表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

108/401

傾向と対策

「いやあ、お前ら、よくやった」

 いつの間にか少し離れた場所に、巨大な人影が立っていて、大きな手を合わせて恭介たちに拍手を送っている。

「前のおれを相手に、よく健闘したよ。

 前のおれの敗因は、慢心だな。

 お前らの実力を見誤っていた。

 特にそこの妙な術者。

 お前とは一度、サシでやり合いたいもんだ」

 先ほどの赤鬼と、まったく同じに見える。

 しかし、前の赤鬼がいっていた内容を踏まえると、あれが新しい、ここのダンジョンのマスターなのだろう。

「前のダンジョンマスターから、記憶は継承しているのか?」

「どうやら、そうらしいな」

 恭介が問いかけると、赤鬼は大きく頷いた。

「前のおれの記憶が、ちゃんとある」

「厄介なことだ」

 恭介は、ため息混じりにそういった。

「帰り道は?」

「なんだ、つれないなあ。

 もう一戦くらいつき合ってくれると思ったのに」

 赤鬼は本当につまらなそうな表情を作った。

「ほらよ。

 その奥に、入口まで出る転移魔方陣がある。

 勝手に使え」

「そうか」

 恭介は頷いて、仲間たちに振り返る。

「手分けして、まず負傷者をその転移魔方陣まで運ぼう」

「なあ、そこの妙な術者」

 赤鬼が、未練がましい口調でいう。

「お前だけでも、またここに来てくれないか?」

「二度とご免だね」

 恭介は即答する。

「おれは、暴力で物事を解決しようとするやつが一番嫌いなんだ。

 ここへも、二度と来ない」

「そうかい。

 まあ、仕方がねえなあ」

 赤鬼は、特に失望した様子もなく、そういってのける。

「あ、そうだ。

 前のおれの討伐報酬な。

 思っていた以上に楽しめたんで、少し色をつけておいた。

 あとで確認してくれよな」


 こうして恭介たちは無事にダンジョン外に脱出する。

 待ち構えていた人たちに速攻で回復術を使われた負傷者たちの悲鳴がしばらく響き渡っていたが、そちらの件は、とりあえず恭介たちとは関係なかった。

「手足の複雑骨折だって」

 そちらで処理をしている者の噂話を耳ざとく聞きつけた遥が、恭介たちに報告する。

「命には、まず別状はないってことだけど」

 聖女様が強力な範囲回復術を行使すると、負傷者の悲鳴はなおさら大きくなった。

「お前ら、ちょっと来てくれ」

 小名木川会長に手招きをされたので、恭介たちはそちらに移動する。

「今回は、ご苦労だった。

 本当に助かった。

 礼をいう」

 小名木川会長は、深々と恭介たちに頭をさげる。

「とりあえず、だな。

 謝礼というか本格的な報酬については、ちょっと考えさせてくれ。

 なにぶん、まだ混乱している最中でな。

 あ、そのデーモン族の大盾は、もう宙野弟が持っていていいや。

 とりあえず、お前以上に使いこなせるやつが、しばらくは出てこないと思うし」

「それは、どうも」

 彼方はおざなりに頭をさげる。

「正直にいっちゃうと、あまり嬉しくはありませんね。

 これが理由で、またこき使われるのかと思うと」

「そういわれると、こちらも困るな」

 この時、小名木川会長は少し悲しそうな顔になった。

「お前らにとっても不本意かも知れないけど、こっちにしてみても、こういう時に頼れる相手がほとんどいないんだ」

「今回のように人道的な仕事内容なら、しぶしぶ出ては来ますが」

 恭介は、そう答えておいた。

「そうでないなら、あまり気軽に呼びつけてこないでください。

 おれたちには、おれたちなりの生活とか都合があるわけですから」

「まったくもって、その通りだと思う。

 その点は、いつもすまなく思っている」

 小名木川会長は、また頭をさげる。

「こちらとしては、報酬という形で礼をすることしか出来ない。

 ちゃんと考えるから、もう少し時間をくれ。

 まあ、それはそれとして、今回、ダンジョンマスターとやり合ってみた、お前らの心証ってものを確認しておきたい」

「ダンジョンマスターを倒した直後に、新しいダンジョンマスターがすぐに現れました」

