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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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相談

「なあ、ちょっといいか」

 続けて八尾が、彼方に声を掛ける。

「おれたちのダンジョン攻略は一段落ついたんで。

 これから、本格的に自分ところの建物作りに手を着けるわけだけど。

 その前に、拠点の入口が気になってなあ」

「ああ、あそこ」

 彼方は頷いた。

「防壁が開いているだけ、ですね。

 現状は」

 実際にところ、それで特に不便は感じていない。

 そのため、これまでそのまま放置されていた。

 他に細かい用事が重なることが多かったので、改めて整備する余裕もなかった、という事情もあったが。

「あそこ、気になっていてなあ」

 八尾はいった。

「よかったら、引っ越しの挨拶代わりに、おれたちに整備させて貰えないか?

 費用、材料、人手、全部こっちで持つから」

「そういって貰えると、むしろ助かるんですが」

 彼方は、怪訝な顔になる。

「本当に、それでいいんですか?

 つまり、無償で、ってことですが」

「ぶっちゃけていうと、建造物はおれたちも手を掛けたことがないんで、その予行練習ってことだな」

 八尾はいった。

「自分ところの地所でいきなり作り出すのは、少し不安があるから」

「なるほど」

 彼方は頷く。

「そういうことなら、お任せします。

 好きにしてみてください」

「よし!」

 八尾は大きな声を出した。

「では、早速。

 こいつが、昨夜引いてみた図面なんだが」

「跳ね橋になるわけですか。

 時代劇かなんかで、見たような構造で」

「大きな車両もそのまま通れるような、頑丈な作りにしてみようと思っている。

 ま、せっかくだしな」

 用意周到だな、と、恭介は思った。

 彼方と少し相談をしたあと、八尾はその足で出入り口へ向かう。

 早速、作業に取りかかるようだ。

 少し間をおいて様子を見に行くと、大量の材料と人形を出して、急ピッチで作業を進めているところだった。

 あの分だと、今日明日中には完成してしまうのではないか。


 恭介たちは、午後も人形作りを続行する。

 今後、なにをするにしても労働力はネックになるので、少しで解消する方向に持っていくためには、こうするしかない。

 午前中よりは作業に慣れて来たのか、その日のうちに一人頭、あと六体の人形を完成させることが出来た。

 トライデントと魔法少女隊は総勢七名だから、人形も、今日一日で七十体に増えたことになる。

 遥は、自分が作った人形十体に、ラジオ体操をさせていた。

 別に遊んでいるわけではなく、同時に複数の人形を操作する、という作業に慣れるための、一種の慣熟操作だった。

「全体に同じことをさせるのは、別に難しくはないね」

 遥は、感想を述べる。

「だけど、これにバラバラの作業をさせようとすると、少し慣れが要るかも知れない」

「だろうなあ」

 恭介はいった。

「基本的に人間、自分の体一つを操作するようにしか、出来ていないから」

 身体操作の情報処理系が、そういう構造になっているのだ。

 それを学習によって無理矢理別のことをさせようとしているわけだから、かなり苦労することになると思う。

 ことに、慣れないうちは。

「一日で、ここまで人形を増やせれば、上等。

 そう、見るべきでじゃあないかな」

 彼方はいった。

「操作の慣れとかは、明日以降の課題にしよう。

 今日の仕事はこれで終わりにして、夕食の準備に取りかかろう」


『すまん。

 今、ちょっといいか?』

 夕食を作っている最中に、小名木川会長から連絡が来た。

『火急の用件、というわけではないんだが、少し相談したいことがあってな』

「相談だけなら、まあいいですけど」

 恭介は、そう答える。

「無理難題は、最初から断りますからね」

『ああ、うん。

 お前らなら、そういうだろうな』

 小名木川会長は、控えめな口調でいった。

『無理難題かどうかは、一通り説明を聞いたあとで、そっちで判断して貰いたい』

 なんだか今日は、しおらしいな。

 と、恭介は思う。

「その、説明っていうのを、お願いします」

 恭介は促した。

 まずは、用件について説明して貰わないことには、先に進みようがない。

『ダンジョン攻略は、ぶっちゃけ行き詰まっている。

 攻略に関しては行き詰まっているが、プレイヤーは、ダンジョン内の強いモンスターと常時対戦するので、ぐいぐいレベルがあがっている。

 だから、あまり不安に思っている者はいない。

 レベルがあがれば、いずれは攻略可能になるだろうと、そう考えている者が大半だ』

「結構なことではないですか」

 恭介は、感想を述べる。

「皆さん、ポジティブで」

『ただし、例外もあってな。

 例の、卯のダンジョン』

「ああ、中に海が広がっている、っていう」

 あのダンジョンだけ、毛色が違う。

 あそこを攻略しようとしたら、かなり特殊な用意が必要になるだろう。

 とは、恭介も思っていた。

「まさか、あそこをうちのパーティに押しつけようってんじゃないでしょうね?」

『いやいやいや。

 一時は、そんなことも、ちらーっとは、考えたよ。

 正直。

 他にあてもなかったし』

 小名木川会長は、急に早口になる。

『だけど、だな。

 幸いなことに、あそこの攻略を名乗り出てくれたパーティがあってな。

 今度練習用のプールなんかも作って、予行訓練もする手筈になっている』

「実に、結構なことですね」

 恭介は、頷く。

 土魔法と水魔法を駆使すれば、そうした用途のプールを用意するのも、そんなに難しいことではない。

 あとは用地だが、これも、今の市街地には、かなり余っている状態だ。

「それで、なにが問題なのですか?」

『水の中に居るモンスターの、倒し方が、わからない』

 小名木川会長の回答は、端的だった。

『せめてとっかかりになるような訓練だけでも、そちらに担当して貰えないか?』


「それで、どう返答しておいたの?」

 マリネを作りながら、遥が恭介に確認する。

「とりあえず、保留にしておいた」

 新しく購入した石窯から火のついた炭を出しながら、恭介は即答する。

「仲間と相談してから、お答えしますって」

「確かに火急の用件ではないし、ぼくたちくらいにしか相談出来ないだろうね、それは」

 耐熱容器にホワイトソースを敷きながら、彼方がいった。

「とりあえず、卯のダンジョンに出没するモンスターのデータが欲しいかなあ」

「水の中だと、今までの方法は通用しないよね」

 遥が指摘をする。

「ここに来て、一からのやり直しかあ」

「会長はこっちに教えてくれ、っていってたけど。

 実際には、その志願者の人たちと相談しながら組み立てていく、って感じになると思う」

 恭介はいった。

「その人たちが、ダイビングのコツをおれたちに教えて、おれたちが、モンスターの対処法を考える。

 みたいな。

 で、これ、もう窯に入れちゃっていいの?」

「余熱、終わってる?

 だったらいいよ」

 彼方が答えた。

「まあ、実質、共同作業っていうか。

 相談しながら、メソッドを開発していくような形にはなるのかなあ」

「それって、普通の攻略より、ずっと面倒臭くない?」

 遥が、疑問を口にする。

「当然、面倒臭いよ」

 恭介は、真顔で答えた。

「そうでなけりゃあ、あの会長がわざわざおれたちに頼みごとなんてするものか」

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