でないと使えないわけでもないし」

「では、どうぞ」

 岸見は、彼方と遥に、新型のZAPガンを手渡す。

「馬酔木くんは、どうしますか?」

「おれは、今持っているので十分です」

 確認されたので、恭介は答えた。

「戌のダンジョンマスター戦でも、問題なく使えましたし」

 遥と彼方は、そばの木や石に向けて、試射を開始する。

「うん。

 なるほど」

「手で投げるのと、たいして変わらない感じ。

 スキルが正解を教えてくれて、それに導かれるまま動いていれば、まず間違いが起きない」

「このスキルが、全プレイヤーに行き渡ったら、凄いことになるね」

 続けて彼方は、そんなことをいう。

「残念なことに、狙撃手へ転職するハードルは、いぜんとして高いままなんだけど」

 狙撃手の便利過ぎる固有スキルを、容易に教授出来たのは、この三人の関係性のおかげだった。

 別のプレイヤーが、その恩恵に浴することは、まだ当分ないだろう。

 二人が試射とも射撃練習ともつかない行為を続ける横で、恭介は岸見に新型ZAPガンの料金を支払っている。

 岸見は、

「うちのマネージャーから、絶対に忘れないようにといいつかっていますので」

 といいはり、恭介に領収書をおしつける。

 恭介は、

「異世界に来てまで、この手の書類がつきまとうのか」

 と、内心でそう思ったが、口には出さなかった。

 今後、生徒会相手に交渉する時などに、この手の書類は必要なのだが。


 午前十時頃、生徒会から連絡があった。

 実際に水中戦をおこなうパーティとの調整が取れた、との内容だった。

 だったら顔合わせは早い方がいい。

 ということで、この日の午後一時に生徒会執務室が入っている建物前で待ち合わせることになった。

 ちなみに、「生徒会執務室が入っている建物」は、今では市街地のプレイヤーたちから、「政庁」と呼ばれているらしい。

 確かに、行政機関の一形態ではあるのだろう。

 が、活動規模からいっても、「政庁」と呼ぶのは適切ではない気もする。

 ただ、他に似たような機能を持つ場所がないし、第一、いちいち「生徒会執務室が入っている建物」などと長々しく呼ぶのも面倒臭いので、より手っ取り早い「政庁」という呼称が定着しているのだという。

 ダンジョン攻略二日目ともなると、市街地のプレイヤーも慣れたもので、まず中央広場に移動し、そこで各ダンジョンの混雑具合を確認した上で、比較的空いているダンジョンへ移動する。

 という行動様式が、一般化している。

 生徒会は事前に、中央広場から各ダンジョンへの動線を整備していたことと、ダンジョン攻略が開始されてから、各ダンジョン前のライブ映像を公開し、同時に、現在各ダンジョン前で待っているパーティ数も表示していた。

 そうした細かい工夫が、攻略に参加する全パーティの無駄を省き、効率的な動きを助けていた。

 そして、初日と比べ、各パーティがダンジョン内部に滞在する時間は格段に短くなっている。

 初日に遥も指摘していた、「集中力の持続時間」という問題と、それ以上に、初日に戌のダンジョンマスターに敗れたパーティの苦痛が、かなり大袈裟に伝わっているためであった。

 回復術は、かなり痛い。

 そうした情報が周知されるに従って、

「戦闘しながら回復。

 なんて、出来るわけがない」

「少しでも誰かが負傷したら、即脱出」

 というセオリーが、定着しつつある。

 それに加えて、

「ダンジョン内部のモンスターが、異様に強くなっている」

 のも、滞在時間短縮の傾向に拍車をかけていた。

 かなり高レベルのプレイヤーであっても、せいぜい二戦か三戦するだけで、かなり疲弊してしまうのだ。

 結果、

「単独パーティでのダンジョンクリア」

 を目指すよりは、

「小まめにポイントと経験値を稼いで、気長に攻略を目指す」

 というスタンスの方が、どうしても主流になってしまう。

 その短いダンジョン滞在で、相当のポイントが稼げてしまうのも、こうした傾向を後押ししていた。

 この時点で、各パーティが一回のダンジョンアタックで稼ぐポイントは、軽く二十万ポイントを上回る。

 あせくせしなくとも、十分に余裕のある生活を継続可能な稼ぎが、ほぼ保証されてしまう。

 これは、生徒会が目指す「プレイヤーが死なないプレイスタイル」そのものである、とも、いえた。

 結果として、このダンジョン攻略期間は、全プレイヤーに、

「攻略自体はかなりきついが、それ以外の部分はかなり余裕がある」

 生活を約束するものになっていた。

 チュートリアル期間中にはなかった、少し浮ついた空気が、市街地に漂いはじめている。


「一日来なかっただけで、だいぶ雰囲気が変わったな」

 一時少し前、中央広場に着いた恭介たちは、周辺を見渡してそんな感想を持った。

 まず、人が多い。

 その大半は、ダンジョンが空くのを待つプレイヤーたちになるのだが、中央広場のあちこちに座って談笑する姿は、元の世界の日常でもよく見られた光景だ。

 そうして集まる人々を目当てに、屋台などを出しているプレイヤーも居る。

 娯楽が乏しいこの世界にあって、そうした他愛のないサービスは、かなり受けがいいようだ。

 どの屋台も混雑していて、賑わっている。

「少し余裕が出て来ると、こうなるのか」

 恭介は、そんな風に思った。

 この変化がいいことなのか悪いことなのか、にわかには判断がつかない。

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