 彼方が報告した。

「その、あとで出て来たダンジョンマスターは、前任者から記憶を継承しているっていってましたね」

「マジかよ」

 小名木川会長が顔をしかめる。

「それじゃあ、一度攻略し終わったダンジョンも、それ以降は対策を採られるってことじゃないか」

「対策、するでしょうね」

 恭介が、平静な声で指摘をした。

「おれがダンジョンマスターの立場なら、絶対にそうする。

 一度成功した手口は、二度と通用しないでしょう。

 少なくとも、同じダンジョンに対しては」

「十二カ所のダンジョンマスター同士で、横の連絡をしている可能性は?」

「わかりません。

 しているかも知れないし、していないかも知れない」

 彼方はそういって、首を横にする。

「そのどちらかと、断定できる要素はなにも目撃出来ませんでした。

 ただ、戌のダンジョンマスターの態度を振り返ってみると、自分以外のダンジョンマスターが存在するとは思ってもいない風でもあり。

 だがまあ、これも、予断ってやつですね。

 実際には、どちらとも断定は出来ません」

「対策を採ってくる、か」

 小名木川会長はいった。

「ってことは、攻略する難易度も、あがってくるってことだよな?」

「まず、確実に」

 恭介がいった。

「たとえば、戦闘狂である戌のダンジョンマスターの場合。

 強い敵と戦いたいわけですから、最深部にあるダンジョンマスターの居場所まで、相当な強さでないとたどり着けないように、今後は工夫を凝らすでしょうね。

 具体的にいうと、途中で出現するモンスターの強さを限界まであげる」

「そいつは悪夢だなあ。

 プレイヤーにとっても、生徒会にとっても」

 小名木川会長はそういって、ゆっくり首を振る。

「毒ガスや召喚獣の場合は?」

「ぼくなら、ダンジョン内部をいくつかのブロックに分けて、そのうちの一つが全滅しても、全体には即、影響しない構造に改装しますね」

 彼方が答えた。

「最初のブロックが全滅して、その状況を踏まえて続くブロックで必要な対策を採れば、どうにかやり過ごせる可能性が出て来る。

 一種の時間稼ぎになるわけですが、それでも、無防備のまま全滅させられるのを待つよりは、幾分かマシってものです」

「知性を持つ敵を相手にするってのは、面倒なもんだなあ」

 小名木川会長は、しみじみとした口調で、そういう。

「長期戦は最初から覚悟していたんだが、いよいよもって長引く予感がする」

「悪いことでもないっしょ」

 遥がいった。

「長引けば、こっちのプレイヤー側も、全体的に成長していくわけで。

 どうせ長引くのなら、いっそのこと、プレイヤー全体を強化するいい機会と、そう受け止めてもいいんじゃないっすか?」

「宙野姉は、前向きだなあ」

 小名木川会長は、そういった。

「そうだな。

 そうとでも考えないと、とてもではないがやっていけない。

 そういえばお前ら、さっきチェックしたら全員レベル九十、越えていたな。

 これで名実ともにトッププレイヤーパーティだ。

 おめでとう」


 小名木川会長との会話が終わると、赤瀬が迎えに来ていた。

「お疲れ様-っす」

 ランドクルーザーのドアを開け、三人を後部座席に促しながら、赤瀬がいう。

「今日は、災難でしたね。

 例によって、無事に切り抜けられたようですけど」

「切り抜けられた、ねえ」

 後部座席に座り、シートベルトを着用しながら、恭介はぼやいた。

「あれで本当に、よかったのか」

「なにか問題でも?」

「いや、さっきの件で、かえって敵を強化してしまったのかも知れないって、思ってね」

「なるほど。

 でもそれ、結果論ってやつですよね」

 赤瀬は、エンジンを掛けながらそういう。

「あなた方三人、誰でも困っている人質を見捨てておけない性格なんですから、そんなこと考えても仕方がないじゃないですか。

 そうなるとわかっていても、あなた方なら、困っている人が目の前に居れば、助けるんでしょうし」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